細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

ニーズと、研究と、現場と、持続

2019-10-23 17:12:01 | 研究のこと

今日は、朝一番で研究室のゼミがあり、秋学期に初めて教員3名が揃ってのゼミだったかと思います。議論も刺激的で、学生たちの研究が面白い方向に展開することを期待しています。

今日の午後は、JR東日本の研究開発センターに出張して、組積造(レンガ積み)の試験体の振動台での載荷実験に立ち会いました。土木の教員の会議があったのですが、実験の方を優先しました。今日の実験は、弱点を有する供試体で、補強をしないままに模擬地震波を与えるという実験だったので、私の中では一番重要な実験であると思い、調整を重ねて今日の午後を空けました。

今日の実験は最初は思うように行きませんでしたが、私も自分の改善案を伝え、実施され、結果的には極めて面白い実験結果を得ることができました。この午後だけで、私も多くのことを学び、研究として進むべき方向性も見えてきたように思います。

来週には、耐震補強されたレンガ積み供試体の載荷試験が実施され、私は業務のため参加できませんが、私の指導する研究室のメンバーが参加します。明日の朝に、本日、私が学んだことを伝えます。

私は土木の研究者・技術者として日々を過ごしていますが、「ニーズ」から研究をスタートすることをポリシーとしています。ニーズにもいろいろあり、すぐに解決を求められている緊急性の高いものもあれば、長い目で見てその分野全体を良くしていくためのニーズ、という場合もあります。何の役に立つか分からない、全くの基礎研究をする能力は私にはありません。

ニーズに基づいて研究をするとして、やはり現場に立たないと、本当のニーズは見えてきません。それはいつも感じることですが、今日の実験に立ち会って、再認識しました。

現実社会のニーズに真正面から向き合い、そこから研究テーマを立ち上げ、しっかり現場に立ち、解決するまでしつこく持続する。それが私にできる研究のスタイルであり、逆に言えば、それしかできない研究者なのかと思います。

もういいおっさんですので、他人に「過度に」憧れる気持ちもないし、他の人から自分の生き方を「むやみに」批判されても聴いたところで仕方ないと考えるようにしているし、自分のやり方を貫こうと思います。

半日ですが、多くのことを学びました。


秋学期の講義

2019-10-21 09:41:48 | 教育のこと

頑張って準備してきたトライアスロンですが、台風19号の影響で中止になりました。残念ではありましたが、台風の甚大な被害に言葉がありません。私の知り合いでも被災した方が少なくなく、国家レベルの甚大な被害となってしまいました。

どうしてこのような状況に至ったのか。ソフト対策ばかり重視しているように見える報道が多いですが、本当に必要なのはハードの対策の強化であること、も秋学期の講義等でも日本人学生、留学生に伝えています。

この秋学期は、毎年おなじみの「土木史と文明」が始まりましたし、今年度から新たに開講した「メインテナンス工学」もすでに2回が終わりました。メインテナンス工学では、鉄道、ダム等の治水や水利の施設、港湾、道路、下水道等のオペレーションや維持管理について学びます。私の信頼する外部講師にたくさん来ていただいて、最先端の実務の情報を浴びるように聴いて、これからのメインテナンスを考えていく、という講義に設計しました。第2回目には、JR東日本の松田芳範さんに来ていただき、ご講義いただきました。





大学院の修士課程用の講義も2回が終わり、真に耐久的なコンクリート構造物を構築するとはどういうことか、を秀逸な論文や教科書、私の手持ちの情報などをフル活用して、多くの留学生たちとディスカッションしながら考えたいと思います。

また、大学院の博士課程用の講義も本日からゼミ形式でスタートし、私の勉強の足りないプレストレストコンクリート、の教科書(トロント大学のCollins教授)をテキストに、留学生たちと読み進める講義にしました。博士課程の講義はゼミ形式ですし、極論すれば何をやってもよいので、私自身が勉強したい内容で学生たちにとっても意義のあるものを題材に、今後も毎年、勉強を重ねていくことにしました。早速私も予習をしていますが、大変興味深い内容で、通勤中などに楽しく勉強しています。日常を大切に活用する、ということです。

