前回に書き落としたことがある。(以下、引用)
『指揮をするには、ものすごく鋭敏な運動神経がいるものだ。マラソン選手が毎朝走る練習をするように、
僕も手を振り身体を動かす運動を続けた。
試験だからといって普通の入学試験のように暗譜だけでやっていたら、体がナマってしまう。
それでは大勢の人間の寄り集まりであるオーケストラを、自分の意のままに動かすことなど、とてもできるものではない。
今後もぼくのように指揮の試験を受けようとする者があるだろうが、ぼくはその人たちに言っておきたい。
何より、柔軟で鋭敏で、しかもエネルギッシュな体を作っておくこと。
また音楽家になるよりスポーツマンになるようなつもりで、スコアに向かうこと。
それが、指揮をする動作を作り、これが言葉以上に的確のオーケストラの人たちに通じるのだ。
ぼくが外国に行って各国のオーケストラを指揮して得た経験のうちで、1番貴重なものはこれである。』
指揮者のほとんどが「ムチウチ症」になるというお話は、たしか小澤さんの言ったことだったと思う。
指揮する姿を観ながら「なるほど。」と思ったことがある。
その上、小澤さんは「腰痛」もある。長い指揮者生活のご苦労を思う。
小澤征爾さんが「ブザンソン指揮者コンクール」で優勝したのは1959年。
その弟子筋にあたる佐渡裕が1989年……ちょうど30年後にあたる。
改めて、世界的指揮者として生きてこられた小澤さんの永年のすさまじいパワーを思う。
ここで少し休憩されて、また指揮棒を振り、後進の指導をなさってくださいませ。