また、北上川の朗妙寺の淵の渡し守が、ある日わたしに言いました。
「旧暦八月十七日の晩、おらは酒のんで早く寝た。おおい、おおいと向うで呼んだ。起きて小屋から出てみたら、お月さまはちょうどそらのてっぺんだ。おらは急いで舟だして、向こうの岸に行ってみたらば、紋付を着て刀をさし、袴をはいたきれいな子供だ。たった一人で、白緒のぞうりもはいていた。渡るかと言いったら、たのむと言った。子どもは乗った。舟がまん中ごろに来たとき、おらは見ないふりしてよく子供を見た。きちんと膝に手を置いて、そらを見ながらすわっていた。」
(宮沢賢治「ざしき童子のはなし」)
長くいた家を出ていくざしきぼっこ。ステンドグラスにする都合で髪型を変えたけど、市松人形の男の子をモデルにしました。写真だと見えないけど、着物には花菱模様を彫ってあります。
端午の節句を少し過ぎてしまったけど、頂き物のアヤメと庭のつつじを一緒に活けてみました。花代0円
自画自賛だけどつつじで剣山が上手いこと隠れて、上から見ても面白い作品になったかも…。
たしかにどこかで、ざわっざわっと箒の音がきこえたのです。
も一どこっそり、ざしきをのぞいてみましたが、どのざしきにもたれもいず、ただお日さまの光ばかりそこらいちめん、あかるく降っておりました。
こんなのがざしき童子です。
(宮沢賢治「ざしき童子のはなし」)
その後、女の子も完成。今回は賢治さんの文章に忠実に、ほうきを持ったバージョン。姪っ子にほうきを持ってもらって原画を描きました。2月に作った女の子とは背景のガラスを変えました。そして、今回は着物に鹿の子模様を彫っています。前回に引き続き手が攣りそうだったけどすごく頑張りました…。着物の赤いガラスはもうあまりなくて、ギリギリでどうにか取れました。
写真だと見えないし、実物もよくよく目を凝らして見ないとわからないのですが、実は髪の細い部分が割れてしまいました
しかし、無理に取り出そうとすると収拾がつかなくなりそうなので、まぁいいか…と。あまりに細すぎるピースや極端なエグレのあるピースは、たとえガラスカットに成功しても結局そこから破損することが多いというのを実感しました。でも多分、また作ると思います。おかっぱのざしきぼっこちゃん。そしてこの子にも合うお花を考えたいと思います。