「中村草田男句集」を数句紹介する。
〇月見草湾を距てて山灯る
海を隔てて遠くで山の灯が見える。遠くの灯は人の気配を感じさせる。
〇月光の壁に汽車来る光かな
月夜の壁に汽車が通り光がよぎる。薄い月光と、汽車の閃光の対比。
〇オリオンと店の林檎が帰路の栄え
オリオン座と買った林檎が仕事帰りのささやかな希望。
〇冬すでに路標にまがふ はか一基
冬暗く、路上標識かと思たら、はかだった。侘しさ冴える。
〇放課後のオルガン鳴りて火の恋し
夕方、小中校の脇を通ると、オルガンが聞こえる。肌寒い季節。
〇聖母像高し暖炉の火を裾に
教会の中だろうか。北国の冬、聖母が凛と立つ。
〇猛るピアノ雀見て居る夕立雲
猛然と、昂揚するピアノを弾く窓を、雀が見ている、夕暮れ。
〇炎天の号外細部読み難き
炎天下、新聞の号外を配られる。活字が雑なのか、細部は読めない。
〇映画ただ凍てしヒマラヤの肌が移る
移るは、映るないし写るだろう。寒い映画館で、ヒマラヤの景色が映る。
〇冬薔薇石の天使に石の羽根
冬薔薇の側に、天使の石像がある。当然だが、羽根も石製だ、と思う。
〇月寒に堅き契りの乙女像 (私の作)
〇月見草湾を距てて山灯る
海を隔てて遠くで山の灯が見える。遠くの灯は人の気配を感じさせる。
〇月光の壁に汽車来る光かな
月夜の壁に汽車が通り光がよぎる。薄い月光と、汽車の閃光の対比。
〇オリオンと店の林檎が帰路の栄え
オリオン座と買った林檎が仕事帰りのささやかな希望。
〇冬すでに路標にまがふ はか一基
冬暗く、路上標識かと思たら、はかだった。侘しさ冴える。
〇放課後のオルガン鳴りて火の恋し
夕方、小中校の脇を通ると、オルガンが聞こえる。肌寒い季節。
〇聖母像高し暖炉の火を裾に
教会の中だろうか。北国の冬、聖母が凛と立つ。
〇猛るピアノ雀見て居る夕立雲
猛然と、昂揚するピアノを弾く窓を、雀が見ている、夕暮れ。
〇炎天の号外細部読み難き
炎天下、新聞の号外を配られる。活字が雑なのか、細部は読めない。
〇映画ただ凍てしヒマラヤの肌が移る
移るは、映るないし写るだろう。寒い映画館で、ヒマラヤの景色が映る。
〇冬薔薇石の天使に石の羽根
冬薔薇の側に、天使の石像がある。当然だが、羽根も石製だ、と思う。
〇月寒に堅き契りの乙女像 (私の作)