所用があり、五反田に行った。
帰りの五反田駅で、ふと目にした「東急池上線」の案内図。
思わず、その池上線に乗り込んだ。
この線には、なんともせつない思いが二つある。
一つは、1975年に発売された、西島三重子さんの『池上線』。
私が子供の頃で、それほどヒットした曲ではなかったと思うが、
今聞いてみると、昭和の歌詞・メロディーでありながら、
すごく大人の切なさを感じる曲なのである。
この線に乗り、恋愛を経験した人にとっては、
この歌は思い出の中から消えない曲であろう。
私は池上線を利用したことはほとんどなく、
この曲にまつわるエピソードがあるわけでもない。
でもこの曲は本当にジンとくる。
そしてもう一つ。
大学時代、一つ下の後輩の女子がいた。
この子が池上に住んでいて、ここから通っていた。
とにかく明るく、いつもニコニコと笑顔を見せていた。
私とは、特にお付き合いしていたわけではなかったが、
バス停で待っていると、後ろから『セーンパイ!』などと言って
背中をポンと叩いてくるような、
ドラマに出てきそうな後輩だった。
しかし、2年生になって突然登校しなくなる。
やがて、学校を辞めてしまった。
聞くところでは、お母様が急逝され、
家庭の都合で退学した、ということだった。
詳しい事はそれ以上わからなかった。
当時、携帯などない。
本人に連絡も取れず、ドラマのような後輩は
風のように姿を消してしまった。
池上、と聞くとこの子を思い出す。
元気でやっているかな。
幸せな人生送っているかな・・。
そのまま池上線に揺られ、私は池上で降り立った。
曲のイメージとは違い、
電車も駅も、とても綺麗になっていた。
池上線を聴いてジンとくるのは、
この子の存在もあったからだろう。
もう40年が経った。