エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

全てのやり取りは、人生全てを見通すヴィジョンと生きがいを宿す

2013-07-11 02:51:21 | エリクソンの発達臨床心理

 

 第一章では、子どもの遊びから政治まで、「共に見る」ということで共通することが実に多いことが分かりましたね。また、子どもの遊びから政治まで、実に演劇とも深く共鳴していることも分かりました。

 今日から第二章「ライフサイクルと儀式化」の第1節「やり取りのいろんな舞台」に入ります。

 

 

 

 

 5才の子のおもちゃの積み木で、私どもが見て分かったことは、ダンスをするポーズのブロックによって、学校の現実にうまく馴染んだことを表現している、ということでした。それは、おもちゃの場面としても、そうですし、そのダンスのステップが、その子の全般的な事情という舞台と関連するものとしても、そうです。その子の全般的な事情とは、彼の理解力と衝動、彼の人生の舞台でのトラウマといろんな空想、それから、彼が共有していた特殊な問題、彼が通っていた学校に、彼の担任のことです。ここでは、すなわち、遊びの時期から学校の時期への入り口では、私どもは、遊び専門の一つの舞台と、やり取りの一つの舞台との両方があることが分かります。そればかりではありません。より大きな(やり取りの)舞台の中に、小さな(遊びの)舞台があり、その小さな(遊びの)舞台には、状況に合わせて脚色する大事な働きがあることも、私どもは気付きます。もし、私どもが人生の他の舞台(段階)、すなわち、あらゆる生活場面で、陽気で楽しいことを自由にできる範囲とその限界に対応する遊びそのものの関係を大まかに描き出そうとするならば、ピーター・ウォルフが「作業の全体性」と呼んだことに注意を払わなくてはならなかったでしょう。「作業の全体性」とは、成長し、発展している子どもは、身体的に手を伸ばすことから認知的に理解することまで、本能的な衝動から社会的なやり取りまで、これらの働きの真似事ができるようになる、ということです。青年期には、たとえば、仲間世代と価値の世界とは、「作業の全体性」の一部になります。それが、新しい形の陽気で楽しい活動となり、新しい形のゲームの発達となったとしてさえ、そうなのです。ですから、生涯を通して、一人の個人の陽気で楽しい、を辿っていけば、どのようなことが、その人にとって遊ぶ活動になったのかを一覧表に出来るばかりではなくて、あらゆる形のやり取りをも一覧表にすることも出来るでしょう。このあらゆる形のやり取りは、いつでも、人生全てを見通すヴィジョンの中で展開するものなのですが、この人生すべてを見通すヴィジョンのおかげで、かなりの数の個々人が、自分たち内輪の生活に生きがいを見いだせるものなのです。大人になれば、働く世界と子どもを授かったり、何かを生産したりする活動が舞台に登場します。そこでは、一人の人は見通しと活動の自由を持たなくてはなりませんし、同時にそれらを他の人と分かち合わなくてはなりませんそうでなければ、その人は自分の生活の営みに大変苦戦することになるでしょう。しかし、それだけではありませんね。実際に、もし、人と分かち合う経験のおかげで、それぞれの段階で、その大人が見せかけでもいいので自由にやり取りできる舞台を手に入れることができなければ、誰も、老人のあの単純明快な英知に到達する望みはありません。その英知に到達できるのは、死に裏打ちされた人生の全体を見通して初めて、使徒パウロが、「今私どもは『鏡によってボンヤリ』見るばかりですが、かの時には顔と顔とを相対するように、お互いを価値あるものと認め合えるでしょう」(「コリントの信徒への手紙 一」 第十三章12節)と述べた、あの約束を時には思い起こせることにもなる、その時なのです。

 

 

 

 

 日頃私どもは、ことさらに意識することはないのですが、日々行っているやり取り(あるいは、やり取りがないこと)は、その人が仲間と分かち合っている、人生全体を見通すヴィジョンを宿しているし、そのヴィジョンによって、私どもは生きがいを感じている、とエリクソンは言います。最初から、エリクソンはすごいことを言いますね。そういった眼差しをもって、日々の自分のやり取りを見直すことが、その、自分自身のヴィジョンと、自分自身の生きがいを見直し、意識し、さらには、いっそう包括的なヴィジョンいっそう包括的な生きがいに発展されるために、ぜひとも必要です。

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