昨日(11月16日)実施された石川県原子力防災訓練。
谷本知事は能登中学校でおこなわれた閉会式で「原子力防災計画を見直し、今日の訓練に反映した」と語った。
今回の計画見直しで、計画の根幹にかかわるモニタリングや避難の意思決定、避難計画、ヨウ素剤の配布など被ばく医療など多くの点が変更された。
「反映した」というからにはこの根幹部分を訓練に反映し、実証していくものでなければならない。
ところが訓練全般、空にも海にも陸にも自衛隊がバンバン登場する派手さあったが、計画の根幹を確認する内容からは程遠かった。
今回の訓練に対し、社民党県連合や平和運動センターが中心となり、市民Gも加わり総勢70人で調査班を編成し、奥能登から白山麓まで広域にわたった訓練をウォッチングしていった。さらに避難地域の住民約600人を対象に防災計画や原発に対する意識を探るアンケートも実施した。これらをまとめた調査行動の報告書は今週中にまとめる予定だ。
今日は私の視察した内容を報告し、さらに昨日発表した声明を紹介したい。
朝5時起床で6時50分に志賀町の能登原子力センターに到着。
快晴で風もない。
調査班の皆さんにとって回りやすい天候だが、私たち以上に安堵したのは県の原子力防災の担当者だろう。昨年は海が時化て海や空の訓練の一部が中止、変更となった。今年は天候に左右されることなく全訓練内容が実施されることだろう(もちろん好天に合わせて事故が起きるわけではない。好天だから可能となる訓練項目はオマケ、プラスαという認識が必要)。
毎度の光景だが、現地災害対策本部、オフサイトセンターでは7時前から参加者が揃って、事故通報を待ち受ける。
写真中央は第一報を受けている人。
さっそくベストを着用して配置につく。
今回のオフサイトセンターの訓練でもっとも注目したのはこの班の動きだ。
今回の訓練では初めてブラインド訓練(参加者に事前にシナリオを教えない訓練)導入される。
といってもごく一部なのだが、そこがこのモニタリング班だ。
計画の改定で30キロ圏はSPEEDIによる予測による避難ではなくモニタリングで空間線量を確認し避難指示となった。
どの地域を重点的にモニタリングするのか、計画の策定から行動の指示、データの分析も含め、その役割が高まった。
加えてもう一つの変更点は、モニタリングが国(原子力規制委員会)の統制下におかれることになったという点だ。
いざという時、国は実践力を発揮し、迅速、的確な判断ができるのか、信頼するに足る能力があるのか、ブラインド訓練の展開に私たちは注目した(結果は後の「声明」参照)。
今回の訓練の主催は石川県と関係13市町だが、モニタリング班だけでなく、オフサイトセンター各班の動きを仕切ったのが原子力規制委員会。この点は法律および計画に沿っている。もちろんこれがいいのかどうか、まさに検証していくのが県の計画でなければならないはずだが。
さて、この後のオフサイトセンターの動きは、オフサイトセンター調査班に任せて私はH弁護士とともに福浦の避難状況の視察で外に出る。
途中の志賀浦小学校前の交差点。原発から5キロ弱。
交通規制に入った警察官。昨年は原子力緊急宣言が出た後、防護服に着替えていた。今年もおそらくこの後着替えたと思われる。このタイミングは遅くないか。しかも防護服といっても放射線は遮らない。きわめて危険な業務だ。
8:05 志賀浦小学校前。すでにバスが待機。
7:30の全交流電源喪失で、EALに従えば避難準備となるが、まずはバスの手配から始めるべきだ。
さらに段取りがいいのが福浦の避難訓練。
こちらも8:20の時点ですでにバスが待機している。
8:24 すでに漁村センターに待機していた避難訓練参加者がバスに乗り込む。
8:26 これからさらに住民が集まってくるのかと思ったらすぐに出発!(目が点になる)
8:32 私の携帯にエリアメールで避難指示。ちなみにこの地区は防災無線の放送が入らなかった。私もH弁護士も、調査班の二人も聞いていない。
福浦地区は急峻な地形ということもあり、毎回、元気なお年寄りしか訓練に参加していない。常連参加者の慣れた(慣れすぎた)避難行動だ。
9:20 奥能登行政事務所へ。避難経路の途中に今回新たに設けられたスクリーニングポイントが設置されている。
福浦発のバスの先回りをしたが、ちょうど富来中学校の子どもたちが到着したところ。
奥能登行政事務所のどこでスクリーニングをやるのかと思ってたが、なんと道路を挟んだ向かいの駐車場である。ここでも好天の成果が存分に発揮されたが、前日のような荒天でもここで実施したのだろうか。
志賀町や穴水からの避難者330人(予定)。うち110人がスクリーニングを受ける。
なぜ全員受けないのか。
理由はもちろんスケジュールの関係。
受付とスクリーニングは各5班用意されている。
スクリーニングに要する時間は一人あたり約2分30秒。ということは一斑あたり1時間で24人しか対応できない。5班で120人。
つまりわずか330人の参加でも3時間近く要するのである。
1時間の日程で組んでおり、避難所に移動してもらわなければ午前中に訓練は終わらない。雨だったらさらにスクリーニングを受ける人を減らしたのではないか。いや、受けたことにして、バスから降りずにすぐに避難所へ?
