元・副会長のCinema Days

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「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」

2025-02-17 06:06:22 | 映画の感想(た行)
 (原題:九龍城寨之圍城 TWILIGHT OF THE WARRIORS: WALLED IN)手が付けられないほどの面白さだ。建て付けは昔ながらの香港製アクションドラマなのだが、97年の香港の中国返還以降に存在感を失ってきたこのジャンルを、今一度盛り立てようという製作陣の気迫が漲っている。舞台を清朝時代に軍事要塞として築かれた九龍城砦に設定し、その勇姿の最終形態を香港映画の総決算と新たな一歩のメタファーとするコンセプトには、感服するしかない。

 80年代、中国本土から香港に密入国した青年チャン・ロッグワンは、持ち前の腕っ節の強さを活かして非公式の格闘技シーンで活躍する。しかし、胴元との約束を一方的に反故にされた彼は、ヤクの束を奪って逃走。追われてたどり着いたのは、剣呑な連中が跳梁跋扈する九龍城砦だった。一悶着あったものの、何とかそこの住人たちと打ち解けたチャンだったが、ボス同士の勢力争いや城砦を我が物にしようとする外部勢力の侵攻などに巻き込まれ、仲間と共に激しい戦いに身を投じるハメになる。



 まず圧倒されるのが、精巧に再現された九龍城砦のセットだ。狭いにエリアにそびえる12階建ての奇態なエクステリアで、上空には旅客機が超低空で通過する。まさに“魔界”と言っても良いような場所では、そこに住む人間たちもまさにカオスだ。

 黒社会のパワープレイは劇中ではすべて網羅できないほど複雑だが、中国返還よりも前に取り壊されると分かっていながら、目先の欲得や私怨に拘泥してしまう古くからの住民たちの人間模様はシニカルだ。対して、チャンとその仲間たちは城砦の中の混沌を抜け出して道を切り開こうとする。その構図は鮮やかだ。



 活劇場面は凄まじいヴォルテージの高さで、思わず興奮させられた。ワイヤーアクションやCGも使った“有り得ないシーン”の連続なのだが、繰り出されるタイミングと豊富なアイデアに満ちた立ち回りの連続は、もう見事としか言いようがない。演出担当は活劇映画には定評のあるソイ・チェンだが、それよりアクション監督の谷垣健治の手腕が大きく貢献していると思う。

 チャン役のレイモンド・ラムをはじめテレンス・ラウにトニー・ウー、ジャーマン・チョンら若手の健闘は頼もしく、ルイス・クーにリッチー・レン、ケニー・ウォンといったベテラン陣も存分に持ち味を発揮している。70歳過ぎても身体能力の衰えは見せないサモ・ハン・キンポーが珍しく悪役に回ったり、ラスボスのフィリップ・ンは実に憎々しく、さらにアーロン・クォックまでゲスト出演しているのだから、本当に嬉しくなる。ペーソスに満ちたラストまで存分に引っ張ってくれる快作で、香港での大ヒットも十分納得だ。
コメント
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