10/1(水) 今日から10月に入った。月捲りのカレンダーも残り三枚、すっかり薄っペラになった。俺の髪の毛か、脳味噌並みの薄さだ。「なになに?アンタの毛髪も脳味噌も、それほど厚くねえってか」、違ぇえね、仰るとおり。
爽やかな秋の陽を浴びて出勤、のつもりでいたが外は雨が落ちていた。我があばら家には、時折家の中にも雨が落ちてくるが、今朝はそれほどのことはない。ひと安心だ。
余談ながら、雨で思い出したが、先日隣の屋根の修理をしていた工務店の人間が、写真を携えて我が家に現われた。「お宅の屋根を見ると、釘が抜けたり傷んでいるのが見当たりました。そろそろ修繕をされたら如何でしょうか?」であったそうな。その折、私は不在で家人が対応した。写真を見ると、確かに指摘されたようなシーンが映っていた。
後日、見積書を持って現れた。『シロアリをポケットに入れて、床下に潜り込んで商売にするのがかつて流行ったようだが、同じ手口じゃあねえだろうな?」と、一応はジャブを噛ましたが、結局屋根修理と、壁塗装を全面的にすることにした。思わぬ銭が出て行く羽目になったと云う次第。糞みたいな話だが、ことの成り行きに任せるのが、万事にアバウトな俺流である。誰を恨むでもなし、己の裏目である・・・・。
で、話を元に戻すと、朝から妙に暗かった。天気が悪かったのだ。取材に出る明日でなくてよかった。明日は、八丈島で釣りをテーマに対談や撮影のために出掛ける。帰りは明後日の最終便を予定していたが、私は急遽、島に残り翌土曜日の朝便で戻ることにした。
実は、未だ十代の最後の春、八丈島に渡った。学生仲間が他に四人いたか。当時は船便で、夜の10時頃に武竹桟橋を出て翌朝に着いた。あの時の、朝方に見た島の光景は今も残っている。
船は翌日に出港して、また戻って帰るのは四日後だったと思う。島に着いた日、港で働いていたオジサンに聞いた民宿に泊まった。ここまではいいのだが、問題はこれからだ。一泊分の宿代を払うと全員のポケッの中はすっからかんだった。然し、ここで帰ったんじゃあ何にもならぬ。未だ島を巡ってない。
いい加減さは今も変わらぬが、いやいや私じゃないよ。一緒に行った仲間のことさ・・・。「島にゃバナナでも自生してるだろうよ。暖か石、野宿でもしながら島を廻ろうぜ」と言い出した。八丈島にバナナが生えていようとは思わなかったが、元来がアバウトな集まりだ。みんなで島を歩いて巡ることになった。
民宿を出た二日目は、辛うじて残った小銭で食パンを買った、一人一枚、食パンを喰った。夜になり公会堂の軒先を借りて野宿だ。腹が減ってしょうがない、仲間の一人が海岸に干して在った干物をガメテきた。これが島の名物「クサヤ」だった。クサヤとの初対面はこうして実現した・・・が、匂いが酷くて全く喰えたものじゃない。「これやあ、猫マタギだぜ」と誰かがボヤイタ・・・。
かくして、三日目のひもじい朝を迎えて我らは、トボトボと初日に泊まった民宿に舞い戻った。後は神頼み、民宿の女将さんに「学生証を担保に置いていきますので」と頼み込んで泊めてもらった。この頼み込み役は、後に警察官になったMIWAであったと思う。後からお金を送金したのは間違いないだろう、だってお巡りさんになったほどの人間だからね。
そこで、すごく良くしてもらった。おいら達はノー天気に早春の海で遊び、たらふく飯を喰らったんだ。そんな思い出がる島、八丈島なのだ。この民宿には、大学四年生の秋、一人で訪れた。女将さんはよく覚えていた、私の食事の好みまで覚えていてくれた。
ここ6年ほどで都合四回ばかり八丈島に行く機会があった。N社のメンバー三人と、研修ビジネスの方二人で「八丈会」なる会を結成している。島に勤務した片、島に娘を嫁に出した方、釣りが好きな方と其々の所縁だ。、私の場合は、島の民宿で一宿一飯ならぬ、一方ならぬ世話になったことからである。
何度も島を訪れながら、あの民宿に立ち寄る機会を得なかった。民宿がつづいていることは、島の人から聴いていたが、皆で一緒に行き、行動を共にするので機会を作れなかった。然し、今回は私だけ一日延ばして、その民宿に泊まることにしたのだ。島に居残る決断をして、飛行機の便を確認した後、民宿に電話を入れた。
その民宿は「みどり荘」と云う。名前は変わっていないが、今は二代目の息子さんが営んでいた。小母さんは、五年前に亡くなったとのことであった。古い話を現当主に伝え、一人だが泊まれるかと予約すると「それじゃあ、学生さんだったね」と云われた。積もる話はないが、積もる思いはある・・・。一泊余分に、島の空気を吸ってくる、あの時と同じであろうはずはなかろうが・・・。
余談が長くなってしまったが、今朝の「トンカツ弁当」だ。昨夜、学芸大学に下りた時、駅脇にあるトンカツのサボテンが閉店前だった。ショーケース並んだ、カツがなんとも美味そうに思えた。20m程過ぎてから引き返した。出来合のトンカツを買うためじゃない、駅前の東急ストアでトンカツ用の肉を買うのだ。
単純なOYAJIは、こうして今朝の弁当が定まった。肉を買って、サボテンの前をとおりながら、こっちの方が安くて美味そうだな。と思った次第、でも作る楽しみはない。写真は、完成後の弁当。
トンカツの他には「南瓜煮」、茄子・茗荷・インゲンの素揚げをドレッシングで合えた口直し。トンカツばかりじゃ芸がないと、一枚だけオリーブオイルでソテーする。キャベツ代わりのレタスとタマネギを刻む。ジャガイモ・薩摩芋の素揚げ、以上である。なんと卵の在庫がゼロになっていた。トンカツに卵が無くてどうなるんだ・・・であった。