エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

父親の眼鏡に叶う倅

2014-06-26 05:34:18 | エーリッヒ・フロムの真まこと(の行い)

 

 お父さんの役割はヴィジョンを示すこと。でも、今の日本で誰がヴィジョンを示してくれているでしょうか? そんなことよりも、日々の金儲けに明け暮れているのが、今の日本の偽らざる姿でしょう。だから、子どもが育たない時代になってしまってるんですね。

 p39下から3行目から。

 

 

 

 

 このお父さんの役割に深く関わるのが、社会経済的な発達です。個人の持ち物が生じて、個人の持ち物が息子たちの一人に受け継がれるようになると、お父さんは自分の財産を引き継がせる息子は誰にしようかと探すようになります。当然、それは、お父さんが相続者として一番相応しいと思う倅でしたし、一番お父さん似の倅ですから、結果的には、お父さんの一番のお気に入りの倅、ということになります。父親が≪真の関係≫の中で子どもを大事にする気持ちは、条件付きなんです。父親が≪真の関係≫の中で子どもをーー大事にする気持ちの原理は、「私がお前を大事にするのは、私の眼鏡に叶うからだよ。お前は自分がしなくちゃいけないことをちゃんとするし、お前は私に似てるからね。」ということです。 父親が条件付きで子どもを大事にするとき、母親の掛け値なしで子どもを大事にする気持ちと同様に、そこには肯定的側面と否定的側面の両方があることが分かります。その否定的側面は、父親が子どもを大事にする気持ちは、それに相応しくなくちゃあなりませんから、期待に応えられなければ、大事にされなくなります。父親が子どもを大事に思う気持ちの本質からして、服従することが中心の価値になりますし、不服従が一番の罪になります。その罰は、父親から大事にされない、ということです。その肯定的な側面は、同様に重要です。父親が子どもを大事に思う気持ちが条件付きだからこそ、私は父親から大事にされたいがために、なにがしかのことをするのですし、また、父親から大事にされるために働くのです。父親が子どもを大事に思う気持ちも、母親が子どもを大事に思う気持ちと同様に、自分がコントロールできるものなんですね。

 

 

 

 

 

 お父さんが子どもを大事にするきもちは、それを得るために子どもががんばるようになるわけですね。期待に応えよう、めがねに叶うものになろう、という努力の源でもあるわけですね。

 

 

 

 

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