「静香のやつ電話も出ねーで‥生きてんのか?」
SKK学院塾にて、亮は姉に電話中だ。
顔を顰めながら通話する亮の視界に、コソコソとプリントで顔を隠しながらの彼女が通り掛かる。
「お~い!天然パーマ~!」
ニヤつきながら大声で自分を呼ぶ亮に、「これからずっとそう呼ぶつもりですか?勘弁して下さいよ!」と、雪は青い顔をして食って掛かった。
困惑する彼女に向かって、亮はわざと回りくどい言い方で返す。
「は?誰かさんがそう呼べってあんなに言うからそう呼んでるのに今更そう言われたってオレは一体どーすりゃいいのか‥。
そもそも女があんなに酒に飲まれること自体がだな‥」
亮の言葉に、雪は心外と言わんばかりに反論しようとした。
「ってかそもそもあの時、お酒飲みたい気分だったのは河村氏で‥」
そこまで言ったところで、二人ともハッとした。
脳裏に過るあの気まずい出来事‥。
二人は共に視線を外すと、互いに咳払いをして場を誤魔化した。
そして背を向け合うと亮は「あ、オレ電話しねーと」と、
雪は「私も授業が‥」と言って、反対方向へと歩いて行った。
恥ずかしさときまり悪さから、一人になってから亮が吠える‥。
その後、建物の裏に移動した亮は再び静香に電話をかけた。
自堕落な姉は資格取得のために通っている塾でさえやる気がなく、亮の小言は依然として絶えない。
「いやオレじゃなくてテメーのが問題だろーがよ!会計の学校?まぁとにかくサボんなよ。
今度こそしっかり頼むぜ?! お前またしょうもねーことしたら‥」
そこまで言ったところで電話は切れた。
亮の苛立ちはMAX、頭を抱えながら悶絶する。
すると背後に何か不穏なものを感じた。亮の第六感がシグナルを送る。
ピリピリと張り詰めた意識の中、亮は振り返った。
視線の先に居た人物を見て、思わず目を見開く。
予想もつかないその人物は、壁の影から半身を覗かせていた。
その男とは、地方で仕事をしていた時の元同僚である。
つい先日亮に電話を掛けてきていた‥。
彼を見る亮の表情は険しい。
しかし男はそれに構わず、不意に何かに気がついた様なアクションをした。
亮が男の行動を注視していると、彼は背後からパンフレットを取り出した。
スーツ姿の亮が、親指を立てている例の広告だ。
目を見開く亮の前で、彼はウンウンと頷いた。
まるでGame overと言わんばかりの仕草である。
それを見た亮は大声で吠えながら、凄い勢いで掴みかかって行った。
「こんの野郎ーー!」
亮は男の胸ぐらを掴むと、荒く何度も揺さぶった。
男は困惑しながらも、どこか亮の態度に納得している様な反応をする。
「テメーここで何してんだ?!なんでここに来た?!社長の差し金か?!」
男は小さく頷き、「ごめん‥」と呟いた。
その答えを聞いた亮は、ギリギリと音がするほど歯噛みした。
亮はパンフレットを男の手から引ったくると、その場でビリビリと破り始めた。
そして再び男の胸ぐらを掴むと、顔を近づけて詰め寄った。
「こんの野郎!マジで来やがって!オレが地方でどんだけ良くしてやったと思ってんだ?!」
恩を売るような亮の態度に、男は白けた顔で応じた。なぜなら亮だって金を返してないから追われているわけであって、
決して褒められた立場じゃないからだ‥。
しかし亮は構うことなく、尚も男に向かって昔の話を続ける。
「テメーが地方で周りの奴らにいじめられてた時、オレが助けてやったし酒もおごってやっただろーが?!
色々面倒見てやったのに、恩の一つも返さねーままこんなとこまで訪ねて来やがってよぉ?!」
瞳孔絞り気味で男を見据える亮の眼差しを、男は明後日の方向を見ながらスルーする。
すると亮はハッとしながら、「社長連れて来てやしねーだろーな?!」と周りを見回した。
しかし男は平然と「一人で来た」と言う。
男の冷静な態度に、幾らか亮もクールダウンする。
胸ぐらを掴んでいた手を放すと、男は襟元を正しながら言葉を続けた。
「ここに居ることを確かめにだけ来たんだ。社長には既に伝わってる。多分数日以内に押しかけてくるよ」
男の話に、亮は頭を抱えた。
今社長は上京ついでにカルビが有名な地域に寄り、堪能している最中だという‥。
「社長の性格からして、亮を捕まえることが目的になっちゃってるんだと思う。
だからまずはここから離れて。会えなかったらきっと社長もすぐに諦めるよ」
分かったね?と言う男に、亮は返す言葉も無く再び歯噛みした。
亮も社長の性格はそれなりに熟知しての、その沈黙だった。
その後男は、このことを亮に報告した礼のことや、携帯番号が変わったら教えてと軽い調子で口にした。
どこか楽しそうな男とは反対に、亮は頭を抱えて再び悶絶する。
月末まで働かないと給与が差し引かれる。けれどそれまで待っていては社長が押しかけてくる‥。
「あんの社長めぇーー!オレが一体何したってんだー!!」
「マジで勘弁してくれよ!!」
あまりにも理不尽な事態の展開‥。
苛立ちの叫びはそのまま青空に吸い込まれる。
亮のすぐそばまで、離京の足音が迫っている‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<離京の足音>でした。
亮が地方で働いていたのは「氷屋」とありましたね。
ですので結構肉体労働だったのだと思います。その肉体派従業員をまとめる社長ですので、きっといかつい感じなのだろうな‥。
と考えると、亮ピンチ!とハラハラしますね‥(^^;)
次回は<亀裂>です。
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SKK学院塾にて、亮は姉に電話中だ。
