ある料理人が、若い新弟子に、(基本がまだ出来ていなにのに、オリジナルに作っておかしな味になった肉じゃがを見て)基本の大切なことを説き、更には、「守破離」に付いて話していた。
「守破離」(しゅ・は・り)とは?
料理人の過程として、初めは、教科書通りに基本に中心にそのまま作る。それを充分に何年間も経験した上で、それに物足りなさを感じて、少し変化を加える。次第に、加えることが多くなって行き詰まり、そして、最後に、基本と全く違った感じで自分なりに作って、完成となる(それでも、本当は、未完成なのだが)。初めから、オリジナルなことを作ろうとすると、ろくな事はないって感じで話していた。
医療も、同じだと思う。医師になって、教科書を見、先輩の仕方をマネして数年が終わる。しかし、疑問が次第に貯まってきて、少しずつ、自分なりに加えたり、しなかったりして行く。そして、それにも矛盾を感じで、全くそれと違った考え方で医療をすることになる。
自分が正にそうだ。医師に成り立ての頃は、咳止め、鼻水止め、下痢止め、けいれん止め、二次感染予防の抗生物質、熱冷ましなど、(今考えると恥ずかくてその時の患者さんに申し訳ない気持ちになるが)積極的に処方していた。
沢山経験して、考え方が全く違っているのに気が付いた。
人間は、病気になっても、治ろう治ろうとしている。それなのに、今の医療は、それと全く反対のことをする傾向にある。反対なことをするので、病状が長引き、最悪な時は、それで悪化することもある。
土台、咳止めなんて、経験的には、たいして効かない。咳止めをやっても効かないのは、体がそれでも咳をして身を守ろうとしているからだ。カラ咳では、確かにいい治療法がない。しかし、小さな子どもの場合、直ぐに湿性の咳になることが多いし、初めから、咳止めを与えずに、処方するなら、痰切れや気管支拡張剤を与えるべきだと思っている(親御さんの話の中には、医師の薬を飲み始めてから、咳がひどくなり、眠れなくなって、それを飲まなくなったら、よく眠れる様になったとの訴えのケースもあるのだ)。咳止めとしては、リン酸コデイン以外は、著効しない。リン酸コデインは、喘息では禁忌である。私がこれを使用するのは、百日咳の時のみである(それも、常に使用している訳でもない)。
鼻水止めで、抗ヒスタミン剤を与える例は多い。確かに、ペリアクチンなどで、鼻水は止まるかも知れないが、痰が切れなくなって引っかかって、かえって苦しんでいる乳幼児が多い。それに、ペリアクチンなんて、喘息発作の時は、禁忌と添付文書にしっかりと書かれているではないか。しかし、多くの乳幼児が、これを処方されているのである。突然死の原因として、この薬を疑っている専門家もいるくらいだ。
下痢にしても、積極的に下痢を止めれば、ウイルスや細菌が居座って、治りが遅くなる。事実、O157で危なくなった例は、下痢止めを与えて、ベロ毒素が外に排泄されるのが遅れたからだ。で、その時の反省から、細菌性腸炎の時には、下痢止めは禁忌となった。(が、ある病院では、時間外に来た急性胃腸炎の処方として、スタンプに、しっかりと下痢止めが加わっていたが・・・)
けいれん止めも、今は、座薬が出来ている。以前は、数回起きて、親が不安がると、デパケンを毎日処方することが多かった。何度もけいれんが起きると、親御さんも医療側も、それが起きない様に、毎日あげたい気持ちになる。しかし、それを毎日上げたからと言って、脳が改善されるかと言うと、その根拠はないと思う。ただ、けいれんを抑えることだけと言う考え方が支配的だと思う。だとしたら、副作用のことを考えて、起きそうな時だけに使用した方がいいと思う(但し、あくまでも熱性けいれんであると考えた場合だが)。
二次感染の抗生物質にしても、非常に問題が大きいと思っている。2歳までの子で、熱が高くて、喉が赤い場合でも、細菌性のこと、実に少ない。安易に初期に抗生物質を与えるべきでないと思うし、それも、セフェム系の強い薬は、出来るだけ控えるべきだと思う。それよりも、状態がひどくなって細菌性を疑った場合(細菌性の場合は、ウイルス性よりも症状が強い)、医療機関にかかれて、救急に検査が出来るシステムを作っておくことの方が大切だと思う。(ウイルスでも症状の強い)インフルエンザになった場合、私の治し方では、抗生物質を使うことはまずない。葛根湯(2日間まで)→柴胡桂枝湯で、多くの場合、中耳炎の合併症も、殆ど起きていない。
突発性発疹症の場合、3日間熱が続くことが多いが、熱冷まし(時には、それに抗生物質まで処方しているケースもたまに見受けるが)を投与して、熱が4日(時には5日)になった例をしばしば経験している。経験的に、白虎加人参湯を処方すると、1日~2日で下がることもしばしば経験している。子どもは、高い熱を出してウイルスと闘っているのだ。それを無理矢理座薬で下げることの不自然さを多くの人がもっと知るべきと思う。
西洋医学では、熱、鼻水、咳、下痢によく効くいい薬は、ない。
「守破離」(しゅ・は・り)とは?