仮に18000人が避難してきたら(計画ではありうる)、この態勢では150時間かかることになる。さあどうする?
簡易除染を受ける模擬汚染者は5人。
全身除染を受ける模擬汚染者も5人。
過酷事故が起こり、志賀原発はベントを実施。しかも5~30キロ圏は500μSv/hで避難指示。これだけの汚染者で済むのか。甘いと言わざるをえない。
10:30頃だったか、避難先の能登中学校着。
移動式体表面測定車を体験する子どもら。
「かっこいい!」
との声。・・・まあ仕方ないか。
でもこれはどうなのか。
避難バスを先導した白バイに体験乗車。
もちろん「かっこいい!」
閉会式で大人でも退屈な(講演内容おおいに問題あり!)こんな講演を聴かされる子どもたちなんだから、少しくらいはバス遠足の気分を味あわせたいというのも配慮もあったのかもしれない。目くじらを立てたくないが、まさにバス遠足である。
ゆるんだ避難訓練の一方で目立ったのが自衛隊である。能都中ではNTTの通信機器を陸自のヘリが運んできた。
このほか輪島港には舞鶴から海自多用途支援艦「ひうち」がやってきた。ちなみに舞鶴から輪島港までは10時間程度はかかる。
以前の原発防災訓練では、自衛隊の出番は炊き出し訓練。そして特殊車両が展示されていたくらいだったと記憶しているが、もはや自衛隊抜きでは原発防災は成り立たないかのようである。
さて、以上私の見た範囲の訓練内容を紹介したが、その後、金沢に移動し今回の訓練に対しする声明を検討。アンケートも集約する。
各調査班の詳細な報告を踏まえた私たちの側の訓練の総括は今週中にまとめる。
昨日時点での基本的な見解であるが紹介する。
1.本日午前7時30分から志賀原発の過酷事故を想定した原子力防災訓練が実施された。
2.社民党石川県連合、社民党自治体議員団、石川県平和運動センターを中心に 約70人の態勢で調査行動を実施し、合わせて避難地区の住民を対象に原子力防災や志賀原発についてのアンケート調査を行った。
3.調査行動の目的は次の通りである。
①原子力規制委員会による原子力災害対策指針(以下「指針」)策定を受け、石川県原子力防災計画が改訂(2013年3月、8月)されて以降、初めての訓練となる。EAL、OILという新たな判断基準の導入など、改定された計画の実効性や計画自体に内包される問題点を検証する。
②3.11以降としては昨年6月の訓練に続く2回目の訓練である。昨年の訓練は福島の現実を踏まえず、志賀原発再稼働の実績づくりを狙った訓練であった。過酷事故という事故想定に見合った訓練内容であるかを検証する。
③今回はじめて富山県と氷見市が合同対策協議会に参加する。県境を越えた訓練の課題を検証する。
④福島第一原発事故から2年8か月が経過し、汚染水問題や除染、被災者支援などの課題が一層顕在化している中、住民の原子力防災や志賀原発に対する意識をアンケートによって把握する。
4.広報避難調査班、避難・医療調査班、災害対策本部・オフサイトセンター調査班による調査行動の結果は以下のとおりである。
①原子力防災が機能するかどうか最も重要なメルクマールは、防災関係機関や住民が事故の進展に後れを取らない迅速かつ的確な行動を取れるかどうかにある。災害対策本部やオフサイトセンターの参集訓練はおこなわれず、あらかじめ用意された車両で避難がおこなわれている。準備を整えたところに事故が発生する訓練をどれだけ繰り返しても非常時に対応できない。
②過酷事故を想定し、30キロ圏では500μSv/hというOIL1の避難基準を適用しながら、改定された計画に沿ったヨウ素剤の配布・服用訓練はおこなわれなかった。避難住民の服装や行動を見ても、被ばくを低減する意識が薄いといわなければならない。スクリーニングポイントでの模擬汚染者の除染訓練も2~3%という割合であった。避難車両の放射線の測定や除染は看護大学のスクリーニングポイントだけであった。「指針」や改定された防災計画の基本的な方針である被ばくによる確定的影響の回避、確率的影響のリスク軽減が図られるとは思えない訓練であった。
