Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

男の不審点

2014-01-18 01:00:00 | 雪3年2部(大家の孫~了)
「あれ?」



と赤山蓮が声を出した。ここは雪の家の前である。

「こんちは」



友達と二人で歩いていた蓮は、偶然会った男に挨拶した。

「‥ああ」



帽子を目深に被っていた男は、そのツバを少し上げて蓮に会釈した。

その糸のように細い目で、蓮のパーツを観察する。



片耳にはまったピアス、七分丈のパンツに白のエナメル靴‥。

男は以前このアパートに住んでいた秀紀と同じ種類の人間だと、蓮のことを認識する。

こんにちは、と男が遅れて蓮に返事をすると、その後二人は同時に口を開いた。

最近この近所でよくお会いしますね?



そう互いに言った後、蓮は男から”家に長居されると困る”という旨の注意を受けていたことを思い出して弁明した。

「あ~、俺忘れ物してちょこ~っとここに寄っただけなんで。もう出て行きますから」



そうですか、と言って男は蓮に背を向けた。

そのそっけない背中に、続けて蓮は声を掛ける。

「あの、大家さんの‥お孫さん?ってことは、この建物に住んでるんすか?」



蓮の質問に、男は少し言葉を濁した。そこは祖母が住んでいるだけだと。

「それじゃあこの近所に住んでるんすか?すげーしょっちゅう会うから‥」



男を凝視する蓮の瞳は、鷹の目を彷彿とさせる。赤山家特有の、切れ長で鋭い瞳。

男がその問いに頷くと、尚も蓮は追及した。

「近所のどこら辺すか?」



その問いに対して、男は切り返した。「なぜそんなことを聞くんです?」

蓮は男の真正面から身体をずらし、姉の住んでいるアパートの向かいの建物を指さして口を開いた。



最近この近所がとても物騒なこと、このアパートに住む女性の部屋にも泥棒が入り、その女性が昨日引っ越したこと‥。

男は凡庸な態度で蓮の話に頷いていた。更に蓮の話は続く。



「うちの姉貴も近々部屋引き払うんで、最後にご挨拶でもと思ってたんすよ。

聞いたら窓も直してもらったとか‥。にしても怖いっすよね、引っ越してった人鉢合わせしたらしいすよ、犯人と!」


蓮の話に、男はその気持ちだけで十分ですと言って笑顔を浮かべた。

「それでは‥。向かいの部屋のことで色々所用がありますので、もう失礼します」



男はそう言って蓮に背を向け、

その後姿に向かって、「さようなら~」と軽い調子で蓮が手を振る。



今の会話を聞いていた友人が、お姉さん家の大家さんなのか、と蓮に尋ねる。

そんなようなもんだ、と蓮は浮かない顔をして答えた。

友人は蓮に向かって、柄にもなく刺々しい態度じゃないかと指摘した。蓮がその言葉に顔をしかめる。

「だってあまりにも人相があやしーんだもん」



蓮は男に対して、どこか不気味な印象を常に感じていた。

ニヤニヤといつも嗤っているような表情も、糸のように細い目も、どこか不審な点を彼に抱かせる。

しかし友人はそんな蓮の話を取り合わなかった。そんな自分勝手な印象で人を決め付けんのか、と言って笑う。

「お前、昨日ゲイと間違われてキレてたような人間のくせにww」



男の言葉に蓮はガン切れだ。片方ピアスしてれば皆ゲイなのかよと言って声を荒げる。

そして蓮の怒りは更にヒートアップする。この21世紀にまだどれだけオールドファッションな考えがはびこっているのかと。

「そういう偏見が人間関係において隔絶を生み、誤解を招き、

俺みたいな純粋にオシャレを愛する人間の生き方を阻害するんじゃねーのかよ?!」




メラメラと苛立ちの炎を燃やす蓮は、この国に根付いた窮屈さを嘆いた。

そしてその怒りの矛先を友人にも向けると、彼の耳を引っ張ってそのピアスを示す。

「てかお前がそのピアスつけてるからだし!真似すんなコラァ!

しかも俺だけそういう風に見られんのが超ムカつく!」




蓮はそう言って友人を羽交い締めにした。

二人はその後、互いに文句を言いながら道を歩いて行ったが、その喧嘩はどこか楽しげだった。



二人とは反対方向を行く男の耳にも、その笑い声が聞こえてきた。

男は足を止め振り向く。



親しげに肩を組む、お揃いのピアスをつけた男性二人‥。



それを見た男は、二人の間を完全に誤解した。彼らは友情以上の仲であると。

男は溜息を吐き、忌々しいものを見たかように小さく吐き捨てた。

「はぁ‥。またおぞましい奴らが‥」



男はその糸のような目で、彼らの行く先をこっそりと窺った。

するとアパートに住む女子大生が家から出てきて、弟に何やら大目玉を食らわせている。

 

そして男は、向かいのアパートの窓を見上げて独りごちた。

ここは失敗したし‥と。



そしてもう一度、後方で騒ぐ彼らの方へ視線を飛ばした。

そして一人、ニヤリと口角を歪めて笑う。

 

男は一人覚悟を決めると、その場で小さく呟いた。

「最後にもう一度だけ、髪を染めなきゃなんないかな‥」



不穏な歯車が、カタカタと音を立ててその回転を加速する。

この夏最後の大事件が、もうそこまでと迫っていた。

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<男の不審点>でした。

なんか今回もう決定したような感じですね、自称”大家の孫”の正体が‥。

犯行の度に髪を染めていたということなんでしょうね、最後のセリフは。あー怖‥。

しかし蓮くんオシャレですね。靴下はかずに靴履いてるのはジュンイチ石田か!と突っ込みたくなりますが‥。


そして大家の孫と蓮のセリフが被った時、蓮が「チチポン」と言うのですが、

これは二人が同じセリフを同時に言った時に言う言葉なのだそうです。



日本でも同じ言葉を言った後、「ハッピーアイスクリーム」や「ハッピーお返しなし」と言って

肩を叩き合うゲームがあるらしいですね。私は全く知らなかったのですが‥。

そういう遊びやったことあるよーって方、また教えて下さいね~^^


次回は<母と娘と長男と>です。



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