まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

直木賞の『流』  本屋大賞の『羊と鋼の森』

2017-07-09 09:02:39 | 

東山彰良さん。
台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能が、
はじめて己の血を解き放つ!友情と初恋。流浪と決断。圧倒的物語。

何者でもなかった。ゆえに自由だった――。
1975年、台北。偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。
内戦で敗れ、追われるように台湾に渡った不死身の祖父。なぜ? 誰が?
無軌道に生きる17歳のわたしには、まだその意味はわからなかった。
台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。 

選考委員満場一致の第153回直木賞受賞作。
「20年に一度の傑作。とんでもない商売敵を選んでしまった」(選考委員・北方謙三氏)
「私は何度も驚き、ずっと幸福だった。これほど幸せな読書は何年ぶりだ?」(選考委員・伊集院静氏)
なんて。海千山千の作家たちが満場一致だなんて、そんなことあるのかしら。そこに惹かれて読んだ。 

とても面白かった、わくわくする面白さ。
躍動感があり読みながら映画の画面が浮かんでくるようなそんな印象。

文中出てくる人物名はわかりにくいし、何しろ当たり前ながら、漢字のみなのです。
(宇文叔父さん 葉祖父 毛毛 等々)登場人物同士の相互関係も何度となく確かめないと分からない。
ましてや戦中戦後の台湾中国日本を取り巻く歴史なんて私にはさっぱりである。
が、そこを我慢して読み進めていくと、ただただ青春小説としてのストーリーを駆け抜ける疾走感が心地よく、
暴力が横行する話もほとんどが法螺だと受け流して読み進めば胸躍るというもの。

もう20年以上も前ではあるが、職場の友5人と台湾旅行に行ったことがある。
台北の街の混沌とした市場や屋台。まっ黒な鳥の足や卵などの得体のしれない食べ物と
町中を漂っている八角の何とも言えない匂い。
タクシーの運ちゃんにはわざわざ遠回りをされ料金をぼった繰られたりして。
家々や町並みは日本の昭和40年代だねの印象があって。
容易に想像できるそんな風景の中で繰り広げられる青春小説だ。

印象的だった文章を抜き書き。

主人公の言葉

あのとき、痛みをこらえて見上げた夜空にも、星がひとつだけまたたいていた。
どうしようもないことはどうしようもない、わからないものはわからない、解決できない問題は解決できない。
それでもじっと我慢をしていれば、その出来事はいずれわたしたちのなかで痛みを抜き取られ、
修復不能のままうずもれてゆく。そしてわたしたちを守る翡翠となる。
そうだろ、じいちゃん?

雷威(レイ ウェイ) 不良たちの頭目的存在喧嘩詩人はレンシュエンってやつの詩

魚がいました。
私は水の中で暮らしているのだから、あなたには私の涙が見えません。

2016年本屋大賞ノミネート!!だったけれど、8位。そして大賞が『羊と鋼の森』宮下奈都(著)。
さて、この結果をどうみたら良いか面白くて。



ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。
言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。
彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

5月に佐渡に帰ったとき図書館から借りて読んだ1冊。
私はとても好きです、良い本だなと思いました。「蜜蜂と遠雷」が大きな興奮を呼ぶ1冊なら、
「羊と鋼の森」は静かな興奮がひたひたと寄せてくるようなそんな感じの1冊。
ピアノ調律師を目指す主人公の外村青年、浮世離れしているというのとは違う独自の豊かなものを秘めている
そんな彼がとても魅力的で。折々描写される北海道の森の風景や音、匂いがこれまたいっそう味わい深くて。
読み進めたいような、とどまってじっくり堪能したいような、読了するのが惜しい気持ちになりました。

自分だったら直木賞にどちらを選ぶだろうか、本屋大賞にどちらを選ぶだろうか。
他の決定要素は分からないけれど好みだけなら「羊と鋼の森」だな。

 

デジブック 『上野ファーム』

コメント
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