エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

力に頼らないで生きる という音色

2014-06-21 08:24:46 | エリクソンの発達臨床心理

 

 
ある黒人少年の積み木の音色 ⇔ 彼が大人になってからの仕事の音色
  エリクソンは難しいことを優しく教えてくれていると思いませんか?頭脳明晰な人が、難しいことを易しく教えてくれる典型だと私は常々考えています。その点でも似てい...
 

 今日エリクソンが取り上げている男性。子どもだった30年前に、エリクソンが見守る中で積み木遊びをした男性です。いまは、「最も困難な状況下で、破壊的(自己破壊的)活動に関わりそうな10代の黒人グループの味方になって、その相談に乗ることができる」人だと、エリクソンはその男性を評します。この男性、カウンセラーかソーシャルワーカーでしょうね。この男性が今の仕事をすることができる勘所を、次のように、この男性自身が述べたと、エリクソンは紹介しています。

 「私が自分の怒りとうまく折り合っていることも、彼らは分かるし、自分たちが私を怒らせて、私の価値に逆らって私を行動させることもできないことも、彼らは分かっているのです。ですから、彼らは私の話を聞くのです」

 そして、30年前の積み木遊び。その積み木遊びに現れた、言葉にならないこの男性(男の子)の声を、エリクソンは次のように言います。

「感情の爆発をコントロールし、規律と自己表現によって、その感情の高まりを乗り越える」音色がしていた

というのです。

 この男性に、どんな人生行路があったのが、それについてはエリクソンは触れません。エリクソンが、この男性の人生行路の 10台はじめに作った積み木遊びと、30年後の40代初めに携わる仕事を紹介したにすぎません。

 しかし、この人生行路の2つの点が、「力に頼らないで生きる」と言う1点で一致していることに、私どもは深く感動してしまいます。人生、という贈り物の、計り知れない摂理 providence を思わずにはいられませんでしょ。

 

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