土木学会のコンクリート構造物の品質確保小委員会(350委員会)で、コンクリート構造物の「性能」と「品質」について、定義をすることから徹底的に議論をしよう、とメールが飛び交っています。10/1に土木学会で、この委員会のワークショップを開催しますが、そこで「品質」について重点的に議論をするためでもあります。
私たちは、コンクリート構造物の品質確保、を目的にしているわけですが、コンクリート構造物を造るためのコンクリートの品質もあるし、コンクリートをつくるための使用材料の品質もあります。また、コンクリート構造物は造ることが目的ではなく、様々な環境で供用され、求められる機能を達成することが大事です。さらに言えば、固まる前のコンクリート(フレッシュコンクリート)に対して、「施工性能」という分かるような、分からないような概念がすでに導入されているため、「性能」と「品質」の理解が私たちの分野であやふやになってきている、という問題があるのです。
性能とは何か、品質とは何か、濃厚な議論が始まっていますが、アナロジーで頭を整理することも有用です。石田先生が、車の性能と品質についてのアナロジーを提供してくれたので、私は、人間とコンクリートのアナロジーで応戦したいと思います。
以下、シャルル・ド・ゴール空港で、日本への帰国の便を待つ間に作文したものです。
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人間とコンクリート構造物のアナロジー
人間は、両親の遺伝子を受けて誕生する。さながら、コンクリートで言うところの配合設計である。人間の生まれ持った遺伝子に優劣は無い。個性があるだけである。一見、現代の世の中に適した遺伝子があるように見えるが、時代の激変とともに適する遺伝子など如何様にも変わりうると考えた方がよい。
同じ遺伝子を持って生まれたとしても、乳児・幼児教育により人格は大きく変化し得る。コンクリートで言うところの、打込み、締固めに相当すると考えている。
人格形成の最も重要なプロセスと考えるべきである。
小学校以降の教育は、コンクリートで言うところの、養生に相当するのではないだろうか。根本の人格は幼児教育まででほぼ固まっている場合が多く、ゆえに家庭の重要性に日本人はもっともっと目を見開くべきであるが、養生も極めて重要である。
品質とは、人間やコンクリート構造物が備える特性、そして人間やコンクリート構造物をつくりあげる材料の備える特性、であるとすれば、人間の体をつくりあげる食物、飲み物(コンクリートの材料)の品質も極めて重要である。口から入る飲食物の品質には、社会毒に溢れた現代においては、徹底的に気を付けるべきである。
人間が備えるべき特性は、肉体だけでなく、精神、心にも多く存在する。
しっかりした国語の力を身に付けているか、「グローバル」というよりは「インターナショナル」に活躍できるように英語の力を身に付けているか、そもそも社会人としてしっかりと活躍できるように徳を身に付けているか、すべて品質である。定量評価が難しい特性もあるが、定量評価できないものだって、皆、質的に評価している。品質(Quality)とは、本来は量ではなく、質なのである。
さて、所要の品質をしっかりと備えた人間は、どんな過酷な環境であろうと、求められる性能を発揮する。それが、パフォーマンスである。
所要の品質を備えない人間は、過酷な環境であっという間に劣化して、設計段階で想定していた性能を発揮できなくなるコンクリート構造物と似ている。当然に、社会から期待される機能を果たすことはできない。