昨日、土木学会の350委員会(コンクリート構造物の品質確保小委員会)の成果報告会・シンポジウムが無事に終了しました。
当初は6月5日の予定でしたが、コロナにより延期をやむなくされ、開催方式もオンラインへと変更し、様々な方々からのご意見や提案も踏まえて、昨日の形式で実施できました。上記のリンクから、委員会報告書・シンポジウム論文集はPDF形式でダウンロードできます。冊子体での配布は無しとしましたが、その分、参加費は従来のものより格段に安く設定することができ、委員会報告書は今後広く拡散していくのではないでしょうか。
無料のシンポジウムというやり方もあったかとは思いますが、決して予算的に楽ではない(むしろ厳しい)学会のシンポジウムで収益を上げるモデルの一つとしても、よい先例になったのではないでしょうか。有料であってもコンテンツが良ければ参加者は集まるし、オンラインであれば遠方で普通なら参加しにくい方々も参加しやすくなります。
私にとっては、ライフワークの一つとも言える、品質・耐久性確保の委員会が無事に終了しました。思い入れも強い委員会でしたが、田村先生(委員長)を筆頭として、多くの方々との素敵な出会いがあり、皆で哲学を語り合い、現場で実践していく「研究」のやり方を私自身も学ばせていただきました。感謝の気持ちでいっぱいです。
昨日のシンポジウムでは、発表、講演、パネルディスカッションで活躍いただいた皆さんや、聴講していただいた方々も、いろんなことを感じていただいたのではないでしょうか。
紹介されて最近読んだ本の中に、次のようなことが書いてありました。
・アイディア自体は、自分ではすごいと思っても、人に出し惜しみするようなものではない。アイディアなんて世の中に同じようなことを思いつく人はいくらでもいる。大事なのは実践できるかどうかである。
・武器になるのは、その人自身のキャリア(人生)である。どういうことを経験してきたか、がその人特有の武器となる。
他にもいろいろ書いてありましたが、上記の二つが今の私には強く印象に残っています。
350委員会を通じて、私も多くのことを経験させていただきました。例えば、「高耐久床版のひび割れ抑制対策を構築しよう!」というようなアイディアを思いつくのはよいと思いますが、これを実践するのは大変です。実際には、優秀な博士課程の留学生の研究テーマとして数値解析モデルを構築し、多くの現場に協力いただいて、材料特性や、部材での実験、実構造物での温度・ひずみ・応力の計測やひび割れの観察、などを積み重ねて数値解析の結果を検証し、構築したモデルで無数の条件を設定して数値シミュレーションをし、さらに東北地整の手引きにまとめていく段階で多くの方々と徹底的に議論を重ねて出来上がっていきました。
大変、というよりは、今思えば楽しい経験でしたが、それぞれの時間は必死に過ごして来ました。
上記は350で私が経験した、ほんの一つの例です。
委員会報告書を仕上げていく作業も、孤独で辛いときもありましたが、仕上げると経験値もアップします。また、シンポジウム、パネルディスカッションの司会進行なども、これまでに経験してきて身に付けた能力をフルに発揮して取り組むことで、皆さんに満足いただける(いただけたはず)ものに仕上げ、それがまた経験値として積み重なっていきます。
私はこの委員会の幹事長だったので、もちろん相当な時間や労力を注ぎ込んできましたが、その分、多くのことを経験させていただくことができました。経験している最中も感謝の気持ちは持っていましたが、終わってしまうと、まさに感謝の気持ちしかありません。
私以外の多くの委員の方々も、それぞれに学んでいただけたものと思います。
昨日のシンポジウムでも何度か話しましたが、品質・耐久性確保の取組みは、新設構造物においてもこれからも進化や展開が期待されますが、維持管理においてこそ重要な切り口になってくると確信しています。維持管理において、品質・耐久性確保の技術的な視点があれば、極めて多くの研究テーマが見出され、地域ごとや施設ごと(道路、鉄道のみならず、様々なインフラにおいて)に、魅力的な取組みが産官学の協働でなされていくものと期待しています。
そして、私自身も本当にやりたいことは、維持管理まで含めて、構造物に必要な性能がしっかり発揮されるための技術やシステムづくりであることを、昨日、再確認しました。本当にやりたいことだからこそ、私の実力も発揮されるフィールドであると思っています。
シンポジウムの翌日の今日は、北三陸の現場に向かっています。橋梁のRC床版の品質やひび割れ調査です。350委員会で培った「現場魂」を大事に持ち続けたいと思います。
9月に入ると、滋賀、山口、福岡などで品質・耐久性確保の講習会での講演が予定されており、仲間を増やすチャンスですので、全力で情報発信したいと思います。