花瓶を買って、骨董店を出、向かったのは、こんな場所。
店主と談笑しながら、「もう閉館時間に間に合わなくてもいいや」と言ったら、
「あそこは美しいから、ぜひ見てきなさい」と。
旧岩崎邸は、英国人・ジョサイア・コンドル設計の美しい建物。
三菱創設者・岩崎家本邸として、1896年(明治29年)完成。
靴を脱いで上がります。
思わず息をのむ。
往時は、15000坪の敷地に、20以上の建物があったというが......
今は、3棟を残すのみ。
圧倒的な財力と、
職人の意地が生み出す神の技。
本格的なヨーロッパ式邸宅は、木造二階建て、地下室つき。
ジャコビアン様式、イギリス・ルネサンス様式、トスカナ式、イオニア式......
カントリーハウス。
それらが混在した、稀有の建築。
このサンルームは後年作られたとか。
どこをとっても美しい。
どこを向いても隙がない。
結合した和館は書院づくり。
かつては550坪あったということだけれど.......
今は、小ぢんまりと、その美しさを伝える。
(どうやら国は庁舎建設のために和館の大部分を壊したらしい。アホか!)
ここの職員さんは毎日こんな美しい場所で働けて幸せだなぁ。
撞球室(ビリヤード場)は洋館と地下道でつながり。
スイスの山小屋風。
小さな窓の、隅々に至るまで。
オイルヒーターさえ、この美しさ。
どこをとっても美しい。
どこを向いても溜息ばかり。
有無を言わせない財力が、誇りを持って作らせたのは、
これもまた、職人たちの誇りの塊。
写真なんかじゃ伝わらない、圧倒的な美しさ。
この柱を見たとき、思わず感嘆の声をあげてしまったのは
我々だけではないだろう。
長い歴史の中では、
GHQに接収されたり、財産税で物納されたり、
いろいろあったようだけど。
ようやく5年前より、通年公開され......
都立の、有料公園として、機能する。
ちなみにここは、岩崎家でも、年に1度の親族の集まりや、
来賓を招いてのパーティでしか使わなかったとか。
これが往時であったなら......
我々など、近づくことも叶わなかったろうが。
今は、束の間、夢が見られる。
美しく、繊細で、威厳があって、重厚で。
静かな光を放つ夢。
一階と二階では少し趣も違い。
和館もまた美しい。
往時のすべても見たかったけど。
この時代に生まれたからこそ、誰もが入れることを思えば......
「現代に生まれて本当によかった」と。
旧岩崎邸は.......
心より、そう思わせる場所。
岩崎さん、コンドルさん、そして、職人さんたち......
こんなに美しいものを遺して下さって、ありがとう。