エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

人生のハビットはこうしてできるのです!!

2014-01-15 03:49:31 | エリクソンの発達臨床心理

 

 バーナード・ショーは、支払い猶予期間に、仕事の基盤を確立しました。それは、心の雑草を根こそぎにし、「心の庭」のための道を開けることだと、エリクソンは言います。私は、それは、自分が本当は何を願っているのか? という最深欲求に応え続け、自分の生きる向きを確かめることだと、言い換えられると申し上げました。さらに言い換えるとすれば、これは、「枝を伸ばす前に、根っこを伸ばせ Roots Before Branches」ということになるでしょう。

 

 

 

 

 

 バーナード・ショーは、夢にも見なかったことを実際にやったのでした。しかも、臨床心理士なら、「強迫的補償」と呼ぶのに近いくらいの儀式化を伴って、夢にも見なかった文学にのめりこんだのでした。こういったことは、一時、どこに向かうかもわからぬままに、ほとんど熱狂的に活動に集中することで、バランスをとることが多いのですね。それによって、どんな仕事の習慣であれ、当人が守ってきたその仕事の習慣を保つのです。「私はデマイ版(44cmx57cm)の用紙を6ペンス分一度にどっさり買い込んで、4つ折りにしました。そして、1日5ページを埋めるように自分に課したのです。雨の日も晴れた日も。さえない日も充実した日も。わたくしは学生か店員よろしく、その5ページが終らないうちは、翌日になるまで書くのを終わりにしませんでした。他方、1日でも休んだなら、次の日は2倍やって、休んだ分を埋め合わせました。この計画に則って、私はその5年で、5本の小説を書きました。これが私の仕事の見習い期間でした...」。ちなみに、この5本の小説は、50年以上出版されることがなかったことを、付け加えてもいいでしょう。いよいよ出版されるというときに、バーナード・ショーは、特別な前書きの中で、その小説の版権を買おうとした出版社に、その小説を読むのを思いとどまらせようとしたこと、しかし、その小説が、バーナード・ショーの人生の中で、どれがけ重要か、ということに注意を払ってもらいたいこと、を述べています。ことほど左様に、バーナード・ショーは、この5本の小説が持っている本当の役目と意味とに、気が付いていたのでした。もっとも、彼の初期の仕事の習慣は、強迫的な嗜癖という点で、ほとんど病的だったのですが、その仕事の習慣そのものに、それを続ける中に、自己治癒力があったのでした。

 

 

 

 

 人生のミッションを見つけたら、傍から見たら、病的に見えるほどの集中が必要です。それは強迫神経症や嗜癖(〇〇中毒)に見まがうほどなのです。こうすることで、人は初めて、ミッションを自分の人生のハビットとすることができるのです。

 これは、大江健三郎さんが『人生の習慣(ハビット)』の中で言っていることと同じですね。昔、人間性心理学会の年次大会(東京国際大学だったかな?)で、大江健三郎さんが講演した時に、エリクソンの深い話をしていたのを、翻訳しながら、思い出しました。大江健三郎さんは、エリクソンからも深く学んで『人生のハビット』を書いたのは、まず間違いないでしょうね。

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