北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

米軍再編交付金と「ふるさと納税」制度

2011-01-16 | ニュースコメント
 辺野古新基地建設に反対する名護市に対し菅内閣は昨年暮れ、2009年度と2010年度分の米軍再編交付金16億8千万円を交付しないことを決めた。自公政権が米軍再編を進めるためのアメとムチとして創設した制度を、民主党政権も継承し、行使したのである。
 昨年5月の日米合意実現に向けた決意の表れかもしれない。しかし、自治体の財政難につけ込み国策を押し付けようとするこのような制度は、地域主権を掲げる民主党政権発足とともに真っ先に廃止されるべき制度ではなかったのか。
 
 菅内閣の理不尽な仕打ちに対して、池田香代子さんは自身のブログで名護市に「ふるさと納税」しませんか?(2010-12-27)と提案している。名護市を全国から応援しようという呼びかけである。沖縄のたたかいに関わってきた人なら「よっしゃ!」と賛同した方も多いのではないだろうか。

 その2日後、沖縄在住の作家・目取真俊さんがブログ「海鳴りの島から」で「ふるさと納税」の呼びかけに批判的な意見を表明している。米軍再編交付金とふるさと納税について(2010-12-29)
 「ふるさと納税」制度の趣旨からして政治的利用は誤りであり、逆の立場からの濫用の危険性も含めて、自治が犯されると警鐘を鳴らす。稲嶺市長を応援するのならば後援会へのカンパ、運動への支援ならば運動団体へのカンパをすべきという主張ももっともである。

 これに応えて池田さんの考えが再度示されている。目取真俊さんのふるさと納税批判に応える(2011-1-4)

 さらに1月14日の沖縄タイムズによれば、「世界」の岡本厚編集長や宇沢弘文東大名誉教授ら主に本土在住の有識者やメディアの有志が1月17日、参議院会館で記者会見を開き、名護市への「ふるさと納税」を呼びかけるという。

 運動的に利用できる制度があるならば活用する、様々な手段を使って基地を押し付ける政府に対し異議申し立てをしていくという池田さんの姿勢には共感を覚えつつも、私はやはり目取真さんの見解にあるように税制については慎重に対応すべきではないかと思う。「ふるさと納税」制度は、単に税制面から都市住民にふるさと支援策を提示しただけではない。政府が富の再配分を独占してきた中で、わずかとはいえ納税者が自ら再配分先を選択できる道を開いたという意味で画期的制度でもある。せっかくの制度であり、大切に慎重に育てることも考えていいのではないだろうか。

 ただ、「ふるさと納税」制度が首長の政治的主張とまったく別なところに存在する制度かどうかとなると若干の疑問も残る。

 たとえば珠洲市はふるさと納税募集のホームページで「珠洲市ではこの制度を活用し、「美しい里山里海の自然環境の保全」と「子供からお年寄りまでが元気に暮らせる住みよいまちづくり」を応援していただけるサポーターを大募集いたします!」と掲載しているが、ここで里山里海の保全を語りながら、同時に原発立地を推進していたら同じように納税するだろうか。やはり納税手続きの前に「はて?ふるさとを応援したいのはヤマヤマだがどうしたものか・・・」と考えるのではないだろうか。

 そもそも地方交付税制度が本来の役割を十分に果たしていれば、こんな制度はいらなかったんじゃないかという考えもあるかもしれない。目取真さんが危惧するような展開になるならば、ふるさと納税制度は廃止してしまえ、という考えもあるかもしれない。

 私は「ここが勝負どころ」という局面ならば、タイガーマスク運動に劣らぬ大国民運動を「ふるさと納税」制度を利用して展開することも「あり」だと思う。

 では、いまの名護市財政がそのような局面なのか。
 名護市の財政が大変厳しい状況にあるのは私なりに承知してる。その原因は政府による多額の基地押し付け予算が原因である。ハコ物行政の結果として維持管理費が膨張し、財政がいびつになっているのである。基地予算依存財政から脱却が稲嶺市政の大きな課題である。今回のムチに対しても、事業の精査をし、他の事業の活用や自主財源の活用で対応する方針が示されている。16億円のカットで稲嶺市政が行き詰まる局面ではないのではないか。

 菅第二次改造内閣が辺野古新基地建設に突き進む中、なんとか局面の転換を図りたいという思いは共有するが、目取真さんが危惧するように「金を使って外部から自治体をコントロールしようという発想」は自治体経営の観点からは危うく、運動側も禁欲的な姿勢が求められるのではないか。



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