③元気な住民が中心であり、かつ参加数も少ないため、避難行動に入るまでの時間や移動時の渋滞、スクリーニングでの混乱など、短時間の集中的かつ広域的な行動によって生じる課題を検証できない。
④避難や物資の輸送について、海路、空路の活用を拡大したのが今回の訓練の特徴の一つだが、天候によっては機能しないことが昨年の訓練でも明らかになっている。あくまで好天時にプラスαとして活用するしかない手段を、防災体制の強化であるかのように捉えるのは間違いであり、また危険でもある。
⑤5キロ圏にあるオフサイトセンターに氷見市はじめ周辺自治体の担当者らが集まる想定自体が非現実的である。テレビ会議には氷見市、富山県は参加していない。
5.アンケート調査の結果は別紙の通りであり、今回の調査結果の特徴は以下の通りである。
①「参加したいが都合がつかず参加できない」が最も多い。日程や時期を含め、さらに多くの住民が参加しやすいように工夫が必要である。
②防災訓練を続けてほしい人の比率が増加傾向にある。事故は起こるという認識が。
③原発の必要性はいらないとする比率が際立って高い地区がある(福浦、穴水、七尾など)。再稼働を容認する人は全体では10%台を推移している。
6.まとめ
①私たちは本日の訓練に先立ち、10月22日、県に対し改訂された計画を検証できる訓練内容とするように求めた。しかし調査行動から見えてきたのは、検証に値する訓練というには程遠い内容であった。
②今回の訓練では、漁船や海上自衛隊艦船による避難、福祉避難所への搬送、避難所での広報訓練、小型地球局衛生装置の開設、行政機能の移動訓練など新しい訓練内容がいくつも盛り込まれた。その一方で、想定される過酷事故を踏まえ、被ばくや汚染と真正面から向き合う姿勢の乏しい訓練であった。福島の現実を直視し、よりシビアな訓練内容を追及しなければ、防災訓練が新たな安全神話を生み出すことにもなりかねない。
③「指針」の大きな特徴の一つは、原子力防災における国の統制を強化した原子力災害対策特別措置法(1999年制定)をさらに推し進めた点にある。JCO事故や福島第一原発事故では、国は自治体より対応が遅く、また誤った判断を示した。新たに原子力規制委員会が発足し、役割に見合う能力を有するのか、私たちは注視した。ところがブラインド訓練自体が参観者からブラインドとなっており、検証に耐えるものではなかった。国の統制を強化する「指針」や県の計画となったが、このような訓練となったこと残念である。
2013年11月16日
アンケートでは防災訓練の継続を望む人が増えている。原発事故は不可避だという認識が浸透してきている証左ともいえる。しかし、過酷事故を想定しながらこのような訓練を繰り返しては、「過酷事故が起こっても大丈夫」といったとんでもない錯覚を生み出し、新たな安全神話につながりかねない。
それが再稼働を視野に入れた意図的なものであるとしたら、結果的に住民を原発事故の惨禍に巻き込む犯罪的な動きだといえる。今後の原発防災の動きに対して私たちは大きな警戒心をもって向き合っていかなければならない。
谷本知事は能登中学校でおこなわれた閉会式で「原子力防災計画を見直し、今日の訓練に反映した」と語った。
今回の計画見直しで、計画の根幹にかかわるモニタリングや避難の意思決定、避難計画、ヨウ素剤の配布など被ばく医療など多くの点が変更された。
「反映した」というからにはこの根幹部分を訓練に反映し、実証していくものでなければならない。
ところが訓練全般、空にも海にも陸にも自衛隊がバンバン登場する派手さあったが、計画の根幹を確認する内容からは程遠かった。
今回の訓練に対し、社民党県連合や平和運動センターが中心となり、市民Gも加わり総勢70人で調査班を編成し、奥能登から白山麓まで広域にわたった訓練をウォッチングしていった。さらに避難地域の住民約600人を対象に防災計画や原発に対する意識を探るアンケートも実施した。これらをまとめた調査行動の報告書は今週中にまとめる予定だ。
今日は私の視察した内容を報告し、さらに昨日発表した声明を紹介したい。
朝5時起床で6時50分に志賀町の能登原子力センターに到着。
