今、出発の刻(たびだちのとき)

車中泊によるきままな旅
<名所旧跡を訪ねる>

長林山 往生院 称念寺(福井県坂井市丸岡町長崎19-17)

2024年08月21日 | 神社・仏閣
訪問日 令和6年5月30日

長林山 往生院 称念寺
平成30年(2018年)、丸岡城を訪れた時に、偶然、この寺の存在を知り訪れたことがある
明智光秀縁の寺(「黒髪伝説」)ということで興味を持った

山門
山門左の寺号標には「時宗 長林山 稱念寺」



右には「史跡 新田義貞公墓所」と彫られている



案内板の文字が小さい



参道の正面に(案内図によると)「御像堂」



水屋



参道横の石仏



贈位碑
昭和23年(1948年)に発生した福井地震の際、上部が欠損したとのこと
「(近衛)中将新田義貞公贈位碑」と読める



新田義貞公墓所(福井県史跡)
鎌倉幕府も北条高時の頃になると、世の中が乱れ不満を持つ武士たちが現れた
その代表的な武士たちが足利尊氏や新田義貞、楠木正成だ
そして鎌倉幕府を滅ぼした武士が新田義貞になる



中雀門
その後、足利尊氏と新田義貞が争い、南朝と北朝に別れ日本中を巻き込んだ戦乱の世になった
新田義貞は、南朝方として京都や兵庫県で戦ったが、暦応元年・延元3年(1338年)に灯明寺畷の戦いで戦死した
新田義貞は称念寺の住職と、古くより交友を深めていたこともあり
その遺骸は時宗の僧侶8人が輿に乗せ往生院称念寺に送り、手厚く葬られた



門の隙間からレンズを当て撮影(周辺が暗く丸くなっている)



墓所の横にある扉が開いていて中に入ることができた



「太平記」で確認すると
義貞の首は朝廷・幕府の仇敵第一として、大路引き回しの上で獄門に懸けられたとある
ということは、運ばれた遺骸は首無しということになる
敵方であった足利義政もその武勇をたたえ、長禄2年(1458年)安堵状と寺領を寄進し、将軍家祈祷所として栄えた




御像堂
縁起によれば、養老5年(721年)に元正天皇の勅を得て泰澄大師によって創建
正応3年(1290年)他阿真教によって「時宗」に改められた



鎌倉時代に時宗の二代目に当たる真教上人が称念寺を念仏の道場にした
長崎道場は北陸では一番の念仏道場になり、その末寺も、県下各地に建てられた



扁額には「忠誠殿」の文字が
戦乱の中で新田一族は、最後まで南朝の後醍醐天皇を裏切ることなく戦い続けた武士だった



堂内の様子



本尊:新田義貞座像
*多くの寺院を巡ってきたが、本尊が仏像ではないというのは初めて






宝篋印塔
墓所とは別に、境内には義貞を慰霊する宝篋印塔がある



明智光秀と称念寺
弘治2年(1556年)に齊藤義龍の大軍に敗れ、妻の熈子(ひろこ)や家族と伴に、越前大野を経て越前の称念寺に逃れる
永禄5(1562年)年貧しいながらも夫婦で、門前に寺子屋を開き、仲良く生活していた



黒髪伝説
称念寺住職の推薦で、越前の朝倉義景に仕官の口添えを得る事が出来た が貧しい為に朝倉の重臣をもてなす資金がなかった
妻の「煕子」は自慢の黒髪を光秀に黙って売り、 その資金で連歌の会を開いた
後にその事を知った光秀は「きっと今に天下を取って 妻の献身に応え 煕子を幸せにする」と誓った
称念寺で、永禄6年(1563年)に生まれたお玉(後の細川ガラシャ)も、両親に劣らぬ夫婦愛に生きた方だった


*上記写真は駐車場横の案内板を撮影したもの

松尾芭蕉の師弟愛
この「夫婦愛の物語」は、称念寺門前の伝承になり、江戸時代の松尾芭蕉が、「奥の細道」の旅の途中に、取材した
後に芭蕉は、才能がありながら、出世できないことに悩んでいた門弟の山田又玄に、『月さびよ明智が妻の咄せむ』の句を贈って励ました



芭蕉句碑
『月さびよ明智が妻の咄せむ』



「又玄よ、今は出世の芽がでてないが、あなたにはそれを支える素晴らしい妻がいるじゃないか
 今夜はゆっくり明智の妻の黒髪物語を話してあげよう」



忠霊塔



この寺が大切にしているものが「忠」の精神なのか、振り返ってみると建物に「忠誠殿・忠霊塔」が記されている






称念寺を初めて訪れた後に、滋賀県にある「西教寺」を訪ねたときの事である
俳優の長谷川 博己氏が、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主演をすることになったと
明智光秀の墓前で報告をしていた(カメラを向けることのできないくらいの厳戒態勢で)



下記は初めて訪れた時の感想
「大好きな古い建築物も仏像も見当たらない寺であったが、新田義貞の忠誠心、明智光秀の夫婦愛、それに感激して詠んだ芭蕉の句
現代に生きる日本人の心の原点に触れたような心地よさを感じた寺であった」
今回も同じような思いである



撮影 令和6年5月30日

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