朝日カルチャーセンター☆ブログ

関西4教室(中之島・京都・川西・くずは)の最新情報をお届けします!

●「ブログde秀歌鑑賞」 №3  2011年9月【芦屋】

2011年09月13日 13時02分04秒 | 芦屋教室
芦屋教室 「ブログde秀歌鑑賞」 №~2011年9月
(松村正直選)

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く
     奥村晃作(おくむら・こうさく) 『三齢幼虫』(さんれいようちゅう)


自動車が次々と道路を走り過ぎていきます。
よく見ると、その自動車の運転手はみんな一様に前方だけを見つめています。
よそ見をしていたら事故を起こしてしまいますから、「運転する人みな前を向く」のは当り前のことですが、
それをあえて歌にすることで、何か不気味なような、少し怖いような雰囲気が醸し出されています。
現代社会の日常に潜む怖さとでも言ったものでしょうか。
「ただごと歌」の歌人として知られる奥村晃作(1936~)の代表歌の一つです。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

瓶にさす藤の花ぶさみじかければたゝみの上にとゞかざりけり
        正岡子規(まさおか・しき) 『竹の里歌』(たけのさとうた)


花瓶に挿してある藤の花房が短いので畳の上まで届いていないという情景を詠んだ歌です。
「みじかければ」「とゞかざりけり」は一見当り前のことを述べているだけに思えますが、
実はそうではありません。
この歌を作った頃、作者は脊椎カリエスのために寝たきりの生活を送っていました。
病床という低い視点から見ているからこそ、藤の花と畳の間にあるわずかな隙間に目が留まったのでしょう。
俳句や短歌の革新運動に大きな功績を残した正岡子規(1867~1902)の代表作の一つです。


◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

ふるさとの訛(なまり)なつかし/停車場(ていしゃば)の人(ひと)ごみの中に/そを聴(き)きにゆく
        石川啄木(いしかわ・たくぼく) 『一握の砂』(いちあくのすな)


停車場というのは駅のことです。
近代になって発達した鉄道は国内の各地を結び、多くの人々を地方から都市へと運んできました。
岩手県の渋民村で生まれた啄木も、北海道を転々としたのち、文学で身を立てようとして東京に出てきます。
東京での生活に疲れて望郷の思いが募ることもあったでしょう。
そうした時に、大勢の人々が集まる駅に行っては東北訛りの言葉を聞き、束の間の安らぎを得たのです。
数多くの愛唱歌を作ったことで有名な歌人石川啄木(1886~1912)の一首です。


◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

松村正直先生の「短歌」講座はこちら!
「短歌実作」講座(第3金曜、A午前B午後
奇数月のご担当は池本一郎先生、
偶数月のご担当は松村正直先生

「はじめてよむ短歌」講座 (第1金曜、午前)
2011年4月開講。
随時、お入りいただけます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ♪抱っこでハッピー子育て♪ ... | トップ | 美しい英詩をごいっしょに ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

芦屋教室」カテゴリの最新記事