2013年7月11日-2
想念形体と抽象絵画
カンディンスキーとモンドリアンは、抽象絵画の創始者または先駆者である。両者は、神智学の影響を受けていると言われる。
「1908年、カンディンスキーはシュタイナーと出会っている」(遠藤真理「カンディンスキ ーとシュタイナー」http://www.eonet.ne.jp/~kimichr/contributions/agatha2.html[2013年7月11日閲覧)。
「神智学が当時の芸術家にインスピレーションを与えた方法は、オカルト的な思考内容だった。モンドリアン、スクリャービン、ストラヴィンスキー、シェーンベルク、モルゲンシュタイン等々がその影響をうけ、カンディンスキーも例外ではなかった。自筆の書きこみの入ったいくつかの本?ブラヴァツキー『神智学への鍵』、シュレー『偉大なる秘儀参入者たち』、シュタイナー『神智学』、ベサントとリードビーター『思念=形態』?が彼が熱心にこれらの世界への糸口を探ろうとしていたことを物語っている。」(遠藤真理「カンディンスキーと シュタイナー」http://www.eonet.ne.jp/~kimichr/contributions/agatha2.html[2013年7月11日閲覧)。
Besant & Leadbeater の『Thought-Forms』は、(故)田中恵美子氏による翻訳(1983年5月第一刷発行)があるが、1999年発行の『Thought-Forms』にある、John Algeo 氏による「FOREWARD TO THE 1999 EDITION」(pp. xi - xxvi)は、当然ながら訳出されていない。そのなかの一節に、「THOUGHT FORMS AND MODERN ART」(xxiii - xxv)というのがある。次に訳出する。
「 想念形体〔形態 forms〕と近代〔現代〕芸術
心的〔メンタル〕物質における形体、つまり「透視 clear sight」能力のある人々によって知覚することができる形体、としての想念という見方 view は、20世紀初期の芸術家たちに大きな影響を与えた。ベサントとリードビーターの『想念形体』は、1901年の初版であるが、その影響の主要な源であった。
ピエト モンドリアンは、オランダの象徴主義者で、後に抽象主義者となったが、神智学協会の一員でもあった。彼は、1908年に「献身 Devotion」と呼ばれる絵画 picture を描いた。それは、若い少女を描写しており、頭はわずかに上方に傾き、額の前の幽霊のような〔 spectral〕花を見つめている。それと、モンドリアンの他のお化けのような花々の一連の絵画は、H.P. ブラヴァツキー による観察を反映している。すなわち、
モンドリアンの塗絵 painting における少女は、一つの花の想念形体を見ている。それは、花自体が色褪せ〔しおれ fade〕消滅した後も長く存在する。
芸術とベサントとリードビーターの『想念形体』との間により直接的な繋がりのある、他の例は、ワシリー カンディンスキーの作品である。Sixten Ringbomは、彼の専門的研究論文である『鳴り響く宇宙 The Sounding Cosmos』で、カンディンスキーの抽象芸術の基礎となっている霊的理論を研究した。すなわち、
ベサントとリードビーターは、想念形体を色、形、そして輪郭の明確さ〔明瞭さ distinctness〕によって分析している。これら三つの特質すべてが、想念形体の意味に対して意義を持つ。想念の情緒的〔感情的 emotional〕特質は、その色彩を決める。そして、集中の程度は、想念の輪郭の明確さを決める。Sixten Ringbomが説得的に示しているように、カンディンスキーは第一次世界大戦前の10 年間から行なった塗絵において、これらの特徴を取り上げ〔took up those characteristics〕使用した。
カンディンスキーの第一次世界大戦前の塗絵において、ベサントとリードビーターの本における特定の想念形体の挿絵と同一の形を認めることはたやすい。たとえば、いくつかの漠然とした 〔vague〕曇りのある〔ぼんやりとした cloudy〕形は、図版8と9〔訳本では48頁の次にある図版8と9〕の模倣である〔echo〕。つかむような、あるいはかぎ状の形は、図版13、20、28、そして29の形を繰り返している。カンディンスキーの様々な理論的着想は「神智学から直接に来た」(〔『鳴り響く宇宙』:〕121頁)ことを明瞭にすることに加えて、Ringbomは、カンディンスキーが彼の塗絵に『想念形体』からの挿絵を取り入れたことを示している。Ringbomは、カンディンスキーの塗絵と、ベサントとリードビーターの本からの挿絵を並べている(Ringbomの図版121-133)。それによって、カンディンスキーの作品〔仕事〕へのベサントとリードビーターの影響を視覚的に〔ありありと、図表を用いて graphically〕示している。」(Algeo 1999: xxiii-xxv;20130711試訳)。
なるほど、初期のカンディンスキー作品が暗くて汚いわけだ。後のいわゆる幾何的な整理された作品の色はまあまあ奇麗である。
[A]
Algeo, John. 1999. Thought forms and modern art. In, Besant & Leadbeater "Thought-Forms": xi-xxvi. Theosophical Publishing House.
