聴診をするために肌着をたくしあげてもらうことがある。ところがこれがなかなか出来ない爺さん婆さんが居る。爺さんはズボンのバンドを緩めないで挙げようとするので手間取る。婆さんはパンツと一緒に持ち上げようとするので上がらない、上がるわけがない。
大抵少し認知がある上に慌てるのでこうなる。この年代の人達は次に待っている人のことを考えるので、早くやろうとして返ってドジを踏んでしまうのだ。婆さんの中にはまださほど寒くないのに、何枚も白い下着を着ている人が居て、看護婦もどれが何か咄嗟にわからず、手伝いに手こずるようだ。
診察が終わった後も早く身支度を整えようと焦って、きちんと整えないで出ようとする人が居るので「ゆっくりでいいですよ」。と声を掛ける。本当は流れるように診察したいので、本音とはちょっと違うのだけれども、慣れているので苛々することはない。
苛々しないのは慣れもあるけれども、この人達が人を気遣う気持ちを持って居られるのがわかるせいかもしれない。