Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

追撃

2014-01-15 01:00:00 | 雪3年2部(同僚上京~亮塾辞職)
男の方を向いて、雪は顔を上げた。瞳の中に固い決意が燃えている。

雪は男を見据えると、強い口調で一言発した。

「幼稚過ぎて聞いていられないわ」



今まで沈黙し、どちらかというと落ち込んで見えた雪がそう言ったことで、男は目を見開いた。

口ごもる男に向かって、雪は言葉を続ける。

「素直にこう言ったらどうですか?

A大生の私にB大生の自分がフラれたから、プライドが傷つけられたって




「はぁ?!」と男は素っ頓狂な声を上げた。

動揺する男に向かって雪は続ける。

「それに教務室を変な場所だと勘違いしてません?私はただ質問しに行ってるだけですけど。

あ‥だからあなたは行かないんですか?変な想像されると思って」




雪はそれとなく男の不勉強を責めるようにも言葉を紡いだ。ギャラリーの学生たちは男を見て嗤っている。

廊下を見回すと女子学生も沢山いる。雪はそれも利用してこうも言った。

「女子学生は英語塾に外国人講師を目当てに通っていると考えてます?

講師と少しでも仲良くなったらすぐに付き合うとでも?男性と二人きりでいるだけですぐに不埒な目で見るんですね」




計算通り周りの女子学生達は、雪の言葉を受けて男を指さして顔をしかめた。

雪は相手が一番堪えるところに向けて言葉を続けた。それは急所を突くナイフのように男を攻撃し、返す言葉すら許さない。

「本当に低俗すぎて相手にしていられないんですけど。

頭の中そういうことばっかりなんでしょうね。これからB大生だって言わない方がいいですよ。大学の名前に泥塗るし」




雪は最後に彼のコンプレックスを突いた。B大よりレベルの高いA大生の雪が言うことで、それは尚の事意味を持った。

「他のB大生が可哀想だわ」



雪のその台詞を聞いて、とうとう男がブチ切れた。乱暴に雪の胸ぐらを掴むと、凄い形相で声を上げた。

「この野郎ーー!!!」



きゃあッ、と周りから声が上がる。

男は「バカにしやがって」と言いながら、掴んだ胸ぐらを自分の方へ寄せ拳を固めた。



怒れる男、青ざめる雪、騒然とするギャラリー。

そんな中、咄嗟に二人の間に近藤みゆきが駆け寄った。

「やめ‥!」



しかしみゆきの手が伸びるより先に、男の拳が雪に向かって振るわれた。

「死にてーか?!」



雪は思わず目を閉じた。そして本能的に拳を握ると、男に向かってがむしゃらにそれを突き出した。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」