快晴で風もない。
調査班の皆さんにとって回りやすい天候だが、私たち以上に安堵したのは県の原子力防災の担当者だろう。昨年は海が時化て海や空の訓練の一部が中止、変更となった。今年は天候に左右されることなく全訓練内容が実施されることだろう(もちろん好天に合わせて事故が起きるわけではない。好天だから可能となる訓練項目はオマケ、プラスαという認識が必要)。
毎度の光景だが、現地災害対策本部、オフサイトセンターでは7時前から参加者が揃って、事故通報を待ち受ける。
写真中央は第一報を受けている人。
さっそくベストを着用して配置につく。
今回のオフサイトセンターの訓練でもっとも注目したのはこの班の動きだ。
今回の訓練では初めてブラインド訓練(参加者に事前にシナリオを教えない訓練)導入される。
といってもごく一部なのだが、そこがこのモニタリング班だ。
計画の改定で30キロ圏はSPEEDIによる予測による避難ではなくモニタリングで空間線量を確認し避難指示となった。
どの地域を重点的にモニタリングするのか、計画の策定から行動の指示、データの分析も含め、その役割が高まった。
加えてもう一つの変更点は、モニタリングが国(原子力規制委員会)の統制下におかれることになったという点だ。
いざという時、国は実践力を発揮し、迅速、的確な判断ができるのか、信頼するに足る能力があるのか、ブラインド訓練の展開に私たちは注目した(結果は後の「声明」参照)。
今回の訓練の主催は石川県と関係13市町だが、モニタリング班だけでなく、オフサイトセンター各班の動きを仕切ったのが原子力規制委員会。この点は法律および計画に沿っている。もちろんこれがいいのかどうか、まさに検証していくのが県の計画でなければならないはずだが。
さて、この後のオフサイトセンターの動きは、オフサイトセンター調査班に任せて私はH弁護士とともに福浦の避難状況の視察で外に出る。
途中の志賀浦小学校前の交差点。原発から5キロ弱。
交通規制に入った警察官。昨年は原子力緊急宣言が出た後、防護服に着替えていた。今年もおそらくこの後着替えたと思われる。このタイミングは遅くないか。しかも防護服といっても放射線は遮らない。きわめて危険な業務だ。
8:05 志賀浦小学校前。すでにバスが待機。
7:30の全交流電源喪失で、EALに従えば避難準備となるが、まずはバスの手配から始めるべきだ。
さらに段取りがいいのが福浦の避難訓練。
こちらも8:20の時点ですでにバスが待機している。
8:24 すでに漁村センターに待機していた避難訓練参加者がバスに乗り込む。
8:26 これからさらに住民が集まってくるのかと思ったらすぐに出発!(目が点になる)
8:32 私の携帯にエリアメールで避難指示。ちなみにこの地区は防災無線の放送が入らなかった。私もH弁護士も、調査班の二人も聞いていない。
福浦地区は急峻な地形ということもあり、毎回、元気なお年寄りしか訓練に参加していない。常連参加者の慣れた(慣れすぎた)避難行動だ。
9:20 奥能登行政事務所へ。避難経路の途中に今回新たに設けられたスクリーニングポイントが設置されている。
福浦発のバスの先回りをしたが、ちょうど富来中学校の子どもたちが到着したところ。
奥能登行政事務所のどこでスクリーニングをやるのかと思ってたが、なんと道路を挟んだ向かいの駐車場である。ここでも好天の成果が存分に発揮されたが、前日のような荒天でもここで実施したのだろうか。
志賀町や穴水からの避難者330人(予定)。うち110人がスクリーニングを受ける。
なぜ全員受けないのか。
理由はもちろんスケジュールの関係。
受付とスクリーニングは各5班用意されている。
スクリーニングに要する時間は一人あたり約2分30秒。ということは一斑あたり1時間で24人しか対応できない。5班で120人。
つまりわずか330人の参加でも3時間近く要するのである。
1時間の日程で組んでおり、避難所に移動してもらわなければ午前中に訓練は終わらない。雨だったらさらにスクリーニングを受ける人を減らしたのではないか。いや、受けたことにして、バスから降りずにすぐに避難所へ?
