元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「さよならジョージア」

2019-07-14 06:22:16 | 映画の感想(さ行)
 (原題:The Night the Lights Went Out in Georgia)81年作品。味わいのあるヒューマンドラマだ。何よりロードムービーで、しかも音楽を絡めているので、よっぽどの不手際が無い限り、ある程度のレベルは約束されたようなものだ。演出も演技も大きな破綻は無く、最後まで安心して観ていられる。

 カントリー歌手のトラヴィスは以前は売れっ子だったが、酒と女遊びにおぼれて身を持ち崩し、今ではマネージャー担当の妹アマンダと共に場末のドサ廻りに明け暮れる毎日だ。ある田舎町で酔っ払ってベンチに寝ていたトラヴィスを、乱暴者のセス副保安官が逮捕してしまった。一方、アマンダも未成年で無免許運転した件で巡査のコンラッドに検挙され、彼に監視される身となる。保釈金を払うために、トラヴィスはナイトクラブで働くことになったが、そこで常連客のメロディと知り合い、仲良くなる。だが、メロディはセスの元カノだった。逆恨みしたセスは、トラヴィスを消そうとする。

 冒頭の、女とモーテルでよろしくやっているところへ亭主が現れ、危機一髪のトラヴィスがアマンダの運転するキャンピングカーに救われるドタバタ劇からして“掴み”はオッケー。カントリー&ウエスタンのメッカであるテネシー州ナッシュビルを目標にジョージア州を旅する兄と、まだ未成年なのにしっかり者の妹、そして愛犬によるユーモラスな展開が続き、飽きさせない。

 だが、コミカルな中にも次第に悲劇が忍び込んでゆくあたりが、けっこう巧みだ。後半の暗転の後に、希望を持たせるようなラストが続き、鑑賞後の印象は格別だ。ロナルド・F・マックスウェルの演出は弛緩したところが無く、最後まで観る者を引っ張ってゆく。

 トラヴィスに扮するデニス・クエイドは調子のいいダメ男を飄々と演じているが、それより本作ではアマンダ役のクリスティ・マクニコルが光っている。彼女は当時ジョディ・フォスターと並んで最も将来を嘱望された若手の有望株で、この映画でも実に達者なパフォーマンスを披露している。また、2曲ほど彼女自身が歌うシーンがあるが、本職顔負けの上手さだ。メンタル面の問題により、早々と引退してしまったのが実に惜しまれる。それから、コンラッドを演じるマーク・ハミルも良い味を出している。デイヴィッド・シャイアの音楽、ビル・バトラーによる撮影も悪くない。
コメント
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