[B]
Besant, Annie & Leadbeater, C.W. 1999. Thought-Forms. xxvi + 77 pp. Theosophical Publishing House (Quest Books). [B20000901、$10.40+39.00/20]
[へ]
ベサント,アニー & リードビーター,C.W.1925.(田中恵美子 訳,1983.5)思いは生きている?想念形体?].98頁 + 図版30頁.竜王文庫.[2600円+税][B19840514、2500円][19850314読了]
想念形体と抽象絵画
カンディンスキーとモンドリアンは、抽象絵画の創始者または先駆者である。両者は、神智学の影響を受けていると言われる。
「1908年、カンディンスキーはシュタイナーと出会っている」(遠藤真理「カンディンスキ ーとシュタイナー」http://www.eonet.ne.jp/~kimichr/contributions/agatha2.html[2013年7月11日閲覧)。
「神智学が当時の芸術家にインスピレーションを与えた方法は、オカルト的な思考内容だった。モンドリアン、スクリャービン、ストラヴィンスキー、シェーンベルク、モルゲンシュタイン等々がその影響をうけ、カンディンスキーも例外ではなかった。自筆の書きこみの入ったいくつかの本?ブラヴァツキー『神智学への鍵』、シュレー『偉大なる秘儀参入者たち』、シュタイナー『神智学』、ベサントとリードビーター『思念=形態』?が彼が熱心にこれらの世界への糸口を探ろうとしていたことを物語っている。」(遠藤真理「カンディンスキーと シュタイナー」http://www.eonet.ne.jp/~kimichr/contributions/agatha2.html[2013年7月11日閲覧)。
Besant & Leadbeater の『Thought-Forms』は、(故)田中恵美子氏による翻訳(1983年5月第一刷発行)があるが、1999年発行の『Thought-Forms』にある、John Algeo 氏による「FOREWARD TO THE 1999 EDITION」(pp. xi - xxvi)は、当然ながら訳出されていない。そのなかの一節に、「THOUGHT FORMS AND MODERN ART」(xxiii - xxv)というのがある。次に訳出する。
「 想念形体〔形態 forms〕と近代〔現代〕芸術
心的〔メンタル〕物質における形体、つまり「透視 clear sight」能力のある人々によって知覚することができる形体、としての想念という見方 view は、20世紀初期の芸術家たちに大きな影響を与えた。ベサントとリードビーターの『想念形体』は、1901年の初版であるが、その影響の主要な源であった。
ピエト モンドリアンは、オランダの象徴主義者で、後に抽象主義者となったが、神智学協会の一員でもあった。彼は、1908年に「献身 Devotion」と呼ばれる絵画 picture を描いた。それは、若い少女を描写しており、頭はわずかに上方に傾き、額の前の幽霊のような〔 spectral〕花を見つめている。それと、モンドリアンの他のお化けのような花々の一連の絵画は、H.P. ブラヴァツキー による観察を反映している。すなわち、
一つの花が咲き、それからしおれ、死ぬ。それは、後ろに芳香を残す。もろい花びらは小さなちりにすぎなくなっても長く後にも、香りは空中になお留まる。わたしたちの物質的感覚はそれを認識しないかもしれないが、しかしそれはやはり存在するのである。[『覆いを取られた〔脱いだ〕イシス神 Isis Unveiled』 1: 114]
