さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。黒い雪袴をはいた二人の一年生の子がどてをまわって運動場にはいって来て、まだほかにだれも来ていないのを見て、「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」とかわるがわる叫びながら大よろこびで門をはいって来たのでしたが、ちょっと教室の中を見ますと、二人ともまるでびっくりして棒立ちになり、それから顔を見合わせてぶるぶるふるえましたが、ひとりはとうとう泣き出してしまいました。というわけは、そのしんとした朝の教室のなかにどこから来たのか、まるで顔も知らないおかしな赤い髪の子供がひとり、いちばん前の机にちゃんとすわっていたのです。そしてその机といったらまったくこの泣いた子の自分の机だったのです。(宮沢賢治「風の又三郎」)
今年からお花の先生に勧められて、ステンドグラスといけばなのコラボをしています。おかげで、以前よりも何をどう活けようか、より積極的に自分のやってみたいことを模索できるようになりました。それだけでなく、道を歩いていても今はどんなお花が咲いているのか目に入るようになり、歩く楽しみが増えました。
又三郎君が転校してきた翌日にあたる9月2日、ちょうど庭に咲いていた(秋海棠と水引、何もしなくとも毎年必ず出てくる強い人達!)お花を中心に生けてみました。菊みたいなエゾアスターだけは産直です(何と、青虫さんが2匹も潜んでいた〜!
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「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ。」カムパネルラが、窓の外を指さして云いました。
線路のへりになったみじかい芝草の中に、月長石ででも刻まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。
「ぼく、飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか。」ジョバンニは胸を躍らせて云いました。
「もうだめだ。あんなにうしろへ行ってしまったから。」
(宮沢賢治「銀河鉄道の夜」)
線路や列車を連想させるようなお花器に、「銀河鉄道の夜」に登場するすすきとりんどうを生けました。お花器と天の川がうまい具合につながった!今回は足元を葉っぱで隠さずにあえて見せています。すすきがもう少し長くても良かったかも…。