Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

覆された決意

2013-07-15 01:00:00 | 雪3年1部(開講~二人の写メ)
赤山雪は秋学期最後の日の飲み会で、聡美と太一に宣言した。

「私、休学する」







それを聞いた太一の第一声は、「ロッカーもらう」だった‥

それに乗っかる聡美ら二人に、雪はガックリである。しかし二人は腑に落ちない顔をする。

「最近学費のせいで休学する人多いッスけど、もしかして雪さんも?」

「え?」



雪は言葉を濁しながら、重々しくその理由を説明する。

「まぁね‥奨学金、ちょっとは貰えたけど、あれじゃ焼け石に水だし‥」

「うんうん、確かに学費高すぎ!」



そこから話は大学の学費が高すぎるわりに無駄な設備に費やしすぎるとか、

学食のメニューがいまいちだとか変な方向に向かっていった。



この二人は楽観的なところが魅力だが、今の雪には若干脳天気に感じられる。

雪は溜息を吐きながら、その胸中を憂いた。

「あんたたちに私の気持ちが分かる?もうマジ疲れた‥」



例えようの無いこの疲労感、脱力感、そして虚無。

視線を上げると、その先には彼の姿がある。

その理由は



あの男だ



胸中がモヤモヤと煙っていく。

雪は酒をガンガン飲んだ。



普段飲み慣れないお酒に酔っ払い、大声で「休学する」と騒いだ。

それを遠くの席から、青田淳が見ていた。







一次会が終わり、飲み過ぎた雪は既にグロッキーだった‥。

「飲めないくせになんであんなに飲んだのよ!」



気分の悪い雪を介抱する中、聡美が口を開いた。

彼女がこんなにも荒くれるのには、必ず理由があるはずだ。

「アンタ、また何か抱えて悩んでるんじゃないの?

全く気付いてやれなかったけど‥もしそうならホントにごめん」




何でも聞くから言ってごらん、と聡美は言った。

反射的に雪の顔が上がる。

胸に溜め込んだものを、今なら言えそうな気がする。

「私‥実はね‥!」



言いかけたその時、遠くから声が掛かった。

柳瀬健太が、手招きをしながらこちらに向かって叫ぶ。

「おーい!お前ら何やってんだ?!淳が二次会奢ってくれるってよ!」



二次会には高いバーの名前が上がり、そこを全部青田先輩がおごると言ったらしい。

太一も聡美も、そして学科の皆も喜んだが、雪はその場から動けなかった。



健太先輩は、気分が悪かったらちょっと休んで後から来いと言ったが、

雪はそのまま立ち上がると、二次会はパスすると言って走り出した。

聡美がその背中に声を掛けたが、雪は振り返りもせず行ってしまった。



雪は聡美と太一に何も打ち明けることが出来なかった。

あの青田淳から逃げるために、休学するということを。







家に帰ってから、母親に休学する意を伝えたが、その反応は良いものではなかった。



何で休学するのかという問に、雪は本当の理由を言うことが出来なかった。

休学してる間に仕事したり旅行したり、色々な社会経験を積みたいということを言ったが、

母親はやはり理解出来ないようだ。



以前母が雪に全額奨学金を受けれないなら大学を辞めろと冗談で言ったことがあったが、

それを真に受けていたのかと聞かれた。

それが直接的な原因ではない。でも結局奨学金の件でも青田淳が絡んでいる。

先日貼り出された全額奨学金の獲得者は、全体首席は、やはり彼だったからだ。



雪が部屋で項垂れていると、聡美から電話がかかってきた。

憂鬱な気持ちのまま電話を取ると、凄まじく大きな声が電話口から飛び出した。

「雪ーッ!超超超ビッグニュース!!」



聡美は興奮状態だったが、それも納得出来るくらいの大事件が起こったのだ。

「青田先輩、奨学金貰えないらしいよ!」



雪は耳を疑った。

「レポート提出したのに、点数つける前に急に消えちゃったとかなんとか?!」

そして聡美は一層大きな声で言った。

「だから全額奨学金は、あんたが貰えることになったんだって!!」

「何だってーー?!!」



聡美の声を聞いた母親が、隣の部屋から飛び込んで来た。

全額学費が出るのに、休学が許されるはずがない。

雪は休学を諦めざるを得なくなった。







果たして雪の決意は、思わぬ形で覆された。

すでに太一に譲っていたロッカーの鍵を、もう一度返してもらう。

「休学するんじゃなかったんスか?」「よ‥予想外のことが起きてしまってね‥」



しぶしぶ鍵を返してくれた太一が、レポート紛失事件のその後を教えてくれた。

「つーか青田先輩のレポートが無くなってから、学校中大騒ぎだったんすよ。

先生が見る前に無くなったみたいだし、どうしようも無かったみたいスね」




最上級の成績であるA+取れる傑作だったろうに、と太一は唸った。

しかしその内情を聞いていく内に、雪の心の中にだんだんと靄が掛かって行く。

「でも変っすよね。先生がレポート集めるのは皆しっかり見てたし、

青田先輩が出さなかったわけないのに、でも消えちゃったなんて‥」




青田先輩本人は、そのことに関しては寛容な態度を取ってるらしかった。

その余裕に女学生たちはかっこいいと騒いで、全体首席を逃したものの、逆に彼の株は上がったようだ。





雪は中庭で一人音楽を聞きながら、この事件の顛末に思いを馳せていた。



何か胸騒ぎがして、ソワソワと落ち着かない。

彼女の鋭敏さが、その事件にどこか不自然さを感じていた。

するとイヤホンから聞こえる音楽に混じって、誰かの声が聞こえる。

「‥雪ちゃん」

「雪ちゃん!」



「一人で何してるの?音楽聞いてたの?授業は?」



雪は声の主を見て、目を丸くした。

矢継ぎ早にされる質問にもついていけない。

かろうじて「授業は全部終わりました」ということだけ答えられた。

「そっか。それならメシでも食いに行こうよ」



雪は何が起こったのかまるで理解出来なかったが、頭より先に口が動いていた。

「え?‥あ、ハイ!」




雪にとっては、それはあまりにも突然な出来事だった。

目の前でにこやかに笑う彼は、いつも雪を無視したり傲慢な態度を取ってきた彼とは、まるで別人のようだった。


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新学年での物語のスタートです。絵もカラーになって華やかになりました!

ついに青田先輩が動き出しましたね。
先輩の雪に近づきたい意気込みが感じられます!

次回は<突然の誘い>です。

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