福岡市中央区天神の商業施設、天神ビブレが今年(2020年)2月11日をもって閉館した。実質的にビブレと同じロケーションであった天神コアも同年3月末で店じまいである。隣の福岡ビルは2019年に閉鎖され、今は解体工事中だ。これらの動きは、天神地区の再開発プロジェクト“天神ビッグバン”の一巻である。
この施策は2024年までに民間ビル30棟を建て替え、延べ床面積を現在の1.7倍、雇用を2.4倍に引き上げることを予定しているという。経済波及効果は年あたり8,500億円にものぼるらしい。まあ、実際にそれだけの数字になるかどうかは分からないが、地方都市では珍しい大規模な事業であることは間違いない。
面白いのは、同地区のデパートなどの競合施設が、垂れ幕で惜別の言葉を伝えたこと。間もなく閉店する天神コア側も“ありがとう、大好きなまち「天神」”とのメッセージを返している。これを見て、ネット上では賞賛の声があがっているらしいが、確かに他の地域では見られない現象だろう。
だが、近年は博多駅エリアが台頭していることもあり、各店舗は天神地区自体の集客を狙わなければやっていけないことも関係している。他店舗の足を引っ張っているヒマは無いというのが実情か。しかしながら、理由はどうあれ、商業施設同士のエール交換は決して悪くない施策だと思う。
ただし、福岡ビルと天神コアなどの跡地に新しいビルが建つのは4年後だ。その間に天神の買い物客の動員が落ちないようにするのは並大抵のことではない。各商業施設は頑張って欲しい。
あと、残念なのは今回の“天神ビッグバン”には映画館の新設が網羅されていないことだ。天神東宝が閉館してから数年経つが、いまだに新規開館の話を聞かないのは寂しい。5月の連休前には“キノシネマ天神”がオープンするが、名前に“天神”と付いてはいるものの、場所は天神地区ではなく隣接する警固地区で、西鉄福岡駅や地下鉄天神駅から離れている。映画好きが多い土地柄なので、何とかして欲しかったというのが本音である。