旧岩崎邸を出て、二人が向うのは。
美の極致といえる、旧岩崎邸への道のりに、
ささやかながら、美しい花瓶を手に入れたのは、
やはり運命なのだろう。
思い返せば返すほど、そういう出会いが確かにあるものだと......
今は自然に思えるから。
心を満たしたあとは、おなかを満たさないと!(笑)
上野といえば.......【精養軒】の『ハヤシライス』。
少々無理を押してでも、手に入れる価値のあるもの。
そこにあるだけで生活を変え、気の持ち方さえ変えるもの。
たとえば小さな貴石。
たとえばとっておきのグラス。
.......たとえば美しい家具。
岩崎邸にあったものと比べたら、おもちゃみたいなものかもしれないけど、
それでも我が家には、贅沢すぎる宝物。
かつて、二人で見つけた二つの家具は、
確かにそんなものだった。
この、小さく古い部屋には、
あまりに贅沢すぎると、思わないでもなかったけれど。
それでも「あのとき勇気を出してよかった」と。
今になって心底思う。
ちなみにこちら、アンティークショップとかではなく、
リサイクル屋で買いました。
大使館流れのものがあるという噂の.....
いえ、由来などどうでもいいんですけどね。
一目見て、「欲しい!」と思った、それが大事。
値段を見て、ちょっとびびったけど(笑)
(リサイクル品の値段としてはという意味で)
今では「安い買い物だった」そう思います。
いや。
まあ、普通から考えれば、
それらは「勇気を出して」といえるほど高価なわけでもないのだろうけど。
それでも、私たちにとっては、
ほんの少し、「清水の舞台」。
何より素人には、相場のわからぬそれらのものは、
それこそどう価値を見出すのか。
決めるのは己の勘のみ、だったから。
こちらも幾度か登場してますね。
イギリスからやってきた60年ほど前のもの。
いや.....うちにやってきた年を数えると、
もうすぐ「70年ほど前のもの」となるのかな?
そして........
勘は当たった。
少なくとも、二人にとっては。
あのとき決断していて、本当によかったと。
.......あとは、手に入れたのち、それをどうするかだ。
「あの.....ワタクシ、いくつかあの家具に小さな傷を.....」
「知ってます」(笑)
爪とぎ以外では絶対に爪をとがないちゃあこだが、
後ろ脚の爪だけはコントロールが利かないので
(猫の体はそういう仕組み)
上に乗ったりしたとき、時折間違って傷がつく。
それでも、二人が大事にしてるのを知ってるのか、
ちゃあこもものすご~く気を使って乗ったりしてるけど(笑)
モノの運命を決めるのは、それを思う心。
愛しみ、育て、受け継ぐのか。
または消費し、捨てるのか。
私は......
共に生きたいと思う。
ちなみに極度の寒がりのこのお方は、「寒い~、お膝に乗せて~」と、
べったりべたべたの毎日を送っておられます。
それでもまだ寒いのか、足がきゅ~っと縮こまってるけど(笑)
作った人の思いと、持った人の思いと.......
めぐりめぐって、受け継いで。
ふたつの家具と、ひとつの花瓶を.......
次の手に、渡すまで。
そういえば、「上野といえば」のこの風景が、もうすぐ変わるようです。
一階店舗は皆、板でふさがれ........
窓から見える上階の様子も、取り壊し前を思わせました。