(原題:Manneken Pis)96年作品。ブリュッセルにやってきたハリー(フランク・ヴェルクライセン)は子供時代に目の前で家族を列車事故で失うという悲しい経験があり、そのため人前で感情を表すことができない。ある日、路面電車の運転手ジャンヌ(アンチュ・ドゥ・ブック)と知り合い好きになったハリーは金色の靴を彼女にプレゼントするが、彼女が“愛してる”と告白したことで二人の関係がしっくりいかなくなる。監督はベルギーの新鋭フランク・ヴァン・パッセル。95年のカンヌ映画祭で新人賞を獲得している。
まず良かった点をあげよう。主役二人のキャラクターが素敵であること。幼いときの精神的ショックで髪の毛が抜け、施設生活が長く、感情がないという悲惨な境遇でありながら飄々とした持ち味で人を惹きつける。その実、表情の奥底には悲しいほどの諦念が窺えるハリーを共感を得るほどに体現化したヴェルクライセンの演技には感心するばかり。
チビで垢抜けない下町の娘で、全然美人じゃなくって、若いのかトシなのかわからないが、表情や動きのチャーミングさと輝くような笑顔で画面をさらってしまうドゥ・ブックの演技も素晴らしい。二人とも演劇畑の出身らしいが、これからも映画に出続けてほしいと思わせる逸材だ。
さらに、箱庭のようなブリュッセルの下町の風情や、路面をすべるように走る電車の存在感。二人が住むアパートの庶民的な雰囲気もいい。管理人のおばさんや、レストランで働くハリーの同僚たちなど、脇のキャラクターの扱いも万全だ。
次に良くない点をあげる。実はこれは致命的な欠点なのだが、話が盛り上がらないのだ。テンポが遅いわりに展開が行きあたりばったりだし、前振りだけで中身のないエピソードが漫然と続く。ラスト近くのストーリーの持っていき方など、伏線も何もなしでアッという間に悲劇になり、最後の幻想シーンも取って付けたようだ。
“ヤマなし、オチなし、意味なし”の趣向が中盤からずーっと続き、これじゃいくらキャラクターが良くても観ていて退屈でしかない。もっとドラマティックに振った演出はできないものか。素材はいいんだけどね。本当はけっこうギャグに走ったエピソードもあったらしいが、編集の段階ですべて切り捨てたとのこと。残念。
まず良かった点をあげよう。主役二人のキャラクターが素敵であること。幼いときの精神的ショックで髪の毛が抜け、施設生活が長く、感情がないという悲惨な境遇でありながら飄々とした持ち味で人を惹きつける。その実、表情の奥底には悲しいほどの諦念が窺えるハリーを共感を得るほどに体現化したヴェルクライセンの演技には感心するばかり。
チビで垢抜けない下町の娘で、全然美人じゃなくって、若いのかトシなのかわからないが、表情や動きのチャーミングさと輝くような笑顔で画面をさらってしまうドゥ・ブックの演技も素晴らしい。二人とも演劇畑の出身らしいが、これからも映画に出続けてほしいと思わせる逸材だ。
さらに、箱庭のようなブリュッセルの下町の風情や、路面をすべるように走る電車の存在感。二人が住むアパートの庶民的な雰囲気もいい。管理人のおばさんや、レストランで働くハリーの同僚たちなど、脇のキャラクターの扱いも万全だ。
次に良くない点をあげる。実はこれは致命的な欠点なのだが、話が盛り上がらないのだ。テンポが遅いわりに展開が行きあたりばったりだし、前振りだけで中身のないエピソードが漫然と続く。ラスト近くのストーリーの持っていき方など、伏線も何もなしでアッという間に悲劇になり、最後の幻想シーンも取って付けたようだ。
“ヤマなし、オチなし、意味なし”の趣向が中盤からずーっと続き、これじゃいくらキャラクターが良くても観ていて退屈でしかない。もっとドラマティックに振った演出はできないものか。素材はいいんだけどね。本当はけっこうギャグに走ったエピソードもあったらしいが、編集の段階ですべて切り捨てたとのこと。残念。