料理人の過程として、初めは、教科書通りに基本に中心にそのまま作る。それを充分に何年間も経験した上で、それに物足りなさを感じて、少し変化を加える。次第に、加えることが多くなって行き詰まり、そして、最後に、基本と全く違った感じで自分なりに作って、完成となる(それでも、本当は、未完成なのだが)。初めから、オリジナルなことを作ろうとすると、ろくな事はないって感じで話していた。
医療も、同じだと思う。医師になって、教科書を見、先輩の仕方をマネして数年が終わる。しかし、疑問が次第に貯まってきて、少しずつ、自分なりに加えたり、しなかったりして行く。そして、それにも矛盾を感じで、全くそれと違った考え方で医療をすることになる。
自分が正にそうだ。医師に成り立ての頃は、咳止め、鼻水止め、下痢止め、けいれん止め、二次感染予防の抗生物質、熱冷ましなど、(今考えると恥ずかくてその時の患者さんに申し訳ない気持ちになるが)積極的に処方していた。
沢山経験して、考え方が全く違っているのに気が付いた。
人間は、病気になっても、治ろう治ろうとしている。それなのに、今の医療は、それと全く反対のことをする傾向にある。反対なことをするので、病状が長引き、最悪な時は、それで悪化することもある。
土台、咳止めなんて、経験的には、たいして効かない。咳止めをやっても効かないのは、体がそれでも咳をして身を守ろうとしているからだ。カラ咳では、確かにいい治療法がない。しかし、小さな子どもの場合、直ぐに湿性の咳になることが多いし、初めから、咳止めを与えずに、処方するなら、痰切れや気管支拡張剤を与えるべきだと思っている(親御さんの話の中には、医師の薬を飲み始めてから、咳がひどくなり、眠れなくなって、それを飲まなくなったら、よく眠れる様になったとの訴えのケースもあるのだ)。咳止めとしては、リン酸コデイン以外は、著効しない。リン酸コデインは、喘息では禁忌である。私がこれを使用するのは、百日咳の時のみである(それも、常に使用している訳でもない)。
鼻水止めで、抗ヒスタミン剤を与える例は多い。確かに、ペリアクチンなどで、鼻水は止まるかも知れないが、痰が切れなくなって引っかかって、かえって苦しんでいる乳幼児が多い。それに、ペリアクチンなんて、喘息発作の時は、禁忌と添付文書にしっかりと書かれているではないか。しかし、多くの乳幼児が、これを処方されているのである。突然死の原因として、この薬を疑っている専門家もいるくらいだ。
下痢にしても、積極的に下痢を止めれば、ウイルスや細菌が居座って、治りが遅くなる。事実、O157で危なくなった例は、下痢止めを与えて、ベロ毒素が外に排泄されるのが遅れたからだ。で、その時の反省から、細菌性腸炎の時には、下痢止めは禁忌となった。(が、ある病院では、時間外に来た急性胃腸炎の処方として、スタンプに、しっかりと下痢止めが加わっていたが・・・)
けいれん止めも、今は、座薬が出来ている。以前は、数回起きて、親が不安がると、デパケンを毎日処方することが多かった。何度もけいれんが起きると、親御さんも医療側も、それが起きない様に、毎日あげたい気持ちになる。しかし、それを毎日上げたからと言って、脳が改善されるかと言うと、その根拠はないと思う。ただ、けいれんを抑えることだけと言う考え方が支配的だと思う。だとしたら、副作用のことを考えて、起きそうな時だけに使用した方がいいと思う(但し、あくまでも熱性けいれんであると考えた場合だが)。
二次感染の抗生物質にしても、非常に問題が大きいと思っている。2歳までの子で、熱が高くて、喉が赤い場合でも、細菌性のこと、実に少ない。安易に初期に抗生物質を与えるべきでないと思うし、それも、セフェム系の強い薬は、出来るだけ控えるべきだと思う。それよりも、状態がひどくなって細菌性を疑った場合(細菌性の場合は、ウイルス性よりも症状が強い)、医療機関にかかれて、救急に検査が出来るシステムを作っておくことの方が大切だと思う。(ウイルスでも症状の強い)インフルエンザになった場合、私の治し方では、抗生物質を使うことはまずない。葛根湯(2日間まで)→柴胡桂枝湯で、多くの場合、中耳炎の合併症も、殆ど起きていない。
突発性発疹症の場合、3日間熱が続くことが多いが、熱冷まし(時には、それに抗生物質まで処方しているケースもたまに見受けるが)を投与して、熱が4日(時には5日)になった例をしばしば経験している。経験的に、白虎加人参湯を処方すると、1日~2日で下がることもしばしば経験している。子どもは、高い熱を出してウイルスと闘っているのだ。それを無理矢理座薬で下げることの不自然さを多くの人がもっと知るべきと思う。
西洋医学では、熱、鼻水、咳、下痢によく効くいい薬は、ない。