顔を顰めながら通話する亮の視界に、コソコソとプリントで顔を隠しながらの彼女が通り掛かる。
「お~い!天然パーマ~!」
ニヤつきながら大声で自分を呼ぶ亮に、「これからずっとそう呼ぶつもりですか?勘弁して下さいよ!」と、雪は青い顔をして食って掛かった。
困惑する彼女に向かって、亮はわざと回りくどい言い方で返す。
「は?誰かさんがそう呼べってあんなに言うからそう呼んでるのに今更そう言われたってオレは一体どーすりゃいいのか‥。
そもそも女があんなに酒に飲まれること自体がだな‥」
亮の言葉に、雪は心外と言わんばかりに反論しようとした。
「ってかそもそもあの時、お酒飲みたい気分だったのは河村氏で‥」
そこまで言ったところで、二人ともハッとした。
脳裏に過るあの気まずい出来事‥。
二人は共に視線を外すと、互いに咳払いをして場を誤魔化した。
そして背を向け合うと亮は「あ、オレ電話しねーと」と、
雪は「私も授業が‥」と言って、反対方向へと歩いて行った。
恥ずかしさときまり悪さから、一人になってから亮が吠える‥。
その後、建物の裏に移動した亮は再び静香に電話をかけた。
自堕落な姉は資格取得のために通っている塾でさえやる気がなく、亮の小言は依然として絶えない。
「いやオレじゃなくてテメーのが問題だろーがよ!会計の学校?まぁとにかくサボんなよ。
今度こそしっかり頼むぜ?! お前またしょうもねーことしたら‥」
そこまで言ったところで電話は切れた。
亮の苛立ちはMAX、頭を抱えながら悶絶する。
すると背後に何か不穏なものを感じた。亮の第六感がシグナルを送る。
ピリピリと張り詰めた意識の中、亮は振り返った。
視線の先に居た人物を見て、思わず目を見開く。
予想もつかないその人物は、壁の影から半身を覗かせていた。
その男とは、地方で仕事をしていた時の元同僚である。
つい先日亮に電話を掛けてきていた‥。
彼を見る亮の表情は険しい。
しかし男はそれに構わず、不意に何かに気がついた様なアクションをした。
亮が男の行動を注視していると、彼は背後からパンフレットを取り出した。
スーツ姿の亮が、親指を立てている例の広告だ。
目を見開く亮の前で、彼はウンウンと頷いた。
まるでGame overと言わんばかりの仕草である。
それを見た亮は大声で吠えながら、凄い勢いで掴みかかって行った。
「こんの野郎ーー!」
亮は男の胸ぐらを掴むと、荒く何度も揺さぶった。
男は困惑しながらも、どこか亮の態度に納得している様な反応をする。
「テメーここで何してんだ?!なんでここに来た?!社長の差し金か?!」
男は小さく頷き、「ごめん‥」と呟いた。
その答えを聞いた亮は、ギリギリと音がするほど歯噛みした。
亮はパンフレットを男の手から引ったくると、その場でビリビリと破り始めた。
そして再び男の胸ぐらを掴むと、顔を近づけて詰め寄った。
「こんの野郎!マジで来やがって!オレが地方でどんだけ良くしてやったと思ってんだ?!」
恩を売るような亮の態度に、男は白けた顔で応じた。なぜなら亮だって金を返してないから追われているわけであって、
決して褒められた立場じゃないからだ‥。
しかし亮は構うことなく、尚も男に向かって昔の話を続ける。
「テメーが地方で周りの奴らにいじめられてた時、オレが助けてやったし酒もおごってやっただろーが?!
色々面倒見てやったのに、恩の一つも返さねーままこんなとこまで訪ねて来やがってよぉ?!」
瞳孔絞り気味で男を見据える亮の眼差しを、男は明後日の方向を見ながらスルーする。
すると亮はハッとしながら、「社長連れて来てやしねーだろーな?!」と周りを見回した。
しかし男は平然と「一人で来た」と言う。
男の冷静な態度に、幾らか亮もクールダウンする。
胸ぐらを掴んでいた手を放すと、男は襟元を正しながら言葉を続けた。
「ここに居ることを確かめにだけ来たんだ。社長には既に伝わってる。多分数日以内に押しかけてくるよ」
男の話に、亮は頭を抱えた。
今社長は上京ついでにカルビが有名な地域に寄り、堪能している最中だという‥。
「社長の性格からして、亮を捕まえることが目的になっちゃってるんだと思う。
だからまずはここから離れて。会えなかったらきっと社長もすぐに諦めるよ」
分かったね?と言う男に、亮は返す言葉も無く再び歯噛みした。
亮も社長の性格はそれなりに熟知しての、その沈黙だった。
その後男は、このことを亮に報告した礼のことや、携帯番号が変わったら教えてと軽い調子で口にした。
どこか楽しそうな男とは反対に、亮は頭を抱えて再び悶絶する。
月末まで働かないと給与が差し引かれる。けれどそれまで待っていては社長が押しかけてくる‥。
「あんの社長めぇーー!オレが一体何したってんだー!!」
「マジで勘弁してくれよ!!」
あまりにも理不尽な事態の展開‥。
苛立ちの叫びはそのまま青空に吸い込まれる。
亮のすぐそばまで、離京の足音が迫っている‥。
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<離京の足音>でした。
亮が地方で働いていたのは「氷屋」とありましたね。
ですので結構肉体労働だったのだと思います。その肉体派従業員をまとめる社長ですので、きっといかつい感じなのだろうな‥。
と考えると、亮ピンチ!とハラハラしますね‥(^^;)
次回は<亀裂>です。
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