北野進の活動日記

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議員報酬アップ-続編- なんとも杜撰な報酬審議会

2019-09-09 | 珠洲市議会
9月議会に突如浮上した議員報酬アップ条例。
9月3日のブログ(9月議会開会 議員報酬2万5千円アップ?!)で紹介したが、今日はその続編。

議員報酬の額はこの計算方法で、という客観的なモノサシがないことは前回も書いた。
地方自治法では上限も下限も決められていない.
逆に言うならば、市民の皆さんが「なるほど、そういうことか」「納得!納得!」という理由があればOKということだ。

前任期では、定数削減とセットで報酬アップすべきとし、市長に対して報酬審議会への諮問を求めるべきとの意見も議会内にあったが、結果的に現時点では報酬アップを求める状況にないということでこの件は見送りとなった。

議会側が現時点で諦めた報酬アップを、どんな議論を経て、どんな理由でやるというのか。
議会開会日の市長提案を聞き、さっそく情報公開の手続きを踏んで報酬審議会の会議録と配布資料を入手した。

報酬審議会なんて「初めに結論ありき」だという委員経験者の指摘もあったが、あらためて記録を確認すると結論はまさに市長のイエスマンばかり集めて「その通り」の結論へ。ときには市長の思いを忖度しすぎて、オーバーラン発言まで飛び出す始末。

事務局からは①近年の社会情勢(消費税アップなど?)や後継者確保の環境整備、②定数2減で歳費総額削減済み、③定数減で議員一人当たりの業務量、役割は拡大、以上の理由で報酬引き上げを提案し、具体的に3案を提示。
改正案①は1万5千円程度引き上げ(かほく市と同額)
改正案②は5%程度(約2万円)引き上げ
改正案③は2万5千円引き上げ(2007年の引き下げ時に戻す)

問題点はたくさんあるが、
1.まず1日で意見をまとめて答申という乱暴なスケジュール。他の自治体の報酬審議会を見ると、2日あるいは3日かけて議論するところが多い。1日目に資料説明を受け、経過や課題について確認する、2日目に委員間で意見交換し意見をまとめるが、議員を呼んで実態をより詳細に把握するという審議会も珍しくない。そして3日目に答申案の確認である。
1日で終わるのは、報酬アップに理由なし=却下!みたいな場合である。

2.実際、会議録に目を通しても、報酬アップに関する近年の議論を少し勉強して参加しているなという委員は一人もいない。資料説明を受け、その場での思いつきの発言が続くだけである。これでは結論ありきの審議会といわれても仕方ない。

3、事務局提出の資料も貧弱。客観的な「これっ!」というモノサシがない分、他の自治体では類似団体との比較や財政や人口規模などの関係についてより詳細なデータを示し、また議員の活動の実態についてもより正確に把握し、妥当な額を見出そうと努めている。入手した会議録を見ると追加資料を求める声すらない。

4.報酬や定数を議論する際、基礎的なデータは類似団体との比較である(これについては先日の私のブログ参照)。類似団体の比較では、珠洲市の議員報酬は低いどころか高い方。そして議会改革度ランキングなどで示される数値では、議会として十分な活動ができていない実態が示されている。こうした現実をスルーして報酬を議論するなんて通常はありえない。

5.類似団体はどうであろうと珠洲市議会はこうあるべきだという議論を否定するものではない。議員の今後の活動に期待し報酬アップに賛成するという意見も散見される。ならば議員の活動実態や今後の議会改革の取り組み課題くらいは最低限把握すべきではないか。

6.議員の活動は見えにくいとの指摘もあるが、ならばそのまま報酬アップを認めるとはあまりにも無責任。活動を把握するための資料の提出を求めるなり、審議会に議員を呼んで、珠洲市議会の活動の実態を把握するなり、審議会としてやれることはたくさんある。
(例えば、議員のなり手不足に苦悩し試行錯誤を続ける長崎県小値賀町のこの報告書参照)

7.初めに報酬アップありきで政務活動費と関係が議論されていない。8月21日のブログで紹介したが珠洲市議に月2万円の政務活動費が支給されることになっているが、昨年度は14人中10人が全額を請求するには至らず、全体の執行率は82.2%にとどまっている。本当に月34万円、期末手当も入れて年間5,674,600円(H30年度実績)が珠洲市議の報酬として少ないのか。

8.議長、副議長、議員について、一律2万5千円アップ(復活)だが、仮に上げるとして議長、副議長の額も同額の復活でいいのか全く議論されていない。委員の皆さん、議長の役割について関心があるのかすら疑問。

9.報酬アップの理由の1番目が議員のなり手不足の解消である。全国的には報酬アップが立候補者の増加につながっていない実態も多く報告されている。私の経験から言っても立候補の要請をして「報酬がもう少し高ければなぁ」という声など聞いたことがない。新人の立候補を促す動機づけというより現職を続ける動機づけ、つまり世代交代より高齢議員の多選出馬を促す要因とならないか。

10.なり手不足については、珠洲市議選は今春定員1オーバー、4年前は2オーバーで、決して立候補者数は多くはないが、各地の町村議会で深刻化している無競争や定員割れという事態には至ったことはない。そんな状況だが、市長がこの問題を重視するのには珠洲市特有の理由があるように思う。他市の首長と異なり泉谷市長は自分の気に入らない議員は議会から排除しようと、対抗馬擁立に自ら先頭に立って奔走している。そんな中で今春も何人かの方から断られたとも聞いている。議員報酬アップはまさに泉谷市長にとってのなり手不足解消策ではないのか。審議会は事務局提案を鵜呑みにするだけで、審議会としての議論は全く不十分である。

以上、報酬審議会の問題点、疑問点を上げだすとキリがない。
10項目でちょうどキリがいいところだが、もう一つオマケに11個目の問題を加えたい。

11.会議録によれば、2万5千円どころか「消費税も上がるし、10万も20万も上げてもいいのではないか」という意見まで飛び出している。別の委員からも「金沢なみとまでは言わないですが、上げて頑張ってもらうことに期待したいと思うし、報酬を上げることで若い人が出てくればいいなと思う」と賛同する意見が示されている。仮に20万円上げて月額報酬54万円となれば小松市を抜き県内2位である。自由で多様な意見を頭ごなしに否定したくはないが、この場は市長の諮問機関である「珠洲市特別職報酬審議会」である。これが放言や居酒屋談義の類でないというのなら、もう少し具体的かつ説得力ある理由もぜひ聞きたいものだ。

議員報酬の引き上げは、手続き的には市長が特別職報酬審議会に諮問し、審議会からの答申を受けて議会に対して報酬引き上げの条例を提出し、議会が可決すれば実現するのだが、議会が報酬アップのあめ玉議案を「ごちそうさま!」とすんなり飛びつき賛成するようでは議会の存在意義が問われるのではないか。
継続審議にしてでも、本当に市民が「なるほど、納得!」という理由があるのか議会自らしっかり吟味することを求めたい。

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