銀行を定年退職した男が失踪した話です。
短編集の表題作ですが、推理小説としてはすでに賞味期限が切れている(こんな小さな事件に専従の刑事が二人も担当して、広島まで出張して捜査しています)ようです。
それよりも、この作品の時代設定である昭和30年代と現代とでは、いろいろな点が大きく違っていることが、興味深かったです。
失踪した男は、銀行の営業部長で定年を迎えた(ただし、系列会社の重役になることをすすめられていました)のですが、以下のようにその暮らしぶりは今のそれとは大きく違います。
・応接間のある中流の瀟洒な住宅に住んでいた。
・地方支店に支店長として単身赴任していた時代に愛人を作って、毎月一定額を送金していた。
・失踪時にある程度のまとまったお金を持ち出し、愛人と新しい暮らしを始めようとしていた。
・それでも、残された妻(冷淡な女性として描かれています)には一生困らないだけの財産は残していた。
現代では、みずほ銀行などのメガバンクの営業部長でも、とてもこうはいかないでしょう。
ここに描かれているように、1950年代までの日本では非常に格差がありました。
しかし、1960年代から1970年代の高度成長時代に、この格差は急速に縮まりました。
いろいろな批判はあるものの、労使が闘争しつつも協調していた55年体制が、一定の成果を上げていたことも指摘できるでしょう。
しかし、バブルの崩壊と2000年代の小泉政権の異様な高人気に支えられた様々な施策(特に竹中平蔵経済財政政策担当大臣によるもの)により、格差は再び拡大し始めました。
その傾向はその後も続いており、安倍一強時代にさらに加速しています。
短編集の表題作ですが、推理小説としてはすでに賞味期限が切れている(こんな小さな事件に専従の刑事が二人も担当して、広島まで出張して捜査しています)ようです。
それよりも、この作品の時代設定である昭和30年代と現代とでは、いろいろな点が大きく違っていることが、興味深かったです。
失踪した男は、銀行の営業部長で定年を迎えた(ただし、系列会社の重役になることをすすめられていました)のですが、以下のようにその暮らしぶりは今のそれとは大きく違います。
・応接間のある中流の瀟洒な住宅に住んでいた。
・地方支店に支店長として単身赴任していた時代に愛人を作って、毎月一定額を送金していた。
・失踪時にある程度のまとまったお金を持ち出し、愛人と新しい暮らしを始めようとしていた。
・それでも、残された妻(冷淡な女性として描かれています)には一生困らないだけの財産は残していた。
現代では、みずほ銀行などのメガバンクの営業部長でも、とてもこうはいかないでしょう。
ここに描かれているように、1950年代までの日本では非常に格差がありました。
しかし、1960年代から1970年代の高度成長時代に、この格差は急速に縮まりました。
いろいろな批判はあるものの、労使が闘争しつつも協調していた55年体制が、一定の成果を上げていたことも指摘できるでしょう。
しかし、バブルの崩壊と2000年代の小泉政権の異様な高人気に支えられた様々な施策(特に竹中平蔵経済財政政策担当大臣によるもの)により、格差は再び拡大し始めました。
その傾向はその後も続いており、安倍一強時代にさらに加速しています。
駅路 (新潮文庫―傑作短編集) | |
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