ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

スピンク合財帖  町田康

2013-01-05 14:46:10 | Book
  

これは2011年の「スピンク日記」の続編と言える。
合財帖の「合財」は「一切合財あるいは一切合切」の「合財」と考えるのが妥当と思われる。
「合財袋」あるいは「信玄袋」の手帖版と考えることも楽しいかもしれない。

スピンクは5歳、遅れて「主人ポチ」&「奥様の美徴さん」夫妻の元に来た「キューティー」はスピンクの弟です。
ここまでは「スピンク日記」と同じメンバーですが、故あって「シード」という元セラピードッグが家族になりました。
スピンク、キューティーはスタンダード・プードルで、シードはトイ・プードルで小型犬でした。

可哀想な状況にいる犬を受け入れてきた美徴さんの第3回目の犬の救出でした。
どう可哀想なのか?シードは「セラピー犬」であるということは「レンタル犬」でもありました。
1時間800円でレンタルされる犬ならば、大方は大きくて立派な犬を選びます。
その選択からいつも漏れていたのが「シード」だったわけでした。

この合財帖は、シードを加えた5人の家族で始まります。
「主人・ポチ」はこれを実際に執筆しているであろう作家「町田康」と推測されます。
それをスピンク口調に書いていますので、あたかもスピンクがポチポチとキーボードを打っている感覚に襲われ、
読者は笑いかつ微笑んだりすることになる。
以前も書きましたように、現代版「吾輩は猫である」と同時に犬版でもあります。

3頭の犬は主人に従順な立派な犬ではないし、
主人ポチも立派(?)な大人の男ではない。
この組み合わせのなかで、主人に忠実な犬は育たないし、
もともと主人は「ポチ」なのですから。
だから興味ある匂いに誘われたら、主人のリードを引っ張り過ぎて主人は転倒するし、
犬の訓練の常識とは程遠い関係になります。

そのことを深く考えさせられました。
人間の生活上の都合から、犬はお利口訓練を受けさせられている。
……と言うことに深く気付きました。

スピンクの人間批判は鋭い。ということは「主人ポチ」が鋭い切り口だったのかな?
ともかく楽しい1冊でしたとさ♪


    (2012年・講談社刊)

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