去年三月、柏駅近くの洋品店へスラックスを買いに行ったことがあります。そのときに写した写真の日付をみると、三月十一日のことでした。
二本買うことにして裾上げを頼むと、一時間ほどかかるというので、待ち時間を潰すために付近を散策することにしました。
付近といっても、私にとって見るべきところは東急ハンズかドンキホーテ、あるいは長全寺ぐらいしか思い当たりません。
洋品店のあるところから長全寺までは、歩くと十分ほどかかります。柏駅の東口周辺は詳しいわけではないけれど、ちょくちょく行くことがある上、ほぼ碁盤の目になっているので、迷うはずはない……こう思ったのが間違いの元でした。
常磐線に沿う形で駅前を横切り、よく知った道を歩けばよかったものを、路地をクネクネと歩いているうちに、どこかで勘違いを起こしました。
どこかで「→長全寺」という案内板を目にした記憶があります。それがどこであったか、いまではわからないのですが……
薬師詣でなどで初めての土地へ行ったりするとき、私は必ずコンパスを持つようにしています。しかしこの日はスラックスを買うつもりで出てきただけですから、コンパスなど持っていません。
この日は終日曇、しかも結構暑い雲に覆われた日でした。太陽さえあれば、方角がわかるのですが、どんよりとした雲が垂れ込んでいたので、太陽がどこにあるのかわかりません。
テクテクと歩いているうちに、明らかに駅から離れ過ぎていると気づきました。目的の長全寺がどのあたりにあるのか、最早わからなくなっていました。ただ、進んでいた方角は真東かどうかはわからないが、東に向かって歩いてきたことは確かだと思われました。
路地に入るのは避けて、できるだけ交通量の多い、広い道を選んで左に曲がり(すなわち北)、また左に曲がって引き返そうと決めました。
目の前に急な下り坂が現われました。彼方を見れば、私の目線と同じ高さに建物があり、樹々が見えます。
想像するところ、この坂を下りきったところには、かつては川が流れていたか、池があったのに違いない、と思いました。
下り切ってみると、いかにも川が流れていたような風景でした。
歩みを進めるうち、右手から目を奪うような黄色の塊が飛び込んできました。ミモザです。
ちょっとした高台の上にあって、私からは距離があったので、樹の高さはどのくらいあるのか計ることはできませんが、こんな高木で、枝ぶりも豊か、花も豊かというミモザの樹は見たことがありませんでした。
ミモザの日は今月八日でした。
ミモザの日とは、日本ではあまり馴染みがありませんが、その日に再訪したいと思いましたが、八日は恒例の薬師詣でがあるので行けません。
九日、十日はパート仕事があったので行けません。十一日は休みでしたが、なんとなく行く気が起きず、十二日も仕事があって行けません。
で、十三日になって、やっと行くことになったわけです。
柏駅で電車を降りて、東口に出ました。
今度は小細工をして間違えぬよう、前回の帰りの道をそっくりなぞって行きます。
長全寺前を通って行きます。行きは通過しますが、帰りに寄るつもりです。
長全寺の先、右側に三井生命の事務センターがあります。その少し先を右に折れ、100メートルばかり歩いたところにありました。ありましたが、様子がまったく違ったので、呆気にとられてしまいました。撮影したアングルはまったく同一ではありませんが、背景にあるマンションを見れば、同じ場所だということがわかってもらえるはずです。
去年より二日遅くきているのですが、花のほうは早過ぎたのか遅過ぎたのかよくわかりません。
帰り、長全寺に寄って行きます。
略縁起によると、天正三年四月二十五日、松戸市広徳寺五世、巧室梵藝大和尚を勧請し、曹洞宗寺院として開山。その後、十五世紀以来この地域で勢力を張っていた戸張氏の菩提寺として栄え、寛永年間頃に戸張村(柏市戸張)の香取神社近くから現在地へ移転したということです。現在歩けば十七~八分の距離のところです
歴住の墓所を訪ねました。
山門を入ると、右手が墓地になっていて、すぐわかるところに歴住の墓所があったので、参拝します。今日は念珠も線香も持っていないので、拝礼のみ。
山門。
山門の本堂側には四天王の像。左側に広目天と増長天(奥)。
同右に持国天と多聞天(奥)。
釈迦如来を祀る本堂です。
大師堂。曹洞宗のお寺なのに、なにゆえ弘法大師を祀るのかわかりません。
我が庵近く(といっても、歩いて十五~六分ほどかかりますが)、まだ小木ですが、ミモザがありました。