同族企業の家具屋が、会長の父vs社長の娘で揉めていたのだが、そこに母と息子まで加わったので、お家騒動だと世間を賑わせていた。
27日の株主総会を経て一応の決着をみたようだが、それを伝える見出しが、これだ。
<勝利のかぐや姫「一般株主の80%近い賛成に重い責任感じてます…」>
これは産経新聞の見出しなのだが、美人さんとはいえ経営者として奮闘している女性を「かぐや姫」と揶揄するとは、さすがに産経だと思ってしまった。
・
そう思われる産経も何だが、家具屋の娘だから「かぐや姫」なのだと気付くのに時間がかかる自分のマヌケぶり・・・・もはや「アレの衝撃」(3/27)による思考停止の所為ばかりではないかもしれない。その程度の認識なので、現在進行形のこの騒動については書けないが、同族企業の経営ということから思い出した本がある。
「異端の大義」(楡周平)
上下巻の長編は、主人公高見の勤務する東洋電器が台湾・韓国の攻勢に押されて半導体事業から撤退する場面から始まる。
シリコンバレーから帰国してみれば、何年にもわたる無配に累積している赤字。
それを経営陣は、早期退職や工場閉鎖など負債部門の切り捨てで乗り切ろうとするのだが、同族企業であるゆえに経営方針の決定も人事権を握っているのも創業者一族。主人公は経営方針の歪みと恣意的人事に異議をえたために、創業者一族で人事権を握っている(元)友人に徹底的に疎まれる。
しかし、左遷や降格人事に遭おうが、誠実さと正義感を失わない主人公に最後、一発逆転が起こる。
何年か前に読んだ印象は、こんなものだった。
何時からか「雇用調整」という言葉が簡単に使われ、特に家電業界は決算のたびに、まるで人を備品か何かのように「調整」するのが新聞の見出しになっているので、作中の工場閉鎖に伴うリストラで自殺者が出る場面などは切実に迫ってくるものがあったが、世界の半導体シェアの半分以上を占めていた日本が、撤退するまでに追いやられる理由を、同族企業の古い体質にだけ求めているかのような内容には、安直さを感じていた。
しかし、「勇者よ進め」(3/5)で、「トヨタが社長自らアメリカ議会の公聴会に呼ばれた原因に、排他的姿勢があった」と書いたばかりのところで、上場企業の家具屋が公開お家騒動を繰り広げた様を見ていると、日本社会に根づいた体質を考え直した方が良いと思いのではないかと思い、「異端の大義」を読み返している。
つづく
27日の株主総会を経て一応の決着をみたようだが、それを伝える見出しが、これだ。
<勝利のかぐや姫「一般株主の80%近い賛成に重い責任感じてます…」>
これは産経新聞の見出しなのだが、美人さんとはいえ経営者として奮闘している女性を「かぐや姫」と揶揄するとは、さすがに産経だと思ってしまった。
・
そう思われる産経も何だが、家具屋の娘だから「かぐや姫」なのだと気付くのに時間がかかる自分のマヌケぶり・・・・もはや「アレの衝撃」(3/27)による思考停止の所為ばかりではないかもしれない。その程度の認識なので、現在進行形のこの騒動については書けないが、同族企業の経営ということから思い出した本がある。
「異端の大義」(楡周平)
上下巻の長編は、主人公高見の勤務する東洋電器が台湾・韓国の攻勢に押されて半導体事業から撤退する場面から始まる。
シリコンバレーから帰国してみれば、何年にもわたる無配に累積している赤字。
それを経営陣は、早期退職や工場閉鎖など負債部門の切り捨てで乗り切ろうとするのだが、同族企業であるゆえに経営方針の決定も人事権を握っているのも創業者一族。主人公は経営方針の歪みと恣意的人事に異議をえたために、創業者一族で人事権を握っている(元)友人に徹底的に疎まれる。
しかし、左遷や降格人事に遭おうが、誠実さと正義感を失わない主人公に最後、一発逆転が起こる。
何年か前に読んだ印象は、こんなものだった。
何時からか「雇用調整」という言葉が簡単に使われ、特に家電業界は決算のたびに、まるで人を備品か何かのように「調整」するのが新聞の見出しになっているので、作中の工場閉鎖に伴うリストラで自殺者が出る場面などは切実に迫ってくるものがあったが、世界の半導体シェアの半分以上を占めていた日本が、撤退するまでに追いやられる理由を、同族企業の古い体質にだけ求めているかのような内容には、安直さを感じていた。
しかし、「勇者よ進め」(3/5)で、「トヨタが社長自らアメリカ議会の公聴会に呼ばれた原因に、排他的姿勢があった」と書いたばかりのところで、上場企業の家具屋が公開お家騒動を繰り広げた様を見ていると、日本社会に根づいた体質を考え直した方が良いと思いのではないかと思い、「異端の大義」を読み返している。
つづく