土木史の講義は、相変わらずですが、初回は溢れかえりました。大学の中でも最大級の階段教室を使わせてもらっていますが、初回は立って聴いている人も少なくなかったです。いつもの「ケンカ戦法」で数を絞らせてもらい、二回目は何とか皆が着席しての講義となりました。

私の教える技術や、使うコンテンツも毎年多少はレベルは上がっているのでしょうか、また、台風19号の甚大な被害を目の当たりにしたこともあり、第2回目(10月15日)での重要なキーワードとしたインフラの「ストック効果」は、さっと学生たちに染み渡るように理解されたようです。例年とは比較にならない高いレベルのレポートが数多く見られました。

やはり、本当の、大切な、この国の将来をことを真剣に考える、心ある情報が示されれば、学生たちも真剣に考えるのです。そのような情報が普通には手に入らない(知れば、ごくごく簡単に手に入るのですが)のが問題なのでしょうね。

本日、10月21日の午前には、加藤学園暁秀高等学校から160名程度の高校生が大学体験で来られ、講義としては、中村文彦先生45分、細田が45分、午後に前川宏一先生の生の授業(大学2年生用)を体験聴講するとのことです。私の45分では、土木史のイントロダクションなどで使った情報も活用しますが、どのように受け止めてもらえるか、楽しみです。(私の名前の「暁」と「秀」という学校名なので、何だか親近感、愛着を勝手に感じてしまいます。。。)


教育の重要性についての私の理解は、年齢を重ねるごとに深まっていきますが、極めて重要な職業に就かせていただいていることを肝に銘じて、今日も高校1年生160名強(ついでに引率の高校の先生方も)と、大学院の博士課程の4名の授業、をしっかりやらせていただきます。

(事後報告:その様子はこちら)





トライアスロン日記④

2019-10-06 09:42:26 | 趣味のこと

大会出場までちょうど1週間となりました。何やら台風が発生した模様で、次の3連休(12~14日)は全国的に荒天とも言われていますが、3連休の中日がトライアスロンです。中止にならなければ、そこそこの雨であれば、逆に汗をかき過ぎずによいか、などと気楽に構えております。

私が担当する講義の開始は10月8日(土木史の初回)ですが、9月30日の週から、実質的に秋学期が始まりました。

9/30(月) ジョギング30分(朝)、その日はJCIのシステム革新委員会(幹事長)の委員会報告会。
10/1(火) 気仙沼へ出張。ホテルで30分のマッサージ。
10/3(木) ジョギング30分(朝)。
10/5(土) バイク22km、Run 6.22km(30分)、水泳1500m。
10/6(日) 体重64.5kg。ジョギング30分(朝)。現在、盛岡に移動中。日本遠隔医療学会にて、講演とパネルディスカッション。

上記以外に、朝の体操・柔軟体操と、腕立て20回、腹筋10回(毎回4回ひねり付き)をやっており、体がかなり引き締まってきました。気分的には、トライアスロン出場へ向けた練習のラストスパート、です。

スポーツの良いところは、自分を比較的簡単に限界まで追い込めること、です。

10/5(土)は、3つの種目をまとめてトレーニングする最後の機会かと思い、部分的に追い込みました。30分Run(マシン)は、出だしから時速12kmにし、20分経過したところから12.5kmに上げ、最後の2分は13.0km、13.5km、瞬間的に14.0kmまで上げて終わりました。限界ではありませんが、自分にとってはかなりの負荷です。苦しいタイミングもあるけれど、それを乗り切った時の充実感は心地よいです。極端ですが、30分間走っている間は、「自分はこの30分を走るために生きている」と考えるようにし、そうすると、苦しいこともいつか終わるし、その苦しみとどう向き合うかがまさにその瞬間の自分に問われている、と感じることができます。そのように考えると、瞬間瞬間をしっかりと過ごせることにもより深いレベルで体得しつつあるように思います。