モンドリアンの塗絵 painting における少女は、一つの花の想念形体を見ている。それは、花自体が色褪せ〔しおれ fade〕消滅した後も長く存在する。
芸術とベサントとリードビーターの『想念形体』との間により直接的な繋がりのある、他の例は、ワシリー カンディンスキーの作品である。Sixten Ringbomは、彼の専門的研究論文である『鳴り響く宇宙 The Sounding Cosmos』で、カンディンスキーの抽象芸術の基礎となっている霊的理論を研究した。すなわち、
カンディンスキーの神智学的源泉の最も重要なものの一つは、ベサントとリードビーターの著書である『想念形体』であり、その本のドイツ語訳は1908年に出た。この翻訳、『思考形体 Gedankenformen 』は、〔フランスの〕ヌイイ-シュル-セーヌにあるカンディンスキー図書館にあり、20世紀の初期でも、カンディンスキーはそれに言及していた。[〔Ringbom『鳴り響く宇宙』:〕62頁]
ベサントとリードビーターは、想念形体を色、形、そして輪郭の明確さ〔明瞭さ distinctness〕によって分析している。これら三つの特質すべてが、想念形体の意味に対して意義を持つ。想念の情緒的〔感情的 emotional〕特質は、その色彩を決める。そして、集中の程度は、想念の輪郭の明確さを決める。Sixten Ringbomが説得的に示しているように、カンディンスキーは第一次世界大戦前の10 年間から行なった塗絵において、これらの特徴を取り上げ〔took up those characteristics〕使用した。
カンディンスキーの第一次世界大戦前の塗絵において、ベサントとリードビーターの本における特定の想念形体の挿絵と同一の形を認めることはたやすい。たとえば、いくつかの漠然とした 〔vague〕曇りのある〔ぼんやりとした cloudy〕形は、図版8と9〔訳本では48頁の次にある図版8と9〕の模倣である〔echo〕。つかむような、あるいはかぎ状の形は、図版13、20、28、そして29の形を繰り返している。カンディンスキーの様々な理論的着想は「神智学から直接に来た」(〔『鳴り響く宇宙』:〕121頁)ことを明瞭にすることに加えて、Ringbomは、カンディンスキーが彼の塗絵に『想念形体』からの挿絵を取り入れたことを示している。Ringbomは、カンディンスキーの塗絵と、ベサントとリードビーターの本からの挿絵を並べている(Ringbomの図版121-133)。それによって、カンディンスキーの作品〔仕事〕へのベサントとリードビーターの影響を視覚的に〔ありありと、図表を用いて graphically〕示している。」(Algeo 1999: xxiii-xxv;20130711試訳)。
なるほど、初期のカンディンスキー作品が暗くて汚いわけだ。後のいわゆる幾何的な整理された作品の色はまあまあ奇麗である。
[A]
Algeo, John. 1999. Thought forms and modern art. In, Besant & Leadbeater "Thought-Forms": xi-xxvi. Theosophical Publishing House.
[B]
Besant, Annie & Leadbeater, C.W. 1999. Thought-Forms. xxvi + 77 pp. Theosophical Publishing House (Quest Books). [B20000901、$10.40+39.00/20]
[へ]
ベサント,アニー & リードビーター,C.W.1925.(田中恵美子 訳,1983.5)思いは生きている?想念形体?].98頁 + 図版30頁.竜王文庫.[2600円+税][B19840514、2500円][19850314読了]