元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ジュラシック・ワールド 炎の王国」

2018-07-30 06:18:02 | 映画の感想(さ行)
 (原題:JURASSIC WORLD:FALLEN KINGDOM )前作より質的にダウンしている。それでも前半はまあまあ楽しめた。しかし、中盤以降は話にならない。脚本が底抜けであるばかりではなく、演出もたどたどしくて、とにかく観ていられないのだ。恐竜達を画面上でウロウロさせるだけで2時間あまりを保たせられると思っている、作り手のその魂胆が気に入らない。

 数年前にハイブリッド恐竜“インドミナス・レックス”が引き起こした大惨事によって崩壊したテーマパーク“ジュラシック・ワールド”が存在するイスラ・ヌブラル島は、火山の噴火によるカタストロフィが迫っていた。当局側は恐竜達の生死を自然に委ねることを決定するが、民間レベルで恐竜の救出計画が進む。



 恐竜行動学のエキスパートであるオーウェンと、テーマパークの運営責任者だったクレアはこのプロジェクトに加わる。ところが、島に上陸した直後に火山が大噴火。オーウェン達は九死に一生を得て脱出する。アメリカ本土の恐竜達の“収容先”になった富豪ロックウッドの大規模秘密施設では、遺伝子操作によって生まれ た“インドラプトル”が暴れだし、大パニックが発生する。

 まず、危険な恐竜を島の外に出そうとする施策自体が噴飯物だ。人間が勝手に蘇らせたクリーチャーは、天災と共に世の中から消え去る方が良い。そもそも、前作で重大なトラブルが起こった“ジュラシック・ワールド”の経営者であったクレアが、何の責任も取らされずに涼しい顔をして恐竜救出作戦に関わるという設定からして付いていけない。

 ただし、絶海の孤島で起きる大規模な災害と、ジャングルを逃げ惑うオーウェン一行と恐竜達を畳み掛けるように描いた前半部分は、それなりにサマにはなっている。やっぱり、こういうネタは秘境を舞台にするのが一番だ。



 ところが、舞台がロックウッド邸に移って人間と恐竜との追いかけっこになる後半は、おそろしく段取りが悪い。とにかく“ここをこうするから、結果としてこうなる”といった演出の因果律が崩壊し、行き当たりばったりに展開するのみである。

 だいたい、前作に続いてまた遺伝子操作で生まれた新種の恐竜が大暴れするという話を持ち出すとは、作者にはマンネリズムに対する認識が浅いと言わざるを得ない。ラストに至っては、ただ呆れるばかり。続編に繋げるための措置だろうが、これでは何ら事態は収拾されない。

 J・A・バヨナの演出はたどたどしく、ドラマを上手く整理出来ていない。クリス・プラットやブライス・ダラス・ハワード、ジェームズ・クロムウェルといったキャストは、いずれも精彩を欠く。ジェラルディン・チャップリンやジェフ・ゴールドブラム等の濃い面々もいるのだが、大した見せ場も無く終わってしまう。夏休み映画の目玉として拡大公開されているが、内容がこの程度ならば、早々に興行的に失速するのではないだろうか。
コメント
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