ニューヨーク出身のミステリー作家ウィンズロウの代表作は「このミステリーがすごい!」の海外編で2010年度一位を獲得した「犬の力」だと思うが、本作もそれより“軽量級”ながら十分面白い。ソフトボイルド・タッチでありながらけっこう深いという御膳立ては、読む者にもパワーを必要とする「犬の力」より広範囲にアピールできると思う。
主人公ブーン・ダニエルズはサンディエゴの私立探偵。仕事よりもサーフィンをこよなく愛し、“ドーン・パトロール”と名付けた仲間達と夜明けのサーフィンを楽しむのが生き甲斐になっている。そんな彼に、法律事務所から裁判での証言を前に行方不明になったストリッパーの捜索を依頼される。
ところが彼女らしき死体が早々に発見され仕事は暗礁に乗り上げる。しかも殺されたのは当のストリッパーとは別人だったことが分かり、しつこく本人を消そうとする組織が暗躍するに及んでブーンにも危険が迫ってくる。
波乗りを楽しむお気楽探偵かと思わせて、実はブーンは元警官で、ある厄介な事件を捜査している過程で警察を辞めるハメになったというシビアな過去が浮かび上がってくる。周囲の“ドーン・パトロール”の面々にしても、脳天気のようでいて皆心の奥底に大きな屈託を抱えている。
本題のストリッパー殺人事件にしても、裏に深刻な事実が隠されている。サーファーで賑わう海辺の街だって、一筋縄ではいかない“歴史”を抱えているのだ。軟派なエクステリアから始まって、やがてアメリカ及び中米が抱える大きな社会問題を焙り出してゆく、その手腕は鮮やかだ。主人公達は辛い過去や自身の無力さに悩みながらも、今日そして明日を生きる決意を見出す。ポジティヴなスタンスで読後の感触は上々だ。
特筆すべきはサーフィンの描写で、筆致の巧みさはサーフィンに興味の無い読者でも魅了されてしまう。終盤の、ビッグウェーブに挑むサーファー達と事件の核心に迫るブーンの奮闘とをシンクロさせる展開は、まさに手に汗握る盛り上がりを見せる。本作はシリーズ化されるらしく、すでに第二作が手掛けられている。次作が実に楽しみだ。
主人公ブーン・ダニエルズはサンディエゴの私立探偵。仕事よりもサーフィンをこよなく愛し、“ドーン・パトロール”と名付けた仲間達と夜明けのサーフィンを楽しむのが生き甲斐になっている。そんな彼に、法律事務所から裁判での証言を前に行方不明になったストリッパーの捜索を依頼される。
ところが彼女らしき死体が早々に発見され仕事は暗礁に乗り上げる。しかも殺されたのは当のストリッパーとは別人だったことが分かり、しつこく本人を消そうとする組織が暗躍するに及んでブーンにも危険が迫ってくる。
波乗りを楽しむお気楽探偵かと思わせて、実はブーンは元警官で、ある厄介な事件を捜査している過程で警察を辞めるハメになったというシビアな過去が浮かび上がってくる。周囲の“ドーン・パトロール”の面々にしても、脳天気のようでいて皆心の奥底に大きな屈託を抱えている。
本題のストリッパー殺人事件にしても、裏に深刻な事実が隠されている。サーファーで賑わう海辺の街だって、一筋縄ではいかない“歴史”を抱えているのだ。軟派なエクステリアから始まって、やがてアメリカ及び中米が抱える大きな社会問題を焙り出してゆく、その手腕は鮮やかだ。主人公達は辛い過去や自身の無力さに悩みながらも、今日そして明日を生きる決意を見出す。ポジティヴなスタンスで読後の感触は上々だ。
特筆すべきはサーフィンの描写で、筆致の巧みさはサーフィンに興味の無い読者でも魅了されてしまう。終盤の、ビッグウェーブに挑むサーファー達と事件の核心に迫るブーンの奮闘とをシンクロさせる展開は、まさに手に汗握る盛り上がりを見せる。本作はシリーズ化されるらしく、すでに第二作が手掛けられている。次作が実に楽しみだ。