バキッ!と、雪の右カウンターが男の頬にヒットした。

殴られた男も殴った雪も、そしてそれを見ていたギャラリーも、一瞬何が起こったか理解できなかった。



駆け寄ろうとしたみゆきも手を伸ばした格好のまま固まっていた。

しかし一番予想外だったのは雪のようだ。

震える自分の拳を見ながら、む‥無意識に‥と心の中で思う。



男は頬を押さえながら座り込んでおり、仲間たちが彼を取り囲んで声を掛けた。

女のくせにすげー力、お前大丈夫か歯は折れてねーかなど、その声はざわめく喧噪に溶けるようだ。



雪はとんでもないことになった、と心は動揺していたが、弱みを握られないようわざと険しい顔をして言った。

「そっちが先に殴ろうとしてきたから。正当防衛です」



最悪殴られるかもしれないと、雪は多少覚悟はしてきたつもりだった。まさか自分が手を出すことになるとは思わなかったが‥。

しかし雪のその言葉が、男に更なる火をつけた。

「このクソ女‥!」



男は止めようとする仲間たちを振り払い、雪を追いかけて再び拳を握った。

雪は両手で頭と顔をガードしつつも、今度こそ殴られると思い身を固める。

もうダメだ、と思った矢先、背中に大きな掌が触れた。



あ、と雪の口から小さく声が漏れる。

背中に触れた手は雪の背中を押し、そこに振るわれた男の拳が、河村亮の頬にヒットした。



思わぬ展開。

雪は目を丸くし、男は顔を青くした。



そして三人はそのまま暫し固まった。亮から押された雪だけが、オットットとたたらを踏む。



やがて雪は足がもつれてその場に座り込んだ。

トーマス?!と男は上ずった声で彼の名を呼び、俯いた亮は低い声で口を開く。

「‥偶然通りがかっただけだってのに‥」



亮は微かに震えながら、視線を漂わせて言葉を続けた。若干声も震えている。

「何で‥突然‥」



どこか哀しそうな亮の台詞。それは勿論お芝居だ。

「突然降りかかる‥オレの生命に対する‥」



哀しさの芝居は徐々に怒りのそれへと変わっていき、演技がだんだん本気へとシフトしていった。

尋常じゃない眼差しを向けられた男は身を竦め、そこに亮の拳が唸った。

「その危機、どんだけ~~~~?!!」



亮は全身の力を乗せて、渾身の左ストレートをお見舞いした。

その威力たるや、殴られた男が床をゴロゴロと転がるほどであった。



男の仲間達は彼に駆け寄り、亮を非難した。

雪も予想外の展開に口が開きっぱなしだ。



しかし亮はまるで気にしない素振りで目を閉じ、独りごちている。

「世の中は覗きからくり、カオスのるつぼ‥ってね‥」



亮は有名な演歌の歌詞を引用した。

インテリっぽい仕草で憂う亮を見て、雪が苦い顔をする‥。



殴られた男は未だ痛みに震えて顔も上げられずにいた。彼の仲間達が亮に向かって声を荒げる。

「講師が生徒殴っていいと思ってんのか?!クビになりてーのかよ?!」



切り札にも似た彼らの脅迫も、亮には何の意味も持たなかった。

「あ、オレどうせもう辞めようと思ってたから」



あっけらかんとした亮の態度に男は歯噛みしキャンキャンと吠えた。

「クッソ‥!俺の女に手出すなってか?!前に違う奴もそうやってぶん殴ってたよな?!」



男の”俺の女”に亮は疑問符を飛ばす。「あいつ何言ってんだ?」 「さぁ‥」

「やっぱ似た者同士だな!どうせ自分の国で就職出来なくてこっちに来たんだろ?!」



男の”自分の国”に亮はまた疑問符を飛ばす。「オレここが自分の国だけど?あいつ何言ってんだ?」 「さぁ‥」

あっけらかんとした亮と雪に男は苛立ち、脅迫めいた暴言を再び続けた。

「お前ら二人俺に一発ずつかましたんだからな?!二人まとめて警察に通報‥」



男の言葉を受けて、亮はニッコリと微笑んで頷いた。

そして男を見据えて口元だけ笑った。目は据わっている。

「ああ。通報でも何でもしろこのヤロー」



その目つきの恐ろしさに、男も仲間達も身を竦めた。

あんぐりと口を開けたまま顔面蒼白する。



亮は表情を変えないままゆっくりと男に近づいた。高身長の亮が、座り込んで萎縮した男を俯瞰する。

「どうせ警察行くんなら、もっと痛い目見とくか?」



「オレまだまだ物足んねーんだわ‥」

バキバキと指の関節を鳴らしながら近付く亮を見て、男は悲鳴を上げた。

男を庇う仲間達、亮を必死に止める雪‥。



廊下はそのまま暫し騒然としていた。

やがて彼らは塾の責任者に呼ばれ、すごすごと塾長室へと入って行った。


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<追撃>でした。

いや~やってくれましたね雪ちゃん。理路整然と真っ直ぐに相手を責めるのは、和美の時を彷彿とさせました。

 

なんとなく似ている二つのカット↑

ただこうすると相手は居直るかキレるかしかないんですよね‥。

和美は前者、今回の男は後者です。

しかし亮がいてくれてよかったですね~。困ったときに現れては助けてくれる亮。太一に次ぐヒーローですな。

亮が口にした「世の中は覗きからくり、カオスのるつぼ」というのはこの歌の詞です。

シンシネ-セサウン ヨギジョン  


韓国の演歌、トロットだそうで。

う~ん昭和を感じさせますね。

次回は<決着>です。

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