
空は抜けるような青さだが、頬を掠める風はどこか秋の気配を感じさせるにおいがした。
さて雪を取り巻く人々がどんな夏休みを送り、今終わりを迎えているかを覗いてみようと思う。
柳瀬健太は相変わらずの夏休みを送ったらしい。
今は仲間と夏の終わりを惜しみながら、酒を飲んでいるところだろうか?

小西恵は、夏休みいっぱいヨーロッパで美術館巡りをして過ごした。
オーストリア、フランス、イタリア‥。見るもの全てに刺激があり、おそらく有意義な夏休みになったことと思う。

萌奈は知り合いの仕事を手伝いながら、忙しい夏休みを送った。
アパレル関係の雑用からアシスタントなど、目の回るような二ヶ月間であった。

柳楓はボランティアへ行ったり、他校の彼女と映画館に行ったりと、まったりとマイペースに過ごしたようだ。
いつも変わらないその楽天的なペースで、夏休みを楽しんだことだろう。

平井和美は、今空の上にいた。
向こう一年間は休学し、交換留学生として外国へ行くつもりだ。
胸に残ったわだかまりを奥の方へ沈めて、彼女は新しい扉をノックする。

横山翔は、それなりに忙しい夏休みを過ごした。
夏期講習に通った塾も終盤で、幾分ダレているようだ。

彼はこの秋学期から復学する。水面下でその為の準備に余念が無かった。
来たる新学期に、彼の思惑は見事果たされるのであろうか‥。
そして秋学期波乱を巻き起こす彼女は、洋服を買っていた。

カーキの長シャツ、スキニーパンツ、ナチュラルウエーブの髪の毛‥。どこかで見たようなファッションだ。
彼女が目指す先には一体何があるのか‥?
それはこれからのお楽しみだ。
そしてこの夏休みの終わりに誰よりも、衝撃的な出会いを果たした人物がいる。
彼の名は、佐藤広隆。

佐藤は今、コンビニに居た。顔を顰め、苛立ちを抱え、レジの順番を待っているのだ。
なぜこんな表情をしているかというと、前に並んだ女が大騒ぎしているからだった。
「50%!50%オフのセール品でしょこれ?!50%の意味が分かんないの?!半分だよ半分!!」

女は大声で店員にクレームを入れているところだった。
50%オフだと思ってレジに持って行ったアイスクリームが、定価で値段を打たれたらしい。
しかし店員は説明していた。50%オフは左側の棚にあるものであり、右側のものは全て定価なのだと。
女は右側の商品を持っていたのだが、依然として自分のミスは認めなかった。
「それじゃ50円のは50%オフで、90円と150円のアイスは定価ってこと?!それって詐欺と同じじゃない!!」

女の態度に店員は頭を抱えていた。
今やコンビニ中の客が女と店員のやり取りに呆気にとられ、真後ろで見ている佐藤の苛立ちは募る。

なぜこんな少額な買い物で言いがかりをつけているのか、佐藤は信じられない思いで彼女の主張を聞いていた。
女はこんな少額な買い物で揉め事を起こさせるあんたの会社どうなってんの、と責め続けている。

後ろからは顔が見えなかったが、女のスタイルは抜群に良かった。
ミニスカートを履きこなし、手入れされた細く長い足がそこから伸びている。
そんな女の容姿やブランドのバッグを見て、佐藤は自分をメンテする金はあるくせに50円すら惜しむのかと思った。
女はとにかく苛つきながら、値段の表記ミスはあんたのとこのミスなんだから、半額で会計すべきと譲らない。
女の主張は終わりが見えず、永遠に続くのではないかと思えた。コンビニ中の客の溜息が漏れる‥。
「あの、ちょっと!」

そこに遂に、見かねた佐藤が割って入った。
財布を出し、適当に紙幣をレジに置く。
「もうこれで会計済ませて、早く終わらせてくれ!」

佐藤はイライラしながら早口で捲し立てた。
「後に人がつかえてんだ!迷惑だからさっさと‥」

そこまで言ったところで、女が掛けていたサングラスを外した。
長い髪が揺れ、女は頭を振って髪を払う。

彼女は佐藤の方を見て笑顔を浮かべた。そして甘ったるい声で彼に礼を言う。
「あらあら~?ありがとね~」

河村静香の美貌には、誰もが目を奪われる。
それは佐藤も、例外ではなかった。

運命の歯車が回り出す。
予測できない未来を乗せて、次のステージへと皆を運んで行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<それぞれの夏休み終盤>でした。
区切りをつけると短めの記事になりました。すみません‥m(_ _)m
皆思い思いの夏休みを過ごしたんですね~。柳先輩の見てるのは3Dの映画ですかね‥(やはり気になる柳ファン)
そして佐藤×静香の出会い!この出会いが幸と出るか不幸と出るか‥まったく予測出来ない組み合わせですね。。
次回は<味趣連金>です。
人気ブログランキングに参加しました


