シャープ & ふらっと

半音上がって半音下がる。 それが楽しい、美しい。
思ったこと、感じたことはナチュラルに。  writer カノン

かぐや姫・神田川

2007-03-16 17:15:04 | 音楽を聴く


  貴方は もう忘れたかしら
  赤い手拭い マフラーにして
  二人で行った 横丁の風呂屋
  「一緒に出ようね」って 言ったのに
  いつも私が 待たされた
  洗い髪が芯まで冷えて
  小さな石鹸 カタカタ鳴った
  貴方は 私の身体を抱いて
  「冷たいね」って 言ったのよ

  若かったあの頃 何も怖くなかった
  ただ貴方のやさしさが 怖かった

  貴方は もう捨てたのかしら
  二十四色の クレパス買って
  貴方が描いた 私の似顔絵
  「うまく描いてね」って 言ったのに
  いつもちっとも 似てないの
  窓の下には 神田川
  三畳一間の 小さな下宿
  貴方は 私の指先見つめ
  「悲しいかい」って 聞いたのよ

  若かったあの頃 何も怖くなかった
  ただ貴方のやさしさが 怖かった


かぐや姫「神田川」。
今から34年も前、1973年のヒット曲だ。

今さら、この曲を振り返ったり、
懐かしむようなメモリアルな出来事はない。
しかし、東京に住む私にとって、
この曲はどこか、身近なせつなさを覚える。

神田川、といっても、
この曲の舞台となったのは、早稲田付近だ。
作詞の喜多条忠氏は、早稲田大学の出身で、
実際に同棲していた、自身の学生時代を基に作られた。

三畳一間の小さなアパートは、
今は都区内にはないと思われる。
十数年前、テレビで、
「神田川沿いの三畳部屋のアパート」を探した番組があった。

高田馬場に一件あった。
歌詞の通り、三畳一間の小さな部屋。
流し台の窓を開けると、眼下に神田川。
外国人が住んでいた部屋だった。
もう今はないだろう。

そして、ふたりで行った横丁の風呂屋。
現在の、西早稲田交差点近くにあった銭湯がモデルだった。
この銭湯も、もう廃業されている。

1973年は、
大学の学園闘争や、国鉄のスト、光化学スモッグなど、
日本は経済成長真っ只中にあって、
犠牲を払っていた時期である。
神田川も、この当時は悪臭漂う川だった。

そんな中、未来に夢を持ったり悲観したり、
いったりきたりの現実の中にいた大学生。
そんな二人の恋人が同棲した小さなアパート。
この曲は、喜多条氏の学生時代の回想ではあるが、
見事に、この年の時代背景にマッチしている。


あなたのやさしさが こわかった・・。
優しさに包まれた恋は、
失ったときに大きいもの。
一緒に銭湯から、神田川沿いの道を歩いて帰った思い出は、
一生残るのだろう。

アパートがなくなっても、
銭湯がなくなっても、
神田川がきれいになっても。

私の中で、一番せつない名曲である。