現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

黒川博行「破門」

2018-08-05 08:17:54 | 参考文献
 2014年上半期の直木賞を取った作品です。
 1997年にスタートした「疫病神」シリーズの第五作です。
 カタギの主人公と極道の相棒のはちゃめちゃストーリーは、17年にわたって書き続けられてきましたが、この作品の最後に題名通りに極道が組を破門されて完結したようだったのですが、直木賞を取って売れ行きが戻ったので、その後も連載は続いて、第六作、第七作も出版されています。
 シリーズの作品には出来不出来があり、かならずしも「破門」が一番いい作品ではありませんが、これまでに何度も直木賞の受賞を逃しているので、シリーズ全体の評価としておくられたのでしょう。
 また、直木賞の審査員が、作者と同世代の人間が増えたのもプラスに働いたでしょう。
 「疫病神」シリーズは、カタギと極道にコンビを組ませることによって、合法と非合法のバランスが取れていて、単なるやくざ物の作品になっていないところが魅力になっています。
 しかし、第五作になるとさすがにマンネリ化は目立ちますし、作品の中での時間経過(主人公は3-4才しか年を取っていません)と17年という実時間の経過のギャップも目立ちます。
 そこで、作者は登場人物の年齢設定はそのままに、強引に作品世界の時間を2011年の大阪府暴力団排除条例が施行後にスキップさせています。
 このあたりはエンターテインメント作品ならではのご都合主義なのですが、極道(その周辺にいるカタギの主人公も)のシノギ(金儲け手段の事です)が厳しくなったことを作品の背景とするとともに、シリーズを終了させるための伏線なのでしょう。
 もっとも、直木賞を受賞したことで人気も売上げも大幅に上がったので、作者はこのコンビを復活させました。
 かの有名なシャーロック・ホームズも、読者の熱烈な要望で、ライヘンバッハの滝つぼから生還しています。

破門 (単行本)
クリエーター情報なし
KADOKAWA/角川書店
コメント
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