バイクの22kmも、10kmはジムへの往復のロードバイク。残りの12kmはマシンでのバイク漕ぎで、これはアルペンの設定にしたので、何度か非常に勾配のきつい時間帯があり、ほぼ限界状態に至りました。

自分のパフォーマンスの限界に近いところで自分と向き合うことは、仕事のやり方にも影響を及ぼすと思っています。

今日は日曜日ですが、仕事で盛岡に向かっています。中高(甲陽学院)の同級生の馬場さん(お医者さん)に声をかけていただき、何と、日本遠隔医療学会の学術大会にて、「命の道」である復興道路について、私の関わってきたことについて短時間ですが講演し、パネルディスカッションに登壇してほしい、という依頼でした。特別講演は大石久和先生で、PDもご一緒しますので、何とも光栄なことでございます。

翌日の10月7日に特段の予定が入っていなかったので、復興支援道路の大きなトンネル(建設中)の品質調査を研究に携わる学生たちを同行して行うことにしました。また、執筆中のコンクリートの絵本の、画家さんのNATMトンネル建設の取材も兼ねております。時間は限られているので、知恵を絞って有効に活用するしかございません。


17年目

2019-10-01 09:42:53 | 職場のこと

私は2003年10月1日に横浜国立大学に着任しましたので、本日が17年目の開始、ということになります。丸16年、横浜国立大学で勤務してきたことになります。

あっという間、という気は全くしませんが、決して短くない時間を積み重ねてきました。

数知れない講義もやってきましたし、非常に多くの学生の指導もしてきました。私自身も無数の経験をさせていただき、苦労もありましたが、楽しく過ごしてきたと言えると思います。特に、人生の宝物と思えるような、たくさんの素敵な方々との出会いを学内外でさせていただき、感謝の気持ちしかありません。

先月の9月は、ほとんど大学にいませんでしたが、国内外で様々な活動を実践していました。私自身が委員長を務めた土木学会の356委員会も9/13に報告会+シンポジウムが無事に終了しましたし、幹事長を務めたJCIのシステム革新委員会も昨日、9/30に報告会が無事に終了し、ほっとしました。1年くらい準備に関わってきた社会マネジメントシステム学会の国際会議も終了しましたし、チェコでの招待講演も無事に終わりました。いろいろなことに区切りが付いて、フレッシュな気持ちで17年目を迎えております。

本日より、愚策中の愚策である消費増税が実施され、日本はまた大変な状況に陥ることかと思います。我が国の世界における相対的な地位の没落ぶりには目を覆わんばかりですが、なるべく多くの国民が一刻も早く真実に気付き、声を挙げていくしかないのですけど。

私自身はあまりぶれることなく、サステイナブルでレジリエントな国家の構築に貢献すべく、自分自身の特質を活かす方向性を模索し、進んできたつもりです。

着任直後のころは、様々な不安を感じたこともありますが、結局はやるべきことをやる、しかなく、そうしていれば結果も付いてくるということをここまで16年間は続けてきました。その前提条件として、適切な哲学、ヴィジョンを持つことが最も大事だと思います。

17年目の初日の今日は、気仙沼に向かっています。復興道路・復興支援道路の建設も、来年度末で一区切りで、それまでに膨大な工事が一気に完成に向けて進められていきます。時間の無い中で造られるものこそ、品質がおろそかにならないよう、私たちの一連の取組みの勝負所、のつもりで、同志たちと気持ちを引き締めたいと思います。

「実学志向」「現場主義」「実践」等、のキーワードで評されることが多いですが、私の心の底からの思いにしたがって活動を重ねてきた結果であろうと思います。

今一度、自身の哲学、ヴィジョンを振り返り、研究テーマの設定や、講義のあり方(全く新しい学部3年生の科目「メインテナンス工学」も10月から始まる)、研究予算申請書の作成など、を自分らしくやりたいと思います。


