Blue Moods / Miles Davis (Debut DEB-120, jp.reissue)
帝王マイルスのレコードはどれも一定の評価を得ているアルバムが多い訳ですが、レーベル、メンバー的にもユニークで得意な存在感を持った作品がこの"BLUE MOODS"ではないでしょうか?時代的にはハードバップ宣言後の1955年、マイルスは絶頂期にあったと考えられます。このアルバムはレコーディング順で行けば6月ののワンホーンカルテット"The Musings of Miles"と8月の"Miles Davis and Milt Jackson Quintet Sextet"の両プレステッジアルバムの間で7月に録音されています。Debut recordsはいわばCharles Mingusの私的レーベルですよね。なぜ、こんな時期にDebutに録音する必要性があったのか?一説にはマイルスのミンガスからの借金問題があったなどと言われています。
それはさておき、この時期のマイルスは前述のように絶唱期を迎えている訳ですが、特徴的なセンシティブでリリカルなミュートプレイを織り交ぜ好プレイを連発しています。ユニークなメンバーは、Miles Davis(tp), Britt Woodman(tb), Teddy Charles(vib), Charlie Mingus(b), Elvin Jones(ds)のピアノレスクインテットという編成です。テディとミンガスがそれぞれアレンジを行っているようで、2人の卓越した音楽センスを感じざるを得ない編曲も楽しめますし、この2人が随所に見せるメタリックなヴァイブラフォンと硬質なコントラバスのサウンドがマイルス盤特有の異様な緊張感をあおっているかのようです。演奏曲はA面が"Nature Boy"と"Alone Together", B面が"There's No You"と"Easy Living"の各2曲構成です。"Nature Boy"と"Easy Living"でマイルスのミュートが聴けますが、ガレスピーの影響下から脱した独特のトランペットは既にマイルスの完成されたリリシズムを十分に表現している演奏ですね。特に冒頭の"Nature Boy"の緊張感、清涼感が好きですね。
所有盤はビクターが出した国内再発の廉価版です。概してDebut盤の音はしょぼい印象をもっているのですが、Debut盤のオリジナルはどうなのでしょうね。ジャケ写もやや地味な印象で周辺のマイルス盤が強烈な印象を放っていることもあり、あまり語られることがない一枚ですが、絶頂期のマイルスがしっかりいますよ!