仮に18000人が避難してきたら(計画ではありうる)、この態勢では150時間かかることになる。さあどうする?
簡易除染を受ける模擬汚染者は5人。
全身除染を受ける模擬汚染者も5人。
過酷事故が起こり、志賀原発はベントを実施。しかも5~30キロ圏は500μSv/hで避難指示。これだけの汚染者で済むのか。甘いと言わざるをえない。
10:30頃だったか、避難先の能登中学校着。
移動式体表面測定車を体験する子どもら。
「かっこいい!」
との声。・・・まあ仕方ないか。
でもこれはどうなのか。
避難バスを先導した白バイに体験乗車。
もちろん「かっこいい!」
閉会式で大人でも退屈な(講演内容おおいに問題あり!)こんな講演を聴かされる子どもたちなんだから、少しくらいはバス遠足の気分を味あわせたいというのも配慮もあったのかもしれない。目くじらを立てたくないが、まさにバス遠足である。
ゆるんだ避難訓練の一方で目立ったのが自衛隊である。能都中ではNTTの通信機器を陸自のヘリが運んできた。
このほか輪島港には舞鶴から海自多用途支援艦「ひうち」がやってきた。ちなみに舞鶴から輪島港までは10時間程度はかかる。
以前の原発防災訓練では、自衛隊の出番は炊き出し訓練。そして特殊車両が展示されていたくらいだったと記憶しているが、もはや自衛隊抜きでは原発防災は成り立たないかのようである。
さて、以上私の見た範囲の訓練内容を紹介したが、その後、金沢に移動し今回の訓練に対しする声明を検討。アンケートも集約する。
各調査班の詳細な報告を踏まえた私たちの側の訓練の総括は今週中にまとめる。
昨日時点での基本的な見解であるが紹介する。
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声 明
1.本日午前7時30分から志賀原発の過酷事故を想定した原子力防災訓練が実施された。
2.社民党石川県連合、社民党自治体議員団、石川県平和運動センターを中心に 約70人の態勢で調査行動を実施し、合わせて避難地区の住民を対象に原子力防災や志賀原発についてのアンケート調査を行った。
3.調査行動の目的は次の通りである。
①原子力規制委員会による原子力災害対策指針(以下「指針」)策定を受け、石川県原子力防災計画が改訂(2013年3月、8月)されて以降、初めての訓練となる。EAL、OILという新たな判断基準の導入など、改定された計画の実効性や計画自体に内包される問題点を検証する。
②3.11以降としては昨年6月の訓練に続く2回目の訓練である。昨年の訓練は福島の現実を踏まえず、志賀原発再稼働の実績づくりを狙った訓練であった。過酷事故という事故想定に見合った訓練内容であるかを検証する。
③今回はじめて富山県と氷見市が合同対策協議会に参加する。県境を越えた訓練の課題を検証する。
④福島第一原発事故から2年8か月が経過し、汚染水問題や除染、被災者支援などの課題が一層顕在化している中、住民の原子力防災や志賀原発に対する意識をアンケートによって把握する。
4.広報避難調査班、避難・医療調査班、災害対策本部・オフサイトセンター調査班による調査行動の結果は以下のとおりである。
①原子力防災が機能するかどうか最も重要なメルクマールは、防災関係機関や住民が事故の進展に後れを取らない迅速かつ的確な行動を取れるかどうかにある。災害対策本部やオフサイトセンターの参集訓練はおこなわれず、あらかじめ用意された車両で避難がおこなわれている。準備を整えたところに事故が発生する訓練をどれだけ繰り返しても非常時に対応できない。
