紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

関所抜けと江戸時代の旅

2007-01-24 22:46:04 | 読書
 仕事で購入する本のピックアップをし、選書会議にかけるリスト作りの前段階で、煩雑な関所がいくつもある。

 価格やISBN(図書のバーコード番号)の抜けチェック、受入済、発注済のものとダブっていないかのチェックなど。それ以外に「内容は同じなのにタイトルだけ違って新刊らしく発行されている」という言語道断な本もまれにある。まれ、というには頻度が高いかも、なのだが。

 そんな仕事でひっかかり、内容を調べるうちに興味津々となったのが金森敦子さんの著書である。もちろん金森さんはタイトル違いで同一内容なんて姑息な手は使っていない。いくつかの著書のキーワード、「江戸、女旅、関所」が重なっていたので、念のため調べてみたのだ。ご著書のいくつかを並べてみる。

(ア)『江戸の女俳諧師「奥の細道」を行く―諸九尼の生涯』 (単行本 - 1998/8)
価格: ¥ 1,995 (税込)

(イ)『関所抜け 江戸の女たちの冒険』 (単行本 - 2001/7)
価格: ¥ 2,415 (税込)

『芭蕉はどんな旅をしたのか―「奥の細道」の経済・関所・景観』 (単行本 -2000/10)
価格: ¥ 4,830 (税込)

『“きよのさん”と歩く江戸六百里』 (単行本 - 2006/11/21)
価格: ¥ 1,890 (税込)

 (ア)は筑後の庄屋の嫁だった「なみ」(後の諸九尼)が29歳のとき旅の俳諧師・湖白と駆け落ち。湖白が病に唐黷ス後はプロの女俳諧師として自立する。晩年!には、念願の芭蕉の後をたどる「奥の細道」へと旅立つのだ。こういう話(マイナーどころを発掘したノンフィクション)には、めっぽう弱い。日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。

 (イ)は江戸時代の秋田の中年女「於以登」の旅日記、しかも「入り鉄砲に出女」というくらいの厳しい関所を、なんと「抜け」(抜け道を通っ)てしまったりしているのだ。
 おまけに彼女は芭蕉の「奥の細道」の全行程450里を遥かにしのぐ780里ほどの距離を、南へ西へ東へ北へと151日をかけて歩くのだ。それも下男?を連れての女二人旅である。旅の記録は出納帳プラス関所と番所の事柄なので、金森さんの資料の読解力と想像力と参考資料に負う所大なり、であろう。

 (ア)の「あとがき」で金森さんは、

ーどういうものを書いているのかと問われたとき、わたしはこう答えることにしています。「その分野で大きな足跡を残したにもかかわらず、歴史に埋もれてしまった人の、その墓碑銘に代わるものを」と。ー

 仕事柄、「歴史に埋もれていた人」の評伝や伝記に触れる機会は多い。「へええ!!こんなぶっとんだ女性がいたんだ!!」と驚き、面白がり、感動することも多い。別に過去の方だけじゃなく、現代人でも「へええ!!」という自伝なんかもある。
 かたや歴史上の有名人でも、思い込みやイメージが覆されるようなことがある。やっぱり人間は面白い!一筋縄ではいかない!とつくづく唸ってしまう。金森さんには、今後もどんどん書き続けて、地道に人間発掘作業にいそしんでいただきたい、と切望する。

 金森作品、あんまり面白そうなので、もう上記2冊は借りている。最新刊の「きよのさん」とも、ぜひ一緒に600里を歩いてみたいものである。