電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ジュディス・コーガン『ジュリアードの青春』を読む

2011年11月05日 06時02分06秒 | 読書
先の出張の際に、新幹線の車内で読んでいたのが、ジュディス・コーガン著、木村博江訳『ジュリアードの青春~音楽に賭ける若者たち~』(原題:"The Juillard School - Nothing But The Best", 新宿書房、四六判、346頁)でした。本書は、ジュリアード音楽院に学ぶ若者たちの、音楽以外の要素を遮断した生活、異常なまでのひたむきさ、成功を目指す不安と葛藤などを描き出します。


第一章 たたずまい
第二章 オーディション
第三章 プレッシャー
第四章 予備校
第五章 教師
第六章 コンクール
第七章 カフェテリア
第八章 オーケストラ
第九章 恋の季節
第十章 卒業
訳者あとがき

音楽大学に学ぶ学生たちの日常については、映画「のだめカンタービレ」などで、やや誇張された形で承知しておりますが、本書の内容はさらに過激に異常です(^o^)/
オーディションの章やプレッシャーの章などは、思わず学生たちに同情してしまいますし、作曲科の教師のトンデモ・エピソードには、怒りを覚えます。「恋の季節」の不幸ななりゆきは、再出発を祈るよりほかはありません。

本書で最も印象的だったのが、「オーケストラ」の章でした。「あの人はすごい。オーケストラを好きにならせてくれる」。ほとんど皆がソリストを目指すジュリアードのヴァイオリン科の学生が、別の学生にもらします。ジュリアード・オーケストラを、一週間の圧縮したリハーサルで本気にさせ、「ツァラ」と「エロイカ」のプログラムを振って驚異的な大成功をおさめさせた、スクロヴァチェフスキのエピソードです。彼が50代の頃でしょうか。優れた指揮者とはどういう人を言うのか、よくわかるような気がします。

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