猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

上海の伯爵夫人

2018-06-23 02:27:50 | 日記
2005年のイギリス・アメリカ・ドイツ・中国合作映画「上海の伯爵夫人」。

1936年、ロシアから上海に亡命してきた未亡人ソフィア・ベリンスカヤ(ナターシャ・
リチャードソン)は、クラブのホステスとして働いていた。彼女は、店を訪れていた盲
目の元外交官のアメリカ人ジャクソン(レイフ・ファインズ)と出会う。彼はとても有能
な外交官だったが、ある事件により失明し、半ば自暴自棄になって生きてきた。だがジ
ャクソンはソフィアこそが自分の運命の女性だと直感で悟る。ある夜、ジャクソンは日
本人のマツダ(真田広之)と巡り合う。彼は言葉巧みにジャクソンに接近。親しくなった
マツダに、いつか"夢のバー"を開きたいと語るジャクソン。その後競馬で一獲千金を手
にしたジャクソンはソフィアの元を訪れ、彼の店の華になるよう申し込む。

カズオ・イシグロ氏の小説の映画化。ジェームズ・アイヴォリー監督の手によってとて
もロマンチックなラブストーリーであり人間ドラマに仕上がっている。1930年代の上
海にあんなに多くの移民がいたことを知らなかった。中国人の子供と欧米の子供が普通
に遊んでいる光景は微笑ましい。ロシアの伯爵夫人ソフィアは夫を亡くし、クラブで働
いて娘や同居する親戚を養っている。それなのに親戚はソフィアをホステスとして見下
していて、しょっちゅう嫌味を言う。だったら自分たちが働けばいいのに、皆ソフィア
のお給料で生活しているのに。ソフィアは大切な娘カティヤ(マデリーン・ダリー)を育
てるためにも仕事をやめるわけにはいかないのだ。カティヤの前でお化粧をするなだの
派手なドレスを着るなだのと言う人たち。人間って本当に勝手だな、と思う。
ソフィアはクラブに来た客・ジャクソンと親しくなる。外交官だった彼は失明していた
が、その理由を言おうとしない。彼にとっては非常に辛い体験だったのだ。でも彼はお
付きの人たちと車でクラブにやってくるので、失明して働けなくなっていても、それな
りに暮らし向きはいいんだな、外交官だった時の貯金かな、などと下世話なことを考え
てしまった。彼はソフィアが働いているようなクラブではなく、もっと素敵なバーを作
りたいと思っている。そして競馬で大金を手にした彼は、バーを開き、そこにソフィア
に来てもらう。
ソフィアとジャクソンの関係が恋愛だったのかもっとプラトニックなものだったのかは
明確に描かれていない。もちろんジャクソンはソフィアを愛しているのだが、どういう
愛だったのか。ジャクソンはカティヤのこともかわいがった。信頼し合うという愛なの
かもしれない。真田広之がかっこよかった。主役のレイフ・ファインズに引けをとらな
い存在感で、映画のスパイス的な役をしている。そして真田広之が演じたマツダも結局
いい人だったのか悪い人だったのかよくわからない。ラストも余韻が残る終わり方で、
ソフィアやジャクソンたち、そしてマツダのその後を見てみたいと思った。時代の波に
押し流された人々の物語だった。


良かったらこちらもどうぞ。ジェームズ・アイヴォリー監督作品です。

モーリス
眺めのいい部屋
最終目的地

私は「モーリス」が大好きです。あーでも「最終目的地」もいいな~。










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