「ピンポン」の曽利文彦監督によるCGアニメーション。はっきり言ってつまらない。2077年、ハイテク鎖国で世界から孤立した日本に米国特殊部隊の女性兵士が潜入し、思わぬ真実に遭遇するという話だが、物語の成立する条件を完全に無視したような設定には呆れる。
だいたい、たったひとつの企業(ロボット製作会社)が日本を完全支配しているという状況って何なんだ? しかも、その企業の実体は“個人経営”に近い。こういう“零細企業”がどうしてスーパーパワーを身につけたのか、いくら“先端技術を持っていた”としても、国家の中枢に食い込むには相当のノウハウが必要になる。少なくとも“個人”では無理だ。
官僚をどうして丸め込んだのか。政治家をどうやって籠絡したのか。国民を黙らせた方法は何だ(これについては一応の説明はあるが、その前段の過程がないと説得力ゼロである)。そうそう、皇室に対してどう対処したのか。そのへんをまったく無視して“未来の日本は巨大コングロマリットに牛耳られていました”とセリフのひとつで片付けられては困るのだ。
しかも鎖国であるはずなのに、ロボットはアメリカをはじめ世界各国に輸出されているという。他国との交流を拒絶した怪しげな国の製品を、どうして平気で使っているのか。米国もバカではないから、その製品を徹底研究して競争力のあるロボットを考案すればいいものを、どうして唯々諾々と日本の巨大企業の軍門に下っているのか(スパイやロビイストの存在も暗示させるが、その程度では屁の突っ張りにもならんだろう)。そもそも、貿易時の決済方法は何だ? 為替レートの状況ぐらい説明してほしい(爆)。
で、生き残った“日本人”たちは戦後すぐのような焼跡闇市状態の生活をしていて、その様子をヒロインが“活き活きしている”と形容して感心するくだりがあるが、おそらくはシビアな状況に追い込まれてイヤでも“活き活きと”せざるを得ない彼らに対し、他国のねーちゃんが勝手に感想を述べるのは愉快になれない。そもそも何で焼跡闇市なのか。ひょっとして邦画のトレンドである“昭和ノスタルジア”に乗っかったのか?(笑)
それでも映像や活劇場面が素晴らしければ評価はできるのだが、中途半端に劇画調で血の通っていないキャラクターデザインと、過去に目にしたことのあるような没個性のアクションシーンには大いに萎えた。特に、荒野を動き回る巨大な鉄屑の化け物など「砂の惑星」の“ワーム”とコンセプトがえらく似ていて脱力する。黒木メイサをはじめとする主要登場人物の声の出演も壊滅的にヒドい。本職の声優を起用すべきではなかったか。
それにしても、日本を平気で滅亡状態にするシチュエーションを考え出した作者の“自虐的スタンス”は大いに気になる。中国や北朝鮮を対象にした方がはるかに説得力があると思うのだが、ひょっとして作者は“あっち(左)方面”の人なのだろうか(苦笑)。