②過酷事故を想定し、30キロ圏では500μSv/hというOIL1の避難基準を適用しながら、改定された計画に沿ったヨウ素剤の配布・服用訓練はおこなわれなかった。避難住民の服装や行動を見ても、被ばくを低減する意識が薄いといわなければならない。スクリーニングポイントでの模擬汚染者の除染訓練も2~3%という割合であった。避難車両の放射線の測定や除染は看護大学のスクリーニングポイントだけであった。「指針」や改定された防災計画の基本的な方針である被ばくによる確定的影響の回避、確率的影響のリスク軽減が図られるとは思えない訓練であった。
③元気な住民が中心であり、かつ参加数も少ないため、避難行動に入るまでの時間や移動時の渋滞、スクリーニングでの混乱など、短時間の集中的かつ広域的な行動によって生じる課題を検証できない。
④避難や物資の輸送について、海路、空路の活用を拡大したのが今回の訓練の特徴の一つだが、天候によっては機能しないことが昨年の訓練でも明らかになっている。あくまで好天時にプラスαとして活用するしかない手段を、防災体制の強化であるかのように捉えるのは間違いであり、また危険でもある。
⑤5キロ圏にあるオフサイトセンターに氷見市はじめ周辺自治体の担当者らが集まる想定自体が非現実的である。テレビ会議には氷見市、富山県は参加していない。
5.アンケート調査の結果は別紙の通りであり、今回の調査結果の特徴は以下の通りである。
①「参加したいが都合がつかず参加できない」が最も多い。日程や時期を含め、さらに多くの住民が参加しやすいように工夫が必要である。
②防災訓練を続けてほしい人の比率が増加傾向にある。事故は起こるという認識が。
③原発の必要性はいらないとする比率が際立って高い地区がある(福浦、穴水、七尾など)。再稼働を容認する人は全体では10%台を推移している。
6.まとめ
①私たちは本日の訓練に先立ち、10月22日、県に対し改訂された計画を検証できる訓練内容とするように求めた。しかし調査行動から見えてきたのは、検証に値する訓練というには程遠い内容であった。
②今回の訓練では、漁船や海上自衛隊艦船による避難、福祉避難所への搬送、避難所での広報訓練、小型地球局衛生装置の開設、行政機能の移動訓練など新しい訓練内容がいくつも盛り込まれた。その一方で、想定される過酷事故を踏まえ、被ばくや汚染と真正面から向き合う姿勢の乏しい訓練であった。福島の現実を直視し、よりシビアな訓練内容を追及しなければ、防災訓練が新たな安全神話を生み出すことにもなりかねない。
③「指針」の大きな特徴の一つは、原子力防災における国の統制を強化した原子力災害対策特別措置法(1999年制定)をさらに推し進めた点にある。JCO事故や福島第一原発事故では、国は自治体より対応が遅く、また誤った判断を示した。新たに原子力規制委員会が発足し、役割に見合う能力を有するのか、私たちは注視した。ところがブラインド訓練自体が参観者からブラインドとなっており、検証に耐えるものではなかった。国の統制を強化する「指針」や県の計画となったが、このような訓練となったこと残念である。
2013年11月16日
社民党石川県連合
社民党自治体議員団
石川県平和運動センター
社民党自治体議員団
石川県平和運動センター
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アンケートでは防災訓練の継続を望む人が増えている。原発事故は不可避だという認識が浸透してきている証左ともいえる。しかし、過酷事故を想定しながらこのような訓練を繰り返しては、「過酷事故が起こっても大丈夫」といったとんでもない錯覚を生み出し、新たな安全神話につながりかねない。
それが再稼働を視野に入れた意図的なものであるとしたら、結果的に住民を原発事故の惨禍に巻き込む犯罪的な動きだといえる。今後の原発防災の動きに対して私たちは大きな警戒心をもって向き合っていかなければならない。
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