トライアスロン日記③

2019-10-01 08:24:38 | 趣味のこと

今でこそ、トライアスロンで完走しよう、などど本気で思って地道に練習しておりますが、それこそ2年くらい前までは、トライアスロンに出ようなどと思ったこともないし、
そんなものに出る人の気が知れない、というような感覚でした。このブログを読んでおられる大半の方もそうであろうと思います。

2014年9月末にフランスでの1年の滞在から単身で帰国し、その後、3ヶ月程度は浦和の実家に居候し、ほとんど休みの無い日々を過ごしました。30日くらい休み無く動き回っていた時期もあったと記憶しています。疲れが溜まったのか、2015年の年明けくらいから右ひざの痛みがひどくなってきたこともあり、2012年ごろに通っていたカイロプラクティクに再び通い始めました。

朝の体操はフランス滞在中も続けていましたが、カイロプラクティクに通い始めたのが健康志向の再出発となりました。

2015年の春にクロスバイクを購入し、2016年の春からは水泳が趣味になり、2017年春にはロードバイクを購入するに至ります。

右ひざはひどく痛む時期もあったり、全く気にならない時期もあったり、でしたが、まさか走る、というようなことは思い付きもしなかったので、膝への負担の少ない自転車と水泳を中心に運動していました。

2017年元旦に、「歩こう!」と思い立ち、ウォーキングを始めました。水泳と合わせて、水中ウォーキングを始めたのもこのころかと思います。

2017年の秋ごろから、ジムのマシンでRunを始めました。これで、トライアスロンのパーツが揃うことになりました。

趣味としてロードバイク、Run、水泳をしているだけでも十分楽しかったのですが、品質確保の委員会(229委員会)の打ち上げの懇親会で、津野さんと話しているときに「ヒルクライム」を勧められました。2017年7月末のことです。登りのレースなのでスピードも出ないし、膝への負担も少ない、ということでした。勧められたときは、「えー?」という感じでしたが、結局、2018年5月に、大槌のヒルクライムに出場することになります。

大会に出るのであれば、大きな有名な大会もよいけれど、所詮は完走が目的のおじさんスポーツですので、自分の思い入れのある地域や町の大会に出たいな、と思い、何度も何度も通った釜石や大槌の辺りでヒルクライムの大会があることを聞きつけ、これに出ることにしました。

ロードバイクを大槌に運ぶことも含め、大会出場は初めての経験で、初めてのことには様々な苦労も伴いますが、無事に完走し、これが第一歩となりました。2018年の6月末にはお台場のナイトマラソン(7km、34分51秒)にも出ました。また、4月と7月のトライアスロン教室(それぞれ初級、中級)にも参加し、このころには明確にトライアスロン出場を意識していました。

右ひざ痛とはそれなりに上手く付き合えるようになっていましたが、やはり気になるため、右ひざ痛が一番ネックとなるRunでチャレンジしようということで、2018年12月に港区のハーフマラソンに出場。週末中心に1時間のRunで練習を積み、結局、1時間49分台で完走し、これも大きな自信となりました。

2019年5月には2回目の大槌ヒルクライムに出場し、初回に比べて5分、タイムが縮まりました。

2019年9月には熱海のオープンウォータースイムに出場し、42分かかりましたが、完泳しました。出だしのオーバーペースで大変苦しみましたが、実際のレースを一度体験しておいてよかったです。

そしていよいよ、10月13日に、これまた何度も何度も通った鞆の浦のトライアスロンに出場することになります。トライアスロンは準備も、装備の搬送も大変ですが、これまでいろいろと経験してきたことの組み合わせなので、それほど不安には思っていません。一番不安なのは、40kmのバイクがヒルクライムに近く、かなり体力を奪われそうなこと、です。ヒルクライムは2度ほど大会にも出ましたし、まあ何とかなるでしょう。

レース中は苦しくなる局面が何度もあるとは思いますが、応援してくれている人も少なからずいますし、様々なことを積み重ねていく、という自分の生きるスタイルそのもののチャレンジである、と捉え、完走を目指したいと思います。