何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

共に心震わせる 2

2015-03-12 17:00:24 | ひとりごと
昨日の題「共に心震わせる」は、「共震」(相場英雄)のラストから得たものだ。

東日本大震災は未曾有の大災害だった。
「頑張ってください」の励ましに、「これ以上頑張ったら、東北の人は皆死んでしまう」と泣き崩れる被災女性の姿が「共震」にはある。

3月11日2時46分、あの一瞬であまりにも多くのものが失われたが、被災地の喪失はそれだけではなかった。

「共震」でも「紙つなげ」(佐々涼子)でも書かれている被災地の哀しい現実。

空き巣ははびこり、商店は強奪に遭い、(津波で浮腫んだ指から指輪を盗るため)指が切り落とされた遺体が取り残され。
義捐金を騙し取る目的で、罹災証明書を受け取るために避難所に入り込む非被災者の存在。
膨大な復興予算や利権に群がる善意の仮面をかぶったNPO。

被災地で横行する悪行が、被災者から奪ったものは、物質的なものに止まらなかったと思う。

心無い行為をする一部の被災者と、震災を食い物にする非被災者と、「甘えるな、被害者ぶるな」と叱咤する識者と、何ができるか分からないで呆然とする圧倒的多数の国民に、被災者の方が望んだものは。
「白菊、線香、できればロウソクも・・・」

おむつに粉ミルク、生きるための必需品不足で困窮を極める一方で、死者を悼む心を見失わない被災地の方々と、共に心を震わせることすら出来ない「その他大勢」。
ここで、これを書いている自分もそうだが、大事件や大災害が起こっても、どんなに心を痛めても、バーチャルな空間を漂っている時間は、
心を持たない傍観者であるのかもしれない。

検視官シリーズで、主人公Drスカーペッタの相棒ピート・マーノの 「相手が女王陛下であろうと便座であろうと、人間って奴は、自分の尺度
関係性でしか見ることができない」といった趣旨のセリフに、妙に納得した記憶があるが、あの大震災でさえ自説を押し付けるのに 利用する人間がいるのには驚いた。

震災から2年後の秋、皇太子ご夫妻は被災3県を毎月お見舞いになり、宮城県では、復興事業で地場産の大豆を使った味噌作りをされる現場を視察された。
味噌作りに携わる人は皆さん被災者だと紹介されたが、前向きに明るく活動されている姿には、心打たれるものがあった。
それが、まさかネットの攻撃の対象となり、所謂’炎上’となるとは。
「味噌という食品づくりの現場で白衣マスクを着用していなかった」という尤もらしい批判に始まり、
「皇太子ご夫妻なんかに会って喜ぶバカな従業員が作る味噌など買わぬ」と、被災者を罵倒し、
最終的には、「非常識な皇太子ご夫妻は廃太子にし、皇位継承を変えよ」という例のネット上の啓蒙活動が繰り広げられた。

昨今の衛生事情では白衣着用は必須かもしれないが、味噌や日本酒など酵母を扱う場に入ったことがある経験からいえば、伝統的な製法でいく現場ほど四角四面な対応をしている訳ではないのを知っている。
まして、皇太子ご夫妻の視察時は、「麹の香りが立つのに復興を重ねて御覧になって欲しい」という復興事業関係者の願いによるデモンストレーションだ(それが商品として流通するわけではない)と紹介されていた。
にもかかわらず、炎上するほど悪質なコメントを送りつける非常識。
自説を押し付ける為なら、被災地の被災者の気持ちすら踏みにじる、ネット上の「その他大勢」。

あれほどの大災害を見ても、被災地と被災者を真ん中にして、共に心を震わせることすら出来ない、「その他大勢」。

こんなことを書いている以上、もちろん自分も情けない「その他大勢」の一部でしかないと反省している。

復興利権にたかるシロアリや、義捐金を騙し取る詐欺は、分かりやすい「悪」
しかし、「その他大勢」の心の闇には、自分の尺度でしかものを見れないという「悪」が充満している。

自分の中の情けない「悪」としっかり向き合いながら、
「宮古市、周辺町村からの物資の要望→乳児用オムツ、粉ミルク、レトルト食品、肌着・・・白菊、線香、できればロウソクも・・・」から4年が過ぎてなお、厳しい現実に直面している被災地と被災者の方々と「共に心を震わせる」 という「当たり前」 について考えていこうと思っている。

共に心震わせる 

2015-03-12 00:33:24 | ひとりごと
3月11日に、あの日のことを振り返るような過去形の文を書いてよいのか迷っているうちに、日付が変わってしまった。

あの時、日本全体も、国民一人ひとり私も、生きなおさねばならないと決意したはずだが、
あれから、4年しか経っていないというのに、震災の風化が問題となる情けなさ。
あれほどの震災を目の当たりにしながら、生き方考え方の転換を図れない自分の不甲斐なさ。

四年目の現実

警察庁によると、東日本大震災による死者は3月10日時点で、全国で1万5891人。
被災の大きかった宮城県が9539人、岩手県が4673人、福島県が1612人。
行方不明者は2584人。
復興庁によると、震災後に体調を崩して死亡したり、避難生活を苦にして自殺したりした「震災関連死」は増え続け、昨年9月末時点で3194人。
全国の避難者数は2月時点で約22万9千人。津波被害に加え、東京電力福島第1原子力発電所事故が起きた福島県が約11万9千人。
震災から4年を経てもプレハブの仮設住宅で暮らす避難者は岩手、宮城、福島の3県で8万人以上に上る。


これほどの厳しい現実を前に、11日は書くべき言葉が見つからず、
中越地震や東日本大震災の被災者の方々を勇気づけたといわれる のJupiter(作詞 吉元由美、作曲G・Holst、歌 平原綾香)の一節を思い浮かべながら、被災地と被災された方々と「共に心を震わせる」という意味を考え続けていた。

愛を学ぶために 孤独があるなら
意味のないことなど 起こりはしない



つづく