大女を診察する、ふと「なんだか航空母艦のようだな」。と思う。勿論言葉には出さない。多分、口に出してもゆさゆさと笑うだけで怒る人ではないと思うが、やはり失礼だろう。
この頃は皺くちゃのお婆さんが減った。八十歳でも皺は少なく声に張りがある女性も多い。四半世紀前はもうそろそろ魔法が使えるのではないかという皺だらけのお婆さんが居たのだが。
昔は三十過ぎれば大人の言葉遣いが出来るものだった。今はいい年をして、「お熱がありますか」。「咳が出ますか」。と質問しても「ない」。「ない」。の人もいる。外見も三十過ぎには見えないことが多い。そういえば、「ないない」。にもいい年をしてと言ってやりたい。
今は四十過ぎても独りの方が結構多い。初診で診察を終える頃には、八割方独り者とわかる。なぜ分かるか簡単には言えないのだが、何となく分かる。並みの看護師では駄目、婦長クラスだと私と同じように分かるらしい。勿論、直截お独りですかとは聞かない、でも分かる。