先日の ミニ落語会でのこと。 早春の宵の落語会に 期待して 私の座った椅子は前から 二番目 手を伸ばせば 即席の赤い 高座に手の届きそうな 位置でした。
そして高座の 上手には 主催者の若い男性と 女性が パイプ椅子に座っていました。 主催者側の 司会の女性と 付き添いでしょうか。
やがて時間通り 師匠の紹介が 其の女性から述べられました。 座席の後ろから 鶯色の着物の 師匠が現れ 高座へと 一段二段と上がられ 座布団へ そして深々と頭を下げられました。
ところが 履物が 乱れて脱がれています。 私はそれに目を奪われてしまいました。
話は始まりましたが 其の履物のすぐ前にいる 女性も若い男性も そろえる気配はありません。
其の出来事に 私のすぐ前の年輩女性も気が付き 横のお友達に なにやら合図しますが 反応がありません。
こうなると 私も頭は 不ぞろいの師匠の草履のことで 気もそぞろです。 子供の頃から 玄関の履物は きちんと揃えるように 父に厳しく言われていました。 今でも客人の 履物は気になります。
高座に上がる段のすぐ前に 座っているのです。 見えないはずはありません。 もしかしたら この時代 師匠はわざと乱れた脱ぎ方を されたのだろうか と 私の頭の中は グルグルです。
とうとう休憩の時間になりました。 私の前の女性がすばやく 女性に指示しました。 すると若い方の男性が 草履を揃えむきを変えました。
私も 思わず 其の奥さんの肩をつつき 「奥さんありがとう 私も気になっていたのです」と言ってしまいました。 すると其の奥さん 「アレで三人子供がいるのよ。」と一言。
なにもかもが 自由とかのびのびとか 言われていますが 幼い頃からの しつけの大事さを思い知らされた 春の宵でした。