私は大学4年生で「断層活動(地震)は予測」を最終目標として「断層活動年代測定(断層が動いたのが今から何年前かの測定)は可能か?」を卒論のテーマとして取り組んでいました。
1995年1月17日、兵庫県淡路島の野島断層の活動を起因とした「阪神淡路大震災」(正式には『平成7年兵庫県南部地震』)が起こりました。日本はプレートが複雑に絡み合うことでプレート境界にも、またプレート内にも応力がかかります。このことが原因で、非常に地震が起こりやすくなっています。だからこそ、私はこのテーマに興味を持ち研究をしていました。
京都大学の教授ともつながることができ、修士時代にはさらにこの研究を進めました。結果的に「断層活動年代を測定することは難しい」という結論になりました。ただかなり安価に「活断層(おおよそ千年以内に自信を引き起こす活動をして、今後も引き続き自信を引き起こすおそれのある断層)かどうかの簡易的判断」は可能であろうとの結論をもって、無事に修士論文を審査を通過しました。
結果的に地震予知に何か貢献できたわけではありません。でも「地震」というものを深く学ぶことができました。たかだか一人の学生・院生が深く学んだところで世の中が何か変わるわけではありません。でも私は今、子供たちに教えることができる立場になっています。地震を予知したり、地震被害を減らしたりすることはできません。でも地震とは何か、どうすればよいか、命を守るためにどんな知識を持っておくべきかなどを「伝える」ことはできます。
地震を含めた自然災害について学ぶ教科は理科です。そして高校では「地学」として、また大学以降では「地球惑星科学」として学んでいくわけですが、その入り口となる「高校地学」が実際に高校ではほぼ選択されていないという現実があります。中学を卒業すると、地学の学びに触れない生徒もたくさん存在するわけです。
日本は地震大国といわれます。またその特殊な地形のせいで火山活動もまた活発な国です。台風も通過するし雪も降ります。地震に限らず日本人は常に自然災害と向き合ってきました。そんな日本人が身を、命を守るために様々な言い伝えがあります。そしてさらに先人が積み上げてきた知識を「地学」という形で学ぶことができるようになっています。
でも現状はどうでしょうか?入試に有利なことだけが選択され、コスパ・タイパが重視され、地学の灯は風前の灯火です。だからこそ、こうした知識を持つ大人が子供たちに少しでも伝えることに意義があると思うのです。
だから私は今年も伝えます。子供たちの命を未来へと。